滕王閣(王勃)
滕王閣
滕王閣
滕王閣
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻二、『全唐詩』巻五十五、『王子安集』巻二(『四部叢刊 初編集部』所収)、『王勃集』巻下(『前唐十二家詩』所収)、『王勃集』巻下(『唐五十家詩集』所収)、『王勃集』巻下・延享四年刊(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、18頁、略称:延享刊本)、『文苑英華』巻三百四十三、『唐詩品彙』巻二十五、『唐詩別裁集』巻五、『古文真宝後集』巻三、序類、他
- 七言古詩。渚(上声語韻)・舞・雨(上声麌韻)通押/悠・秋・流(平声尤韻)。換韻。
- ウィキソース「滕王閣詩」「王子安集 (四部叢刊本)/卷第二」参照。
- 詩題 … 『文苑英華』では「滕王閣歌」に作る。
- この詩の詩型は、七言八句で構成されているので七言律詩のように見えるが、途中で換韻されているので七言古詩に分類される。
- 滕王閣 … 唐の高祖の末子で滕王に封ぜられた李元嬰が、洪州(今の江西省南昌市)に建てた楼閣の名。ウィキペディア【滕王閣】参照。
- 王勃 … 650~676。初唐の詩人。絳州竜門(山西省河津県)の人。字は子安。王績の兄である王通(おうとう・おうつう、文中子)の孫。乾封元年(666)、幽素(唐代の科挙の科目名)の挙に及第。朝散郎を授けられた。南海を舟で渡る途中、溺死した。初唐四傑(王勃・楊炯・盧照鄰・駱賓王)の一人に数えられる。『王子安集』十六巻がある。ウィキペディア【王勃】参照。
滕王高閣臨江渚
滕王の高閣 江渚に臨み
珮玉鳴鸞罷歌舞
珮玉鳴鸞 歌舞罷みたり
- 珮玉 … 腰にさげる玉。
- 鳴鸞 … 天子の車につける鈴。鳴鑾とも書く。『礼記』玉藻篇に「君子、車に在れば、則ち鸞和の声を聞き、行けば則ち佩玉を鳴らす」(君子在車、則聞鸞和之聲、行則鳴佩玉)とある。ウィキソース「禮記/玉藻」参照。
- 鸞 … 『前唐十二家詩』『唐五十家詩集本』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『古文真宝後集』では「鑾」に作る。
- 罷 … 終わる。お終いになる。今はもうない。
畫棟朝飛南浦雲
画棟 朝に飛ぶ南浦の雲
- 画棟 … 彩色した棟木。
- 朝 … 朝ごとに。
- 飛 … 飛び交う。
- 南浦 … 南の入り江。南昌の西南に実際に南浦と呼ばれる入り江があるという。
朱簾暮捲西山雨
朱簾 暮に捲く西山の雨
- 朱簾 … 朱塗りのすだれ。『全唐詩』『文苑英華』『唐詩別裁集』では「珠簾」に作る。こちらは玉すだれ。
- 暮捲 … 夕暮れに(すだれを)巻き上げる。
- 西山 … 南昌の西にある山の名。
閒雲潭影日悠悠
間雲潭影 日に悠悠
- 間雲 … 静かに流れる雲。
- 間 … 『前唐十二家詩』『唐五十家詩集本』『延享刊本』『文苑英華』『唐詩品彙』『古文真宝後集』では「閑」に作る。
- 潭影 … 深い淵の色。
- 日悠悠 … 日ごと日ごと、のどかな姿を見せている。「日」は「日に」と読んでもよい。
物換星移幾度秋
物換り星移りて 幾度の秋ぞ
- 物換 … 事物が変わっていくこと。万物が移ろうこと。
- 星移 … 星が動いていく。歳月が経つこと。
- 幾度秋 … 幾たびの秋が過ぎたことか。『四部叢刊本』『前唐十二家詩』『唐五十家詩集本』『延享刊本』『文苑英華』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『古文真宝後集』では「度幾秋」に作る。こちらは「幾秋をか度りし」と読む。
閣中帝子今何在
閣中の帝子 今何くにか在る
- 閣中 … 高殿におられた。
- 閣 … 『唐五十家詩集本』では「閤」に作る。
- 帝子 … 帝の子。滕王李元嬰を指す。
- 今何在 … 今どこにおわすのか。
檻外長江空自流
檻外の長江 空しく自ずから流る
- 檻外 … (滕王閣の)手すりの外。「檻」は手すり、欄干。
- 長江 … 通常は揚子江を指すが、滕王閣からは見えない。ここでは長い川という意味で、贛江を指す。前野直彬『唐詩選(上)』(岩波文庫)に「揚子江」とあるのは誤り。ウィキペディア【カン江】参照。
- 空自流 … 昔と変わらず、むなしく滔々と流れている。
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