過故人荘(孟浩然)
過故人莊
故人の荘に過る
故人の荘に過る
- 〔テキスト〕 『唐詩三百首』五言律詩、『全唐詩』巻一百六十、『孟浩然詩集』巻下(宋蜀刻本唐人集叢刊、略称:宋本)、『孟浩然集』巻四(『四部叢刊 初編集部』所収)、『孟浩然集』巻四(『四部備要 集部』所収、略称:四部備要本)、『孟浩然集』巻二(『唐五十家詩集』所収)、『孟浩然詩集』(元文四年刊、『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、141頁、略称:元文刊本)、『孟浩然詩集』巻下(元禄三年刊、『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、185頁、略称:元禄刊本)、『唐詩品彙』巻六十、『唐詩別裁集』巻九、他
- 五言律詩。家・斜・麻・花(平声麻韻)。
- ウィキソース「過故人莊」「孟浩然集 (四部叢刊本)/卷第四」参照。
- 詩題 … 『宋本』『四部叢刊本』では「過故人㽵」に作る。「㽵」は「荘」の異体字。『唐詩品彙』では「過故人庄」に作る。「庄」は「荘」と同義。
- 故人 … 古くからの友人。昔なじみの友人。旧友。誰を指すかは不明。
- 荘 … 別荘。
- 過 … 「よぎる」と読む。立ち寄る。『史記』田叔伝に「会〻賢大夫少府趙禹来りて衛将軍に過る」(會賢大夫少府趙禹來過衛將軍)とある。ウィキソース「史記/卷104」参照。
- 孟浩然 … 689~740。盛唐の詩人。襄陽(湖北省)の人。名は浩、浩然は字。若い頃、科挙に及第できず、諸国を放浪した末、郷里の鹿門山に隠棲した。四十歳のとき、都に出て張九齢や王維らと親交を結んだが、仕官はできなかった。その後、張九齢が荊州(湖北省)の長史(地方長官の属官)に左遷されたとき、招かれて従事(輔佐官)となったが、まもなく辞任し、江南を放浪した末、郷里に帰ってまた隠棲生活に入り、一生を終えた。多く自然を歌い、王維と並び称される。「春眠暁を覚えず」で始まる「春暁」が最も有名。『孟浩然集』四巻がある。ウィキペディア【孟浩然】参照。
故人具雞黍
故人 鶏黍を具え
- 鶏黍 … 鶏を殺して羹を作り、黍の飯を炊く。客を心からもてなすこと。『論語』微子第十八7に「子路を止めて宿せしめ、雞を殺し黍を為りて之を食わしむ」(止子路宿、殺雞爲黍而食之)とある。
- 雞 … 「鶏」の異体字。『宋本』『唐詩品彙』では「鷄」に作る。こちらは「鶏」の旧字。
- 具 … 用意する。
邀我至田家
我を邀えて 田家に至らしむ
- 邀 … 招く。迎える。
- 田家 … 田舎の家。農家。詩題の「故人の荘」を指す。
綠樹村邊合
緑樹 村辺に合し
- 緑樹 … 緑の木々。青葉の茂った樹木。
- 村辺合 … 村の周囲を取り囲んでいる。「村辺」は、村の境。「合」は、取り囲む。
靑山郭外斜
青山 郭外に斜めなり
- 青山 … 青い山々。
- 郭外 … 村を取り囲む土壁の向こう。
- 斜 … 斜めに連なっている。斜めに見えている。
開軒面場圃
軒を開きて 場圃に面し
- 開軒 … 窓を開いて。『宋本』『全唐詩』『四部叢刊本』『四部備要本』『唐五十家詩集本』『元禄刊本』では「開筵」に作る。こちらは、宴席を開いて。
- 面 … 『唐詩品彙』では「靣」に作る。異体字。
- 場圃 … 畑。「場」は、春・夏には耕して畑とし、秋には畑の一部を築き固め、穀物を処理する場所。「圃」は、畑。菜園。
- 場 … 『元禄刊本』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』では「塲」に作る。異体字。
- 面 … 向かい合う。対する。
把酒話桑麻
酒を把りて 桑麻を話る
- 把酒 … 酒杯を手に持って。
- 桑麻 … 桑や麻の出来具合。
- 話 … 語り合う。話題にする。
待到重陽日
重陽の日に到るを待ちて
- 重陽 … 陰暦九月九日。菊の節句。この日には、小高い丘に登って菊酒を飲み、災厄を払う風習があった。
- 待到 … ~になったら。
還來就菊花
還た来りて 菊花に就かん
- 還 … 「また」と読み、「もう一度」「再び」と訳す。
- 就 … 近づいて見物する。見て楽しむ。
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