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静女(『詩経』国風・邶風)

靜女
静女(せいじょ)
『詩経』国風・邶風(はいふう)
  • 〔テキスト〕 『毛詩』巻二(『四部叢刊 初編経部』所収)、『詩集伝』巻二(『四部叢刊 三編経部』所収)、他
  • 雑言古詩。〔第一章〕姝(sjio)・隅(ngio)・躕(dio)(侯部)。〔第二章〕孌(liuan)・管(kuan)(元部)。煒(hiuəi)・美(miei)(微脂合韻)。〔第三章〕荑(dyei)・美(miei)(脂部)。異(jiək)・貽(jiə)(職之通韻)。※王力『诗经韵读』(上海古籍出版社、1980年)の《诗经》入韵字音表(111~145頁)および172~173頁参照。
  • ウィキソース「詩經/靜女」参照。
  • この詩は、男性の側から詠んだ恋する女性との逢引きの歌。
  • 静女 … 物静かで、しとやかな女性。
  • 詩経 … 中国最古の詩集。305編。孔子が編集したといわれる。風(諸国の民謡)・雅(宮廷の音楽)・頌(しょう)(祭礼の歌)の三部からなる。風は国風ともいい、周南・召南・邶(はい)・鄘(よう)・衛・王・鄭・斉・魏・唐・秦・陳・檜・曹・豳(ひん)の十五に分かれる。雅は大雅・小雅の二つに分かれる。頌は周頌・魯頌・商頌の三つに分かれる。五経の一つ。十三経の一つ。『毛詩』『詩』ともいう。ウィキペディア【詩経】参照。
〔第一章〕
靜女其姝
静女(せいじょ) 其(そ)れ姝(かおよ)し
  • 其 … 語調を整える助辞。
  • 姝 … 「かおよし」と読む。顔が美しい。美人である。
俟我於城隅
我(われ)を城(じょう)隅(ぐう)に俟(ま)つ
  • 城隅 … 町を囲む城壁の片すみ。人の寄らない町はずれ。
  • 俟 … 待つ。
愛而不見
愛(あい)として見(み)えず
  • 愛 … 薆に同じ。ぼんやりと霞むさま。
搔首踟躕
首(こうべ)を搔(か)きて踟(ち)躕(ちゅう)す
  • 搔首 … 頭をかく。待ちくたびれて不安なときの動作。
  • 踟躕 … 行きつ戻りつする。うろうろする。双声の語。
〔第二章〕
靜女其孌
静女(せいじょ) 其(そ)れ孌(れん)たり
  • 孌 … 女らしくて美しい。なまめかしい。色っぽい。
貽我彤管
我(われ)に彤管(とうかん)を貽(おく)る
  • 彤管 … 朱色の筆。または、朱色の笛。彤は、朱色。朱管に同じ。
  • 貽 … 人に物を贈る。
彤管有煒
彤管(とうかん)煒(い)たる有(あ)り
  • 煒 … 赤々と輝くさま。
說懌女美
女(なんじ)の美(び)を説懌(えつえき)す
  • 女 … 汝に同じ。彤管(とうかん)を指す。
  • 説懌 … 心の緊張が解けて喜ぶこと。説は、悦に同じ。
〔第三章〕
自牧歸荑
牧(ぼく)より荑(つばな)を帰(おく)る
  • 牧 … 郊外の野原。
  • 自 … 「より」と読み、「~から」と訳す。時間・場所などの起点を示す。
  • 荑 … つばな。茅(かや)の初めて芽を出したもの。
  • 帰 … 物を贈る。貽に同じ。
洵美且異
洵(まこと)に美(び)にして且(か)つ異(い)なり
  • 洵 … 「まこと」と読み、「まことに」「まったく」「ほんとうに」と訳す。
  • 異 … 珍しい。
匪女之爲美
女(なんじ)の美(び)たるに匪(あら)ず
  • 女 … 汝に同じ。荑(つばな)を指す。
  • 匪 … ~でない。非に同じ。
美人之貽
美(び)人(じん)の貽(おく)りものなればなり
  • 美人之貽 … 美しい人の贈り物だからこそ。
余説
  • 詩序に「静女は、時を刺(そし)るなり。衛君無道にして、夫人は徳無し」(靜女。刺時也。衞君無道。夫人無德)とある。朱熹『詩集伝』に「此れ淫奔(いんぽん)期会の詩なり」(此淫奔期會之詩也)とある。淫奔は、ここでは男女が恋愛関係にあること。期会は、ここでは男女が日時を決めてひそかに会うこと。逢引き。
  • 静女 … 毛亨(もうこう)『毛伝』に「静は貞静なり。女の徳は貞静にして法度有れば、乃ち説(よろこ)ぶ可きなり」(靜貞靜也。女德貞靜而有法度。乃可說也)とある。『集伝』に「静は閑雅の意」(靜者閒雅之意)とある。
  • 姝 … 『毛伝』および『集伝』に「姝は美色なり」(姝美色也)とある。
  • 俟 … 『毛伝』に「俟は待つなり」(俟待也)とある。
  • 城隅 … 『毛伝』に「城隅は以て高くして踰(こ)ゆ可からざるを言う」(城隅以言高而不可踰)とある。『集伝』に「城隅は幽僻の処」(城隅幽僻之處)とある。
  • 踟躕 … 『集伝』に「踟(ち)躕(ちゅう)は猶お躑(てき)躅(ちょく)のごときなり」(踟蹰猶躑躅也)とある。
  • 孌 … 『集伝』に「孌(れん)は好き貌(さま)」(孌好貌)とある。
  • 彤管 … 『集伝』に「彤管(とうかん)は未だ何物なるかを詳(つまび)らかにせず」(彤管未詳何物)とある。
  • 煒 … 『毛伝』および『集伝』に「煒(い)は赤き貌(さま)」(煒赤貌)とある。
  • 牧 … 『集伝』に「牧(ぼく)は外野なり」(牧外野也)とある。
  • 荑 … 『毛伝』および『集伝』に「荑(つばな)は茅(かや)の始めて生ずるものなり」(荑茅之始生也)とある。
  • 帰 … 『集伝』に「帰も亦貽(おく)るなり」(歸亦貽也)とある。
  • 洵 … 鄭玄『鄭箋』およびに『集伝』に「洵(まこと)は信なり」(洵信也)とある。
  • 女 … 『集伝』に「女(なんじ)は荑(つばな)を指して言うなり」(女指荑而言也)とある。
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