奉和聖製途経華岳(張説)
奉和聖製途經華嶽
聖製「途に華岳を経たり」に和し奉る
聖製「途に華岳を経たり」に和し奉る
- 五言排律。京・淸・迎・成・情・生・名(平声庚韻)。
- 『全唐詩』巻八十八所収。ウィキソース「奉和聖製途經華嶽應制」参照。
- 奉和聖製途経華岳 … 『全唐詩』では「奉和聖製途経華岳応制」に作る。「応制」は、天子の命令によって作った詩文のこと。
- 聖製 … 天子の作られた詩歌。御製。
- 途 … (行幸の)途中。
- 華岳 … 華山。陝西省華陰市にある。五岳(泰山・嵩山・恒山・衡山・華山)の一つ。西岳とも。ウィキペディア【華山】参照。
- 経 … 通りかかって。
- この詩は、開元十二年(724)十一月、玄宗皇帝(在位712~756)が洛陽に行幸の途中、華山のふもとを通りかかった時に作った詩に、作者が唱和したもの。玄宗皇帝の詩は『全唐詩』巻三に見える。ウィキソース「途經華嶽」参照。なお、張九齡と蘇頲も同時に唱和している。ウィキソース「奉和聖製途經華山」「奉和聖製途經華嶽應制 (蘇頲)」参照。
- 張説 … 667~730。初唐の詩人、政治家。字は道済、または説之。洛陽(河南省)の人。永昌元年(689)、賢良方正科の科挙に主席で合格。太子校書郎から鳳閣舎人、中書令(宰相)などを歴任し、燕国公に封ぜられた。『張説之文集』二十五巻がある。ウィキペディア【張説】参照。
西嶽鎭皇京
西岳 皇京を鎮め
- 西岳 … 華山。五岳のうち西にあるのでいう。
- 皇京 … 天子のおられる地。都のこと。長安を指す。皇邑とも。
- 鎮 … 鎮護する。
中峯入太淸
中峰 太清に入る
- 中峰 … 華山の中央の峰。
- 太清 … 天。天空。
玉鑾重嶺應
玉鑾 重嶺応じ
- 玉鑾 … 天子の乗る車につける鈴。
- 重嶺 … 幾重にも重なった嶺々。
- 応 … こだまする。
緹騎薄雲迎
緹騎 薄雲迎う
- 緹騎 … 赤黄色の軍服を着た護衛の騎馬隊。「緹」は、赤黄色。丹黄色。
- 薄雲迎 … 薄い雲が低く垂れ下がって、騎馬隊を迎える。
白日懸高掌
白日 高掌に懸かり
- 白日 … 明るく輝く太陽。『全唐詩』では「霽日」に作る。こちらは、晴れ渡った空に輝く太陽。
- 高掌 … 華山にある崖の名。昔、華山は首陽山と一つの山であったが、黄河の神が押し開いて二山とし、その間から黄河を通したという伝説がある。『水経注』巻四に「左丘明『国語』に云く、華岳は本一山なり。河に当り、河水過ぎて曲行す。河神巨霊、手蕩し脚蹋み、開いて両と為す。今掌足の跡、仍お華巌に存す」(左丘明國語云、華岳本一山。當河、河水過而曲行。河神巨靈、手蕩腳蹋、開而爲兩。今掌足之跡、仍存華巖)とある。ウィキソース「水經注/04」参照。後漢の張衡「西京の賦」(『文選』巻二)に「左に崤函の重険、桃林の塞有り。綴するに二華を以てし、巨霊贔屓し、掌を高くし蹠を遠くし、以て河曲を流せり。厥の跡猶お存す」(左有崤函重險、桃林之塞。綴以二華、巨靈贔屓、高掌遠蹠、以流河曲。厥跡猶存)とある。ウィキソース「西京賦」参照。
寒空映削成
寒空 削成に映ず
- 寒空 … 寒々とした空。
- 削成 … 山を削って作り上げたように、険しくそそり立つこと。華山の峰の険しいさま。『山海経』西山経に「又西六十里を、太華の山と曰う。削成して四方なり。其の高さ五千仞、其の広さ十里」(又西六十里、曰太華之山。削成而四方。其高五千仞、其廣十里)とある。ウィキソース「山海經/西山經」参照。
- 映 … くっきりと映える。『全唐詩』では「類」に作る。
軒遊會神處
軒遊 神に会する処
漢幸望仙情
漢幸 仙を望むの情
- 漢幸望仙情 … 漢の武帝が行幸して、神仙を望まれた気持ちも偲ばれる。「漢」は、漢の武帝。「幸」は、行幸。武帝は神仙に憧れて不老不死を願い、華山に行幸して山中に祈禱の場所を作ったり、華陰に望仙台を築くなどして、歳時に祈禱した。
舊廟靑林古
旧廟 青林古り
- 旧廟 … 華岳廟のこと。華山のふもとにあり、華山の神を祀った。
- 青林古 … 青々と茂った林が年を経て神々しい。
新碑綠字生
新碑 緑字生なり
羣臣願封岱
群臣 願うらくは岱に封じ
- 群臣願 … われわれ臣下の願いは。
- 封岱 … 陛下が泰山で封禅の儀を執り行うこと。「岱」は、泰山のこと。ウィキペディア【封禅】参照。ちなみに、玄宗は翌開元十三年(725年)、張説らの希望通り、泰山に登って封禅の儀を行った。
廻駕勒鴻名
駕を廻らして鴻名を勒せんことを
- 廻駕 … 車駕を廻らす。「廻」は、『全唐詩』では「還」に作る。
- 鴻名 … 陛下の偉大なる御名。
- 勒 … 石に刻み込む。
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