>   漢詩   >   唐詩選   >   巻二 七古   >   滕王閣(王勃)

滕王閣(王勃)

滕王閣
滕王閣(とうおうかく)
王勃(おうぼつ)
  • 七言古詩。渚(上声語韻)・舞・雨(上声麌韻)通押/悠・秋・流(下平声尤韻)。換韻。
  • ウィキソース「滕王閣詩」「王子安集 (四部叢刊本)/卷第二」参照。
  • 詩題 … 『文苑英華』では「滕王閣歌」に作る。
  • この詩の詩型は、七言八句で構成されているので七言律詩のように見えるが、途中で換韻されているので七言古詩に分類される。
  • 滕王閣 … 唐の高祖の末子で滕王に封ぜられた李(り)元嬰(げんえい)が、洪(こう)州(しゅう)(今の江西省南昌市)に建てた楼閣の名。ウィキペディア【滕王閣】参照。
  • 王勃 … 650~676。初唐の詩人。絳(こう)州(しゅう)竜門(山西省河(か)津(しん)県)の人。字(あざな)は子(し)安(あん)。王績の兄である王通(おうとう・おうつう、文中子)の孫。乾封元年(666)、幽(ゆう)素(そ)(唐代の科挙の科目名)の挙に及第。朝散郎を授けられた。南海を舟で渡る途中、溺死した。初唐四傑(王勃・楊炯・盧照鄰・駱賓王)の一人に数えられる。『王子安集』十六巻がある。ウィキペディア【王勃】参照。
滕王高閣臨江渚
滕王(とうおう)の高閣(こうかく) 江渚(こうしょ)に臨(のぞ)み
  • 滕王高閣 … 滕王李(り)元嬰(げんえい)の建てた楼閣。ウィキペディア【李元嬰】参照。
  • 江渚 … 贛江(かんこう)のなぎさ。ウィキペディア【カン江】参照。
珮玉鳴鸞罷歌舞
珮(はい)玉(ぎょく)鳴鸞(めいらん) 歌舞(かぶ)罷(や)みたり
  • 珮玉 … 腰にさげる玉。
  • 鳴鸞 … 天子の車につける鈴。鳴鑾(めいらん)とも書く。『礼記』玉藻篇に「君子、車に在れば、則ち鸞(らん)和(か)の声を聞き、行けば則ち佩(はい)玉(ぎょく)を鳴らす」(君子在車、則聞鸞和之聲、行則鳴佩玉)とある。ウィキソース「禮記/玉藻」参照。
  • 罷 … 終わる。お終いになる。今はもうない。
畫棟朝飛南浦雲
画(が)棟(とう) 朝(あした)に飛(と)ぶ南(なん)浦(ぽ)の雲(くも)
  • 画棟 … 彩色した棟(むな)木(ぎ)。
  • 朝 … 朝(あさ)ごとに。
  • 飛 … 飛び交う。
  • 南浦 … 南の入り江。南昌の西南に実際に南浦と呼ばれる入り江があるという。
朱簾暮捲西山雨
朱簾(しゅれん) 暮(くれ)に捲(ま)く西山(せいざん)の雨(あめ)
  • 朱簾 … 朱塗りのすだれ。『全唐詩』『文苑英華』『唐詩別裁集』では「珠簾」に作る。こちらは玉すだれ。
  • 暮捲 … 夕暮れに(すだれを)巻き上げる。
  • 西山 … 南昌の西にある山の名。
閒雲潭影日悠悠
間雲(かんうん)潭影(たんえい) 日(ひ)に悠悠(ゆうゆう)
  • 間雲 … 静かに流れる雲。
  • 潭影 … 深い淵の色。
  • 日悠悠 … 日ごと日ごと、のどかな姿を見せている。日は、「日(ひび)に」と読んでもよい。
物換星移幾度秋
物(もの)換(かわ)り星(ほし)移(うつ)りて 幾度(いくたび)の秋(あき)ぞ
  • 物換 … 事物が変わっていくこと。万物が移ろうこと。
  • 星移 … 星が動いていく。歳月が経つこと。
  • 幾度秋 … 幾たびの秋が過ぎたことか。『四部叢刊本』『前唐十二家詩』『唐五十家詩集本』『延享刊本』『文苑英華』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『古文真宝後集』では「度幾秋」に作る。こちらは「幾(いく)秋(しゅう)をか度(わた)りし」と読む。
閣中帝子今何在
閣(かく)中(ちゅう)の帝(てい)子(し) 今(いま)何(いず)くにか在(あ)る
  • 閣中 … 高殿(たかどの)におられた。
  • 閣 … 『唐五十家詩集本』では「閤」に作る。
  • 帝子 … 帝(みかど)の子。滕王李元嬰を指す。
  • 今何在 … 今どこにおわすのか。
檻外長江空自流
檻外(かんがい)の長(ちょう)江(こう) 空(むな)しく自(おの)ずから流(なが)る
  • 檻外 … (滕王閣の)手すりの外。檻は、手すり。欄干(らんかん)。
  • 長江 … 通常は揚子江を指すが、滕王閣からは見えない。ここでは長い川という意味で、贛江(かんこう)を指す。前野直彬『唐詩選(上)』(岩波文庫)に「揚子江」とあるのは誤り。ウィキペディア【カン江】参照。
  • 空自流 … 昔と変わらず、むなしく滔々と流れている。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻二(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻五十五(排印本、中華書局、1960年)
  • 『王子安集』巻二(『四部叢刊 初編集部』所収)
  • 『王勃集』巻下([明]許自昌編、『前唐十二家詩』所収、万暦三十一年刊、内閣文庫蔵)
  • 『王勃集』巻下(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『王勃集』巻下(延享四年刊、『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、18頁、略称:延享刊本)
  • 『文苑英華』巻三百四十三(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩品彙』巻二十五([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻五([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『古文真宝後集』巻三・序類
歴代詩選
古代 前漢
後漢 魏
晋 南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
金 元
明 清
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行