田園楽七首其六(王維)
田園樂七首其六
田園楽七首其の六
田園楽七首其の六
- 六言絶句。煙・眠(平声先韻)。
- ウィキソース「田園樂」参照。
- 詩題 … 『静嘉堂本』には、題下に「六言、筆を走らせて成る」との注がある。『蜀刊本』には、題下に「六言、筆を走らせて立ちどころに成る」との注がある。『顧起経注本』には、題下に「詩林広記には題を輞川六言と曰う」、結句のあとに「皇甫冉の集も亦た此の詩を載せ、題を閒居六言と云う」との注がある。『趙注本』には、題下に「詩林広記には輞川六言に作る」、結句のあとに「皇甫冉の集も亦た此の首を載せ、題を閑居六言に作る」との注がある。『全唐詩』には、題下に「一に輞川六言に作る」、結句のあとに「此の首、一に皇甫曾の詩に作る」との注がある。皇甫曾は皇甫冉の誤り。『全唐詩』巻二百五十に皇甫冉「閒居」詩を収録し、題下に「一に王維の詩に作る」との注がある。ウィキソース「閑居 (皇甫冉)」参照。『唐詩別裁集』では「田園楽三首其三」に作る。『唐詩品彙』『唐詩解』では「田園楽五首其五」に作る。
- 田園楽 … 田園での楽しみ。
- 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。字は摩詰。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられて尚書右丞(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞文集』十巻がある。ウィキペディア【王維】参照。
桃紅復含宿雨
桃は紅にして 復た宿雨を含み
- 桃紅 … 紅い桃の花。東晋の謝尚の詩「大道の曲」に「青陽二三月、柳青くして桃復た紅なり」(青陽二三月、柳青桃復紅)とある。ウィキソース「樂府詩集/075卷」参照。また南朝梁の皇太子簡文(のちの簡文帝蕭綱)「湘東王の『名士傾城を悦ぶ』に和す」詩(『玉台新詠』巻七)に「妝窗 柳色を隔つ、井水 桃紅に照らさる」(妝窗隔柳色、井水照桃紅)とある。ウィキソース「和湘東王名士悅傾城」参照。
- 宿雨 … 前夜から降り続いている雨。陳の江総「孔中丞奐に詒る」詩に「初晴 原野開き、宿雨 條枚を潤す」(初晴原野開、宿雨潤條枚)とある。孔中丞奐は、御史中丞の職にあった孔奐(514~583)。初晴は、雨が晴れ上がること。條枚は、枝。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷115」参照。
- 宿 … 『蜀刊本』では「秋」に作る。『万首唐人絶句』では「夜」に作る。
柳綠更帶春煙
柳は緑にして 更に春煙を帯ぶ
- 柳緑 … 緑の柳の枝。魏の文帝(曹丕)「玄武陂に於いて作る」詩に「柳は重蔭の緑を垂れ、我に向かいて池辺に生ず」(柳垂重蔭綠、向我池邊生)とある。玄武陂は、曹操が鄴城(現在の河北省邯鄲市臨漳県)の西南に作った池。重蔭は、濃い影。ウィキソース「於玄武陂作」参照。
- 柳 … 『顧起経注本』では「桺」に作る。異体字。
- 更 … 『顧可久注本』では「㪅」に作る。同字。
- 春煙 … 春霞。靄。北魏の常景「四君を讃す」(四首其一 司馬相如)詩に「鬱として春煙の挙がるが若く、皎として秋月の映るが如し」(鬱若春煙舉、皎如秋月映)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷118」参照。また南朝梁の范雲「思帰」詩(『玉台新詠』巻五、宋刻本未収)に「春草 春煙に酔い、春閨 人独り眠る」(春草醉春煙、春閨人獨眠)とある。ウィキソース「思歸 (范雲)」参照。
- 煙 … 『趙注本』『唐詩解』では「烟」に作る。異体字(現代中国では簡体字)。
- 春 … 『顧起経注本』には「一作朝」とある。『全唐詩』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』『唐詩解』では「朝」に作る。
花落家僮未掃
花落ちて 家僮未だ掃わず
- 花落 … 花が散っているのに。南朝梁の簡文帝「美人を傷む」詩(『玉台新詠』巻七、宋刻本未収)に「香焼きて日に歇む有り、花落ちて還る時無し」(香燒日有歇、花落無還時)とある。ウィキソース「傷美人」参照。
- 家僮 … 召使の若者。『史記』呂不韋伝に「不韋の家僮万人あり」(不韋家僮萬人)とある。ウィキソース「史記/卷085」参照。また北周の庾信の詩「詠懐に擬す二十七首」(其十六)に「野老 荷葉を披り、家童 栗跗を掃く」(野老披荷葉、家童掃栗跗)とある。野老は、田舎の粗野な老人。荷葉は、蓮の葉。栗跗は、栗の花。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷125」参照。
- 僮 … 『全唐詩』『蜀刊本』『万首唐人絶句』では「童」に作る。
- 未掃 … いまだ掃除しない。
鶯啼山客猶眠
鶯啼いて 山客猶お眠る
テキスト
- 『全唐詩』巻一百二十八(中華書局、1960年)
- 『王右丞文集』巻四(静嘉堂文庫蔵、略称:静嘉堂本)
- 『王摩詰文集』巻六(書韻楼叢刊、上海古籍出版社、2003年、略称:蜀刊本)
- 『須渓先生校本唐王右丞集』巻四(『四部叢刊 初篇集部』所収、略称:四部叢刊本)
- 顧起経注『類箋唐王右丞詩集』巻九(台湾学生書局、1970年、略称:顧起経注本)
- 顧可久注『唐王右丞詩集』巻四(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、略称:顧可久注本)
- 趙殿成注『王右丞集箋注』巻十四(中国古典文学叢書、上海古籍出版社、1998年、略称:趙注本)
- 『唐詩品彙』巻四十五([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『唐詩別裁集』巻十九(乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
- 『万首唐人絶句』六言・巻二十六(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)
- 『唐詩解』巻二十四(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
- 松浦友久編『続校注 唐詩解釈辞典〔付〕歴代詩』(大修館書店、2001年)
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