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春暁(孟浩然)

春曉
春暁しゅんぎょう
もう浩然こうねん
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻六、『唐詩三百首』五言絶句、『全唐詩』巻一百六十、『孟浩然詩集』巻上(宋蜀刻本唐人集叢刊、略称:宋本)、『孟浩然集』巻四(『四部叢刊 初編集部』所収)、『孟浩然集』巻四(『四部備要 集部』所収、略称:四部備要本)、『孟浩然集』巻三(『唐五十家詩集』所収)、『孟浩然詩集』(元文四年刊、『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、153頁、略称:元文刊本)、『孟浩然詩集』巻上(元禄三年刊、『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、161頁、略称:元禄刊本)、『文苑英華』巻一百五十七、『唐詩品彙』巻三十九、他
  • 五言絶句。曉・鳥・少(上声篠韻)。
  • ウィキソース「春曉 (孟浩然)」「孟浩然集 (四部叢刊本)/卷第四」参照。
  • 春暁 … 春の夜明け。『宋本』では「春晩絶句」に作る。「春晩」とは晩春のこと。
  • 孟浩然 … 689~740。盛唐の詩人。じょうよう(湖北省)の人。名は浩、浩然はあざな。若い頃、科挙に及第できず、諸国を放浪した末、郷里の鹿門山に隠棲した。四十歳のとき、都に出て張九齢や王維らと親交を結んだが、仕官はできなかった。その後、張九齢がけいしゅう(湖北省)のちょう(地方長官の属官)に左遷されたとき、招かれてじゅう(輔佐官)となったが、まもなく辞任し、江南を放浪した末、郷里に帰ってまた隠棲生活に入り、一生を終えた。多く自然を歌い、王維と並び称される。「春眠暁を覚えず」で始まる「春暁」が最も有名。『孟浩然集』四巻がある。ウィキペディア【孟浩然】参照。
春眠不覺曉
しゅんみん あかつきおぼえず
  • 春眠 … 春の夜の心地よい眠り。
  • 暁 … 夜が明けたこと。
  • 不覚 …気づかない。
處處聞啼鳥
処処しょしょ ていちょう
  • 処処 … あちこちで。あちらこちらから。
  • 聞 … 自然に聞こえてくる。「聴」は意識的に聞く。
  • 啼鳥 … 鳥の鳴き声。鳥のさえずり。「啼」は、声を出して続けて鳴くこと。
夜來風雨聲
らい ふうこえ
  • 夜来 … 昨夜。「来」は語調をととのえる助字。
  • 風雨声 … 風や雨の音。
  • 夜來風雨聲 … 『文苑英華』では「欲知昨夜風」に作り、「集作夜來風雨聲」とある。また、『全唐詩』には結句の下に「一作欲知昨夜風。花落無多少」とある。
花落知多少
はなつること んぬしょう
  • 知 … 『文苑英華』には「一作無」とある。
  • 多少 … 疑問詞。どれくらい。どれほど。また、「多少」の「少」は添え字で意味がなく、「多い」と解する説もある。
  • 知多少 … いったいどれくらい散ったことだろうか。ここでは従来から読み慣わしてきた「知んぬ多少ぞ」を採用した。「知る多少」「知りぬ多少ぞ」「多少なるを知らんや」などとも読む。
余説
この詩には、井伏鱒二の訳詩がある。
 ハルノネザメノウツツデ聞ケバ
 トリノナクネデ目ガサメマシタ
 ヨルノアラシニ雨マジリ
 散ツタ木ノ花イカホドバカリ
   (井伏鱒二『厄除け詩集』)
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