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臨洞庭(孟浩然)

臨洞庭
洞庭どうていのぞ
もう浩然こうねん
  • 〔出典〕 『唐詩選』巻三、『唐詩三百首』五言律詩、『全唐詩』巻百六十、『文苑英華』巻二百五十、他
  • 五言律詩。清・城・明・情(平声庚韻)。
  • 臨洞庭 … 『唐詩三百首』では「洞庭に望み、張丞相にたてまつる」(望洞庭上張丞相)に作る。『全唐詩』では「望洞庭湖贈張丞相」に作り、「一作臨洞庭」とある。『文苑英華』では「望洞庭湖上張丞相」に作り、「集作岳陽樓」とある。
  • ウィキソース「望洞庭湖贈張丞相」参照。
  • 洞庭 … 洞庭湖。湖南省北部にある淡水湖。ウィキペディア【洞庭湖】参照。
  • 臨 … 目の前にする。高い所から下を見る。
  • この詩は洞庭湖の壮大な光景を前にしながら、自分の感慨を述べたもの。この詩を張丞相に贈り、暗に仕官を依頼したという。張丞相とは一般に張九齢(673~740)であろうといわれているが、一方でちょうえつ(667~730)ではないかともいわれている。
  • 孟浩然 … 689~740。盛唐の詩人。じょうよう(湖北省)の人。名は浩、浩然はあざな。ウィキペディア【孟浩然】参照。
八月湖水平
八月はちがつ すいたいらかなり
  • 八月 … 陰暦八月。中秋。
  • 湖水平 … 長江が増水し、湖の水が平らにみなぎり、水面が限りなく広がっている様子。
涵虚混太清
きょひたして太清たいせいこん
  • 虚 … 虚空。大空。
  • 涵 … 浸す。
  • 太清 … 天。道教用語。
  • 混 … 空と水とが一つに混ざり合う。
氣蒸雲夢澤
す 雲夢うんぼうたく
  • 気蒸 … 水蒸気が立ちのぼる。
  • 雲夢沢 … 今の湖北省南部から湖南省北部にかけてあったといわれる広大なしょうたくの名。
波撼岳陽城
なみうごかす 岳陽城がくようじょう
  • 波撼 … 湖水の波が揺り動かさんばかりに打ち寄せる。「撼」は、揺るがす。動かす。『全唐詩』には「一作動」とある。
  • 岳陽城 … 岳陽の町。「城」は都市を取り囲む城壁のこと。ちなみに内側の壁を「城」、外側の壁を「郭」、その総称を「城郭」という。
欲濟無舟楫
わたらんとほっするに舟楫しゅうしゅう
  • 欲済 … 洞庭湖を渡ろうとしても。「済」は渡る。ここでは官吏となって政治に参加することの喩え。
  • 舟楫 … 舟とかい。ここでは官職に就くための手段の喩え。『書経』説命えつめい上に「巨川きょせんわたらば、なんじもっ舟楫しゅうしゅうさん」(若濟巨川、用汝作舟楫)とあるのに基づく。ウィキソース「尚書/說命上」参照。
端居恥聖明
端居たんきょして聖明せいめい
  • 端居 … なすこともなく、じっとしている。
  • 聖明 … 天子の明徳。立派な天子の治世。立派に治まっている御代みよ
  • 恥 … 恥ずかしい。恥じ入るばかりである。
坐觀垂釣者
そぞろにつりるるもの
  • 坐 … ただ何となく。
  • 坐観 … 『全唐詩』には「一作徒憐」とある。
  • 垂釣者 … 釣り糸を垂れている人。
  • 者 … 『全唐詩』には「一作叟」とある。
  • 観 … 見ては。眺めては。
徒有羨魚情
いたずらにうおうらやむのじょう
  • 徒 … むなしくも。むなしいことではあるが。むなしいことだとは知りながら。『全唐詩』では「空」に作り、「一作徒」とある。
  • 羨魚情 … 自分も魚が欲しいと(釣り人を)うらやむ気持ち。ここでは官職に就きたいという気持ちの喩えで、才能も努力もなしに仕官を求める愚かさを自嘲している。『漢書かんじょ』巻五十六、とうちゅうじょ伝に「淵に臨んで魚を羨むは、退いて網を結ぶにかず」(臨淵羨魚、不如退而結網)とあるのに基づく。ウィキソース「漢書/卷056」参照。
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