鳥鳴澗(王維)
鳥鳴澗
鳥鳴澗
鳥鳴澗
- 五言絶句。空・中(平声東韻)。
- ウィキソース「皇甫嶽雲溪雜題五首/鳥鳴澗」参照。
- 鳥鳴澗 … 「皇甫岳の雲渓雑題五首」の第一首。皇甫岳は、作者の友人。『新唐書』宰相世系表に皇甫恂(663~725)の子とあるが、はっきりしない。ウィキソース「新唐書/卷075下」参照。雲渓は、雲のかかった谷。皇甫岳の別荘の近くにあった渓谷と思われるが、所在は不明。鳥鳴澗は、鳥が鳴いている谷川。南朝宋の謝荘「山夜の憂い」詩に「澗鳥鳴きて夜蟬清く、橘露靡きて蕙煙軽し」(澗鳥鳴兮夜蟬清、橘露靡兮蕙煙輕)とある。ウィキソース「山夜憂」参照。
- 澗 … 『四部叢刊本』『顧起経注本』『顧可久注本』『趙注本』では「礀」に作る。同義。
- 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。字は摩詰。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられて尚書右丞(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞文集』十巻がある。ウィキペディア【王維】参照。
人閒桂花落
人間にして 桂花落ち
- 間 … 閑か。『静嘉堂本』『蜀刊本』『四部叢刊本』『顧可久注本』『唐詩品彙』『万首唐人絶句』では「閑」に作る。同義。
- 桂花 … モクセイの花。花は通常秋に咲くが、春に咲くものもあるという。ウィキペディア【モクセイ】参照。南朝梁の簡文帝「月を望む」詩に「桂花那ぞ落ちざる、団扇誰と与にか粧わん」(桂花那不落、團扇與誰粧)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷079」参照。
- 桂 … 『蜀刊本』では「佳」に作る。
- 落 … 散る。
夜靜春山空
夜静かにして 春山空し
- 夜静 … 夜は静かにふけて。南朝梁の沈約「王中丞思遠が月を詠ずるに応ず」詩に「月華は静夜に臨み、夜は静かにして氛埃を滅す」(月華臨静夜、夜靜滅氛埃)とある。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
- 春山 … 春の山。
- 空 … ひっそりとしている。
月出驚山鳥
月出でて 山鳥を驚かし
- 驚山鳥 … (月の明るさによって)眠っていた山の鳥を驚かす。南朝陳の伏知道「招隠を賦し得たり」詩に「薄暮安車近く、林喧しく山鳥驚く」(薄暮安車近、林喧山鳥驚)とある。安車は、屋根が低く、座って乗れるように作った車。老人や女性・子ども用の乗り物で、一頭の馬に引かせる。ウィキソース「賦得招隱」参照。
時鳴春澗中
時に春澗の中に鳴く
- 時 … ときどき。
- 春澗 … 春の谷川。
- 澗 … 『顧起経注本』では「礀」に作る。同義。
テキスト
- 『全唐詩』巻一百二十八(中華書局、1960年)
- 『王右丞文集』巻三(静嘉堂文庫蔵、略称:静嘉堂本)
- 『王摩詰文集』巻五(書韻楼叢刊、上海古籍出版社、2003年、略称:蜀刊本)
- 『須渓先生校本唐王右丞集』巻三(『四部叢刊 初篇集部』所収、略称:四部叢刊本)
- 顧起経注『類箋唐王右丞詩集』巻九(台湾学生書局、1970年、略称:顧起経注本)
- 顧可久注『唐王右丞詩集』巻三(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、略称:顧可久注本)
- 趙殿成注『王右丞集箋注』巻十三(中国古典文学叢書、上海古籍出版社、1998年、略称:趙注本)
- 『唐詩品彙』巻三十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『唐詩別裁集』巻十九(乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
- 『万首唐人絶句』五言・巻四(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)
- 『唐詩解』巻二十二(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
こちらもオススメ!
歴代詩選 | |
古代 | 前漢 |
後漢 | 魏 |
晋 | 南北朝 |
初唐 | 盛唐 |
中唐 | 晩唐 |
北宋 | 南宋 |
金 | 元 |
明 | 清 |
唐詩選 | |
巻一 五言古詩 | 巻二 七言古詩 |
巻三 五言律詩 | 巻四 五言排律 |
巻五 七言律詩 | 巻六 五言絶句 |
巻七 七言絶句 |
詩人別 | ||
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | は行 | ま行 |
や行 | ら行 |