里仁第四 25 子曰德不孤章
091(04-25)
子曰、德不孤、必有鄰。
子曰、德不孤、必有鄰。
子曰く、徳は孤ならず、必ず隣有り。
現代語訳
- 先生 ――「道をふむなら、つれはあるもの。」(魚返善雄『論語新訳』)
- 孔子様がおっしゃるよう、「徳は孤立しない。必ず隣が出来る。」(穂積重遠『新訳論語』)
- 先師がいわれた。――
「徳というものは孤立するものではない。必ず隣ができるものだ」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 徳 … 徳のある人。有徳者。人格者。
- 不 … 「ず」「ざる」と読み、「~でない」と訳す。下にくる言葉を打ち消す否定詞。
- 孤 … 孤立。一人ぼっち。
- 有 … できる。現れる。
- 鄰 … 仲間。理解者。支持者。共鳴する隣人。「鄰」は「隣」の異体字。
補説
- 『注疏』に「此の章は人に徳を脩むるを勉むるなり」(此章勉人脩德也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 徳不孤、必有隣 … 『集解』の何晏の注に「方は類を以て聚まり、同志相求む。故に必ず鄰有るなり。是を以て孤ならざるなり」(方以類聚、同志相求。故必有鄰也。是以不孤也)とある。「方は類を以て聚まる」(方以類聚)は『易経』繋辞上伝の言葉。ウィキソース「易傳/繫辭上」(第一章)参照。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「言うこころは人にして徳有る者、此の人孤然たるに非ざるなり。而も必ず善き隣里有り。故に云う、魯に君子者無くんば、子賤斯れ焉くにか斯を取らん、と。又た一に云う、隣は、報なり。言うこころは徳行孤失ならず、必ず人の為に報ぜらるるなり、と。故に殷仲堪曰く、誠を推して相与するときは、則ち殊類親しむ可し、善を以て物に接するときは、物も亦た皆忘れず、善を以て之に応ず。是を以て徳は孤ならず、必ず隣有るなり、と」(言人有德者、此人非孤然。而必有善鄰里。故云、魯無君子者、子賤斯焉取斯乎。又一云、鄰、報也。言德行不孤失、必爲人所報也。故殷仲堪曰、推誠相與、則殊類可親、以善接物、物亦不皆忘、以善應之。是以德不孤焉、必有鄰也)とある。「魯に君子者」以下は、「公冶長第五2」の語。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「徳有れば則ち人の慕仰する所となり、居は孤特ならず、必ず同志の相求めて、之と隣を為すこと有るなり」(有德則人所慕仰、居不孤特、必有同志相求、與之爲鄰也)とある。また『集注』に「隣は、猶お親のごときなり。徳は孤立せず、必ず類を以て応ず。故に徳有る者は、必ず其の類有りて之に従う。居の隣有るが如きなり」(鄰、猶親也。德不孤立、必以類應。故有德者、必有其類從之。如居之有鄰也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「方は類を以て聚まると云うは、周易上繫辞の文なり。方は、法術性行を謂う。各〻類を以て相聚まるなり」(云方以類聚者、周易上繫辭文也。方、謂法術性行。各以類相聚也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 伊藤仁斎『論語古義』に「人知らずして慍らざるは、君子の心なり。然れども徳は孤ならず、必ず鄰有るは、必然の理なり。故に夫子徳の既に成りて、必ず孤立無きの理を言いて、以て学者の志を定めたり。亦た禄其の中に在るの意なり。学者惟だ当に徳の成らざるを患いて、饑渇を以て心の害と為すこと無かるなり」(人不知而不慍、君子之心也。然德不孤必有鄰、必然之理也。故夫子言德之既成、必無孤立之理、以定學者之志。亦祿在其中之意。學者惟當患德之不成、而無以饑渇爲心害也)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠『論語徴』に「鄰は、臣なるかな鄰なるかなの鄰の如し。必ず助くる有るを謂うなり。易に曰く、敬義立ちて徳孤ならずとは、亦た助け多きを謂える者なり。詩に云う、民の彝を秉れる、是の懿徳を好む、と。是れ徳の助け多き所以なり。夫れ徳ありて而も助くる有ること莫き者は、則ち湯と文王と、豈に七十里若しくは百里にして興らんや。古註に、方は類を以て聚まり、同志相求むを引くは、謬れりと謂う可し。仁斎先生、禄其の中に在りを引くは、鄙なりと謂う可し」(鄰、如臣哉鄰哉之鄰。謂必有助也。易曰、敬義立而德不孤、亦謂多助者也。詩云、民之秉彝、好是懿德。是德之所以多助也。夫德而莫有助焉者、則湯與文王、豈七十里若百里而興乎哉。古註、引方以類聚、同志相求、可謂謬矣。仁齋先生引祿在其中矣、可謂鄙矣)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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