碩鼠(『詩経』国風・魏風)
碩鼠
碩鼠
碩鼠
- 〔テキスト〕 『毛詩』巻五(『四部叢刊 初編経部』所収)、『詩集伝』巻五(『四部叢刊 三編経部』所収)、他
- 四言古詩。〔第一章〕鼠(sjia)・黍(sjia)・女(njia)・顧(ka)・土(tha)・所(shia)(魚部)。〔第二章〕鼠(sjia)・女(njia)(魚部)。麥(muək)・德(tək)・國(kuək)・直(diək)(職部)。〔第三章〕鼠(sjia)・女(njia)(魚部)。苗(miô)・勞(lô)・郊(keô)・號(hô)(宵部)。※王力『诗经韵读』(上海古籍出版社、1980年)の《诗经》入韵字音表(111~145頁)および217~218頁参照。
- ウィキソース「詩經/碩鼠」参照。
- この詩は重い税に苦しむ農民の歌ではあるが、どこか楽天的な趣がある。
- 碩鼠 … 大きなねずみ。「碩」は大きいこと。
- 詩経 … 中国最古の詩集。305編。孔子が編集したといわれる。風(諸国の民謡)・雅(宮廷の音楽)・頌(祭礼の歌)の三部からなる。風は国風ともいい、周南・召南・邶・鄘・衛・王・鄭・斉・魏・唐・秦・陳・檜・曹・豳の十五に分かれる。雅は大雅・小雅の二つに分かれる。頌は周頌・魯頌・商頌の三つに分かれる。五経の一つ。十三経の一つ。『毛詩』『詩』ともいう。ウィキペディア【詩経】参照。
〔第一章〕
碩鼠碩鼠
碩鼠碩鼠
碩鼠 碩鼠
- 碩鼠碩鼠 … 大ねずみよ、大ねずみよ。
無食我黍
我が黍を食む無かれ
- 黍 … きび。ウィキペディア【キビ】参照。
- 食 … 「食らう」と読んでもよい。
三歲貫女
三歳 女に貫えしも
- 三歳 … 三年間。または、長い間。
- 女 … お前。「汝」と同じ。
- 貫 … 仕える。
莫我肯顧
我を肯えて顧みる莫し
- 顧 … 気にかける。心に止めてくれる。
逝將去女
逝きて将に女を去り
- 逝 … 行く。また、「逝に」「逝って」と読む説もある。
適彼樂土
彼の楽土に適かんとす
- 楽土 … 安心して住める土地。平和で楽しい土地。ユートピア。
- 適 … 行く。
樂土樂土
楽土 楽土
爰得我所
爰に我が所を得ん
- 爰 … 「ここに」と読む。ここに。そこで。
- 我所 … わが安住の場所。
〔第二章〕
碩鼠碩鼠
碩鼠碩鼠
碩鼠 碩鼠
無食我麥
我が麦を食む無かれ
三歲貫女
三歳 女に貫えしも
莫我肯德
我を肯えて徳とする莫し
- 徳 … 恩を感じる。恩恵と思う。
逝將去女
逝きて将に女を去り
適彼樂國
彼の楽国に適かんとす
- 楽国 … 楽しい国。
樂國樂國
楽国 楽国
爰得我直
爰に我が直しさを得ん
- 直 … 正しく生きられる場所。
〔第三章〕
碩鼠碩鼠
碩鼠碩鼠
碩鼠 碩鼠
無食我苗
我が苗を食む無かれ
- 苗 … 稲や麦の苗。
三歲貫女
三歳 女に貫えしも
莫我肯勞
我を肯えて労とする莫し
- 労 … ねぎらう。いたわる。
逝將去女
逝きて将に女を去り
適彼樂郊
彼の楽郊に適かんとす
- 楽郊 … 安楽な土地。「郊」は郊外。「楽土」「楽国」とほぼ同じ。
樂郊樂郊
楽郊 楽郊
誰之永號
誰か之きて永号せん
- 之 … 行く。「これ」と読む説もある。
- 永号 … 声を長くのばし、嘆いて泣き叫ぶ。
余説
- 碩鼠 … 鄭玄『鄭箋』および朱熹『詩集伝』に「碩は大なり」(碩大也)とある。
- 貫 … 毛亨『毛伝』に「貫は事うるなり」(貫事也)とある。
- 逝 … 『鄭箋』および『集伝』に「逝は往くなり」(逝往也)とある。
- 楽土 … 『鄭箋』に「楽土は有徳の国」(樂土有德之國)とある。『集伝』に「楽土は有道の国なり」(樂土有道之國也)とある。
- 爰 … 『鄭箋』に「爰は曰なり」(爰曰也)とある。『集伝』に「爰は於なり」(爰於也)とある。
- 直 … 『毛伝』に「直は其の直道を得る」(直得其直道)とある。『鄭箋』に「直は猶お正のごときなり」(直猶正也)とある。
- 苗 … 『毛伝』に「苗は嘉穀なり」(苗嘉穀也)とある。
- 楽郊 … 『鄭箋』に「郭外を郊と曰う」(郭外曰郊)とある。
- 之 … 『鄭箋』に「之は往くなり」(之往也)とある。
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