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奉使巡検両京路種果樹事畢入秦因詠歌(鄭審)

奉使巡檢兩京路種果樹事畢入秦因詠歌
使(つか)いを奉(ほう)じて両(りょう)京(けい)の路(みち)に果(か)樹(じゅ)を種(う)うることを巡(じゅん)検(けん)し、事(こと)畢(おわ)りて秦(しん)に入(い)り因(よ)って詠(えい)歌(か)す
鄭審(ていしん)
  • 五言排律。畿・菲・微・歸・肥・衣・闈・輝(上平声微韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷311」参照。
  • 奉使 … 勅命を帯びて出張すること。『漢書』昭帝紀に「使いを奉じて節を全うす」(奉使全節)とある。ウィキソース「漢書/卷007」参照。
  • 両京路 … 西京(長安)と東京(洛陽)とを結ぶ街道。
  • 種果樹 … 果樹を植えさせたこと。『旧唐書』玄宗紀の開元二十八年(740)の条に「春正月、両京路及び城中の苑内に果樹を種(う)えしむ」(春正月、兩京路及城中苑內種果樹)とある。ウィキソース「舊唐書/卷9」参照。
  • 巡検 … 見回って点検すること。
  • 事畢 … 任務が終わって。
  • 入秦 … 長安のある地方に入った。顧炎武『日知録』巻十二、官樹の条の原注に「入りて奏す」(入奏)とある。入奏は、宮中に参内して天子に奏上すること。入奏の方が正しいように思われる。ウィキソース「日知錄集釋/12」参照。
  • 因 … 「よりて」と読み、「そこで」と訳す。
  • 詠歌 … 詩を詠んだ。
  • この詩は、作者が勅命を帯びて、長安と洛陽とを結ぶ街道に果樹を植えさせ、それを見回って点検し、任務が終わって長安のある地方に入ったときに詠んだもの。
  • 鄭審 … 生没年不詳。盛唐の詩人。鄭州滎陽(けいよう)(河南省滎陽市)の人。鄭繇(ていよう)の子。粛宗の乾元(けんげん)年間(758~760)に袁(えん)州(しゅう)(江西省宜春市)刺史となり、さらに代宗の大暦(だいれき)の初め(766頃)には秘書監に任ぜられたが、大暦三年(768)、江陵(湖北省江陵県)少尹に左遷された。その頃から杜甫との詩の往来が始まり、親しい友人の一人となった。今に伝わる詩は、僅かに二首のみ。『全唐詩話続編』巻下(『清詩話』所収)に「審は、開元の時の人なり。大暦の初め、秘書監と為る。三年、出でて江陵の少尹と為る。杜甫に秋日夔府(きふ)に懐いを詠じ、鄭監審に寄す一百韻有り、又解悶(かいもん)詩に云く、何人か為に覓(もと)めん鄭瓜州。註に云く、鄭は秘監の審なり」(審、開元時人。大曆初、爲祕書監。三年、出爲江陵少尹。杜甫有秋日夔府詠懷寄鄭監審一百韻、又解悶詩云、何人爲覓鄭瓜州。註云、鄭祕監審也)とある。ウィキソース「全唐詩話續編/卷下」参照。百度百科【郑审】参照。
聖德周天壤
聖徳(せいとく) 天(てん)壌(じょう)に周(あまね)く
  • 聖徳 … 天子のすぐれた徳。
  • 天壌 … 天と地。天地。
  • 周 … 隅々まで行き渡る。
韶華滿帝畿
韶(しょう)華(か) 帝(てい)畿(き)に満(み)つ
  • 韶華 … うららかな春の光。明るい春の景色。韶は、美しい。
  • 帝畿 … 都を取りまく地方。
  • 満 … 満ち溢れている。
九重承渙汗
九重(きゅうちょう) 渙汗(かんかん)を承(う)け
  • 九重 … 宮廷・宮中を指す。宮殿の門を九つ重ねて作ってあることから。『楚辞』九弁に「君の門九重を以てす」(君之門以九重)とある。ウィキソース「楚辭/九辯」参照。
  • 渙汗 … 詔勅のこと。渙は、流れ散ること。出た汗がもとに戻らぬように、一度発した詔勅は取り消せないところからいう。『易経』渙の卦(か)に「九(きゅう)五(ご)、渙(かん)するとき其(そ)の大号(たいごう)を汗(あせ)にす。渙(かん)して王(おう)居(お)れば、咎(とが)无(な)し」(九五、渙汗其大號。渙王居、无咎)とあるのに基づく。ウィキソース「周易/渙」参照。
  • 承 … 受ける。承る。
千里樹芳菲
千(せん)里(り) 芳(ほう)菲(ひ)を樹(う)う
  • 千里 … 千里の道に。
  • 芳菲 … 草木の花が芳(かぐわ)しいこと。ここでは芳しい木。
  • 樹 … 植えることとなった。
陝塞餘陰薄
陝塞(せんさい) 余(よ)陰(いん)薄(うす)く
  • 陝塞 … 陝州(河南省三門峡市陝州区)の塞(とりで)。
  • 余陰薄 … 冬の名残りの陰気が薄れている。または、豊かな木陰が少ない。
關河舊色微
関(かん)河(が) 旧色(きゅうしょく)微(かす)かなり
  • 関河 … 関所のある川のほとり。ここでは黄河を指す。
  • 旧色 … 古びた木々の色。または、旧年の気色。冬の気色。
發生和氣動
発生(はっせい)して和気(わき)動(うご)き
  • 発生 … 春になって草木が芽生えること。『爾雅』釈天篇に「春を発生と為す」(春爲發生)とある。ウィキソース「爾雅」参照。
  • 和気 … 和らいだ春の気。
封植衆心歸
封(ほう)植(しょく)して衆(しゅう)心(しん)帰(き)す
  • 封植 … 土を盛って木を植えること。『春秋左氏伝』昭公二年に「嘉樹有り。宣子、之を誉む。武子曰く、宿(しゅく)敢えて此の樹を封殖せざらんや。以て角弓を忘るること無からん、と。遂に甘棠(かんとう)を賦す」(有嘉樹焉。宣子譽之。武子曰、宿敢不封殖此樹。以無忘角弓。遂賦甘棠)とある。ウィキソース「春秋左氏傳/昭公」参照。
  • 衆心 … 民衆の心。
  • 帰 … 天子の徳になびき従う。
春露條應弱
春(しゅん)露(ろ) 条(えだ) 応(まさ)に弱(よわ)かるべく
  • 春露 … 春の露に濡れて。
  • 条 … 枝。
  • 応弱 … まだ弱々しいだろうが。
  • 応 … 「まさに~すべし」と読み、「きっと~であろう」と訳す。再読文字。強い推量の意を示す。
秋霜果定肥
秋(しゅう)霜(そう) 果(か) 定(さだ)めて肥(こ)えん
  • 秋霜 … 秋の霜に打たれる頃には。
  • 果定肥 … きっと豊かな果実をつけるであろう。
影移行子蓋
影(かげ)は移(うつ)る 行(こう)子(し)の蓋(がい)
  • 影移行子蓋 … 茂った葉かげが、旅人の車のほろを追って移ることだろう。
  • 行子 … 旅人。
  • 蓋 … 車蓋。車のほろ。
香撲使臣衣
香(かお)りは撲(う)つ 使(し)臣(しん)の衣(ころも)
  • 香撲 … 花の香りがいっぱいに染みわたること。
  • 使臣 … 天子の命を受けて派遣されている臣下。
入徑迷馳道
径(こみち)に入(い)りて馳(ち)道(どう)に迷(まよ)い
  • 徑 … 小道。
  • 馳道 … 天子が行幸の際に通る道。お成り道。後漢の王延寿「魯の霊光殿の賦」(『文選』巻十一)に「是(ここ)に於(お)いてか連閣(れんかく)宮(きゅう)を承(う)け、馳(ち)道(どう)周(しゅう)環(かん)す」(於是乎連閣承宮、馳道周環)とあり、その李善注に「馳道は、人君の行く所の道なり。君必ず車馬に乗る。故に馳を以て名と為すなり」(馳道、人君所行之道也。君必乘車馬。故以馳爲名也)とある。ウィキソース「昭明文選/卷11」参照。
分行接禁闈
行(こう)を分(わか)ちて禁(きん)闈(い)に接(せっ)す
  • 分行 … 道の両側に分かれて並ぶ木々の列。
  • 禁闈 … 宮殿の小門。また、宮中。朝廷。闈は、宮城の小門。『爾雅』釈宮篇に「宮中の門、之を闈と謂う」(宮中之門謂之闈)とあり、その郭璞注に「相通ずるの小門を謂うなり」(謂相通小門也)とある。ウィキソース「爾雅註疏/卷05」参照。また『後漢書』周挙伝に「京輦(けいれん)に出入りし、欽(つつし)まんかなとの績(いさお)有り、禁闈に在りては、密静(みっせい)の風有り」(出入京輦、有欽哉之績、在禁闈、有密靜之風)とある。京輦は、天子のいる都。績は、功績。密静は、こっそりと静かなさま。ウィキソース「後漢書/卷61」参照。また、西晋の陸機「魏の武帝を弔う文」(『文選』巻六十)に「三才の闕典(けってん)を釐(おさ)め、天地の禁闈を啓(ひら)く」(釐三才之闕典、啓天地之禁闈)とある。三才は、天・地・人。闕典は、不完全な規則。禁闈は、ここでは奥義。ウィキソース「弔魏武帝文」参照。また、南朝梁の何遜「石頭にて庾郎丹に答う」詩に「相如 禁闈に阻まれ、何に由りてか簡易に従う」(相如阻禁闈、何由從簡易)とある。相如は、司馬相如。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷094」参照。
何當扈仙蹕
何当(いつ)か仙蹕(せんひつ)に扈(したが)い
  • 何当 … 「いつか」と読む。いつのことであろうか。
  • 仙蹕 … 天子の行幸の行列。蹕は、行列の先払い。
  • 扈 … 付き従う。君主のお供をすること。
攀折奉恩輝
攀折(はんせつ)して恩(おん)輝(き)に奉(ほう)ぜん
  • 攀折 … 枝を引き寄せて折ること。攀は、よじる。
  • 恩輝 … 恵みの光。天子の輝かしい恩徳をいう。
  • 奉 … 捧げまつる。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻四(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻三百十一(排印本、中華書局、1960年)
  • 『唐詩品彙』巻七十六([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『文苑英華』巻二百九十六(影印本、中華書局、1966年)
  • 『古今詩刪』巻十九(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
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