創業は易く守成は難し
創業は易く守成は難し
- 出典:『貞観政要』君道(ウィキソース「貞觀政要/卷01」参照)
- 解釈:新しく事業を始めることよりも、その事業を維持し発展させていくことの方がいっそう難しい。
- 貞観政要 … 唐の太宗と魏徴や房玄齢ら臣下との間の政治上の論議を分類・編集した書。十巻40編。唐の呉兢(670~749)の撰。ウィキペディア【貞観政要】参照。
貞觀十年、太宗謂侍臣曰、帝王之業、草創與守成孰難。
貞観十年、太宗、侍臣に謂いて曰く、帝王の業、草創と守成と、孰れか難き、と。
- 業 … 事業。
- 草創 … 国家を打ち建てること。創業に同じ。
- 守成 … 建てた国家を守り続けること。
尚書左僕射房玄齡對曰、天地草昧、群雄競起、攻破乃降、戰勝乃剋。由此言之、草創爲難。
尚書左僕射房玄齢対えて曰く、天地草昧にして、群雄競い起る、攻め破りて乃ち降し、戦い勝ちて乃ち剋つ。此れに由りて之を言えば、草創を難しと為す、と。
- 尚書左僕射 … 副宰相。
- 草昧 … 物事が始まったばかりで、まだすべてに秩序の整わない時。
- 群雄 … 多くの英雄。
魏徴對曰、帝王之起、必承衰亂、覆彼昏狡、百姓樂推、四海歸命、天授人與。乃不爲難。然既得之後、志趣驕逸、百姓欲靜、而徭役不休、百姓凋殘、而侈務不息。國之衰弊、恆由此起。以斯而言、守成則難。
魏徴対えて曰く、帝王の起るや、必ず衰乱を承け、彼の昏狡を覆し、百姓、推すを楽しみ、四海、命に帰す。天授け、人与う、乃ち難しと為さず。然れども既に得たるの後は、志趣驕逸す。百姓は静かならんと欲すれども、徭役休まず。百姓凋残すれども、侈務息まず。国の衰弊は、恒に此れに由りて起る。斯を以て言えば、守成は則ち難し、と。
- 魏徴 … 唐初の名臣。580~643。
- 昏狡 … 道理に昏く、悪賢い者。
- 志趣 … 志向。
- 驕逸 … 驕り高ぶって、気ままに振る舞うこと。驕佚。
- 徭役 … 国家に対する義務として人民に課した労働。
- 凋残 … 衰え弱る。
- 侈務 … 帝王の贅沢な事業。
太宗曰、玄齡昔從我定天下、備嘗艱苦、出萬死而遇一生。所以見草創之難也。魏徴與我安天下、慮生驕逸之端、必踐危亡之地。所以見守成之難也。今草創之難、既已往矣。守成之難者、當思與公等愼之。
太宗曰く、玄齢は、昔、我に従いて天下を定め、備に艱苦を嘗め、万死を出でて一生に遇えり。草創の難きを見る所以なり。魏徴は、我と天下を安んじ、驕逸の端を生ぜば、必ず危亡の地を践まんことを慮る。守成の難きを見る所以なり。今、草創の難きは、既に已に往けり。守成の難きは、当に公等と之を慎まんことを思うべし、と。
- 艱苦 … 艱難と辛苦。
- 公等 … お前さんたち。
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