君子于役(『詩経』国風・王風)
君子于役
君子于役
君子于役
- 〔テキスト〕 『毛詩』巻四(『四部叢刊 初編経部』所収)、『詩集伝』巻四(『四部叢刊 三編経部』所収)、他
- 雑言古詩。〔第一章〕期(giə)・哉(tzə)・塒(zjiə)・來(lə)・思(siə)(之部)。〔第二章〕月(ngiuat)・佸(kuat)・桀(qiat)・括(kuat)・渇(khat)(月部)。※王力『诗经韵读』(上海古籍出版社、1980年)の《诗经》入韵字音表(111~145頁)および189~190頁参照。
- ウィキソース「詩經/君子于役」参照。
- この詩は、公務の出張で遠く離れている夫を思う歌。
- 君子 … 夫のこと。
- 于 … 往く。
- 役 … 公務。行役(仕事で遠い地へ行かせる)。
- 詩経 … 中国最古の詩集。305編。孔子が編集したといわれる。風(諸国の民謡)・雅(宮廷の音楽)・頌(祭礼の歌)の三部からなる。風は国風ともいい、周南・召南・邶・鄘・衛・王・鄭・斉・魏・唐・秦・陳・檜・曹・豳の十五に分かれる。雅は大雅・小雅の二つに分かれる。頌は周頌・魯頌・商頌の三つに分かれる。五経の一つ。十三経の一つ。『毛詩』『詩』ともいう。ウィキペディア【詩経】参照。
〔第一章〕
君子于役
君子于役
君子 役に于く
- 君子于役 … わが夫は遠くのお役目に行った。
不知其期
其の期を知らず
- 期 … 帰ってくる時期。
曷至哉
曷くにか至らんや
- 曷至哉 … どこまで行かれたのやら。「曷」は、ここでは場所を尋ねる疑問詞に解釈した。
雞棲于塒
鶏は塒に棲み
- 塒 … ねぐら。
日之夕矣
日の夕べ
- 日之夕矣 … 日が暮れて。日が暮れれば。「矣」は句末の助字。訓読しない。
羊牛下來
羊牛は下り来る
- 羊牛 … 羊や牛。
- 下来 … 山から戻ってくる。
君子于役
君子 役に于く
如之何勿思
之を如何ぞ思う勿からん
- 如~何 … どうして~せずにいられようか。反語。「如何」と同じ。ここでは「之」を間にはさんだ形。「之」は語調を整えるための助字で、特に指すところはない。
- 思 … 心配する。
- 勿 … 「不」「無」と同じ。
〔第二章〕
君子于役
君子于役
君子 役に于く
不日不月
日あらず月あらず
- 不日不月 … もうどれくらい月日が過ぎ去ったのかわからない。また、「日せず月せず」と読み、「帰ってくる期日がわからない」と解釈する説もある。
曷其有佸
曷か其れ佸うこと有らん
- 曷其有佸 … いつになったら会えることやら。「佸」は会う。再会する。
雞棲于桀
鶏は桀に棲み
- 桀 … 止まり木。
日之夕矣
日の夕べ
羊牛下括
羊牛は下り括る
- 括 … やってくること。山から戻ってくる。山からおりてくる。
君子于役
君子 役に于く
苟無飢渇
苟くも飢渇すること無かれ
- 苟 … 「かりそめに(も)」と読んでも良い。「かりそめにも」「せめて」「とりあえず」「なんとか」と訳す。
- 飢渇 … 飢えとかわき。ひもじい思いをする。
余説
- 君子 … 朱熹『詩集伝』に「君子は婦人其の夫を目するの辞」(君子婦人目其夫之辭)とある。
- 期 … 『集伝』に「其の反還の期を知らず」(不知其反還之期)とある。「反還」は「返還」と同じ。
- 曷至哉 … 『集伝』に「且つ今亦た何れの所にか至らんや」(且今亦何所至哉)とある。
- 棲于塒 … 毛亨『毛伝』に「牆を鑿ちて棲むを塒と曰う」(鑿牆而棲曰塒)とある。
- 日之夕矣 羊牛下来 … 『集伝』に「日夕すれば則ち羊先ず帰りて牛之に次ぐ」(日夕則羊先歸而牛次之)とある。
- 不日不月 … 『集伝』に「君子役に行くの久しければ、計うるに日月を以てす可からず」(君子行役之久、不可計以日月)とある。
- 佸 … 『毛伝』に「佸は会うなり」(佸會也)とある。『集伝』にも「佸は会うなり」(佸會)とある。
- 桀 … 『毛伝』に「雞の杙に棲むを桀と為す」(雞棲于杙爲桀)とある。『集伝』にも「桀は杙なり」(桀杙)とある。
- 括 … 『毛伝』に「括は至るなり」(括至也)とある。『集伝』にも「括は至るなり」(括至)とある。
- 苟 … 『集伝』にも「苟は且なり」(苟且)とある。
こちらもオススメ!
歴代詩選 | |
古代 | 前漢 |
後漢 | 魏 |
晋 | 南北朝 |
初唐 | 盛唐 |
中唐 | 晩唐 |
北宋 | 南宋 |
金 | 元 |
明 | 清 |
唐詩選 | |
巻一 五言古詩 | 巻二 七言古詩 |
巻三 五言律詩 | 巻四 五言排律 |
巻五 七言律詩 | 巻六 五言絶句 |
巻七 七言絶句 |
詩人別 | ||
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | は行 | ま行 |
や行 | ら行 |