>   漢詩   >   唐詩選   >   巻七 七絶   >   軍城早秋(厳武)

軍城早秋(厳武)

軍城早秋
軍(ぐん)城(じょう)早(そう)秋(しゅう)
厳(げん)武(ぶ)
  • 七言絶句。關・山・還(上平声刪韻)。
  • ウィキソース「軍城早秋 (嚴武)」参照。
  • 軍城 … 軍隊が駐屯している町。
  • 早秋 … 初秋。陰暦七月。
  • この詩は、広徳二年(764)秋、作者が成都尹兼剣南節度使として再度成都に赴任した時、吐蕃を撃退しようとする意気を詠んだもの。なお、盛唐の杜甫「厳武の『軍城早秋』に和し奉る」詩は、この詩に唱和したもの。
  • 厳武 … 726~765。盛唐の詩人、官僚。華州華陰(陝西省華陰市)の人。字(あざな)は季(き)鷹(よう)。挺之の子。太原府(山西省太原市)参軍から殿中侍御史に進み、安禄山の乱のとき、玄宗に従って蜀へ避難し、諫議大夫となった。その後、京兆尹・成都(四川省成都市)尹兼剣南節度使などを歴任。広徳二年(764)吐蕃の大軍七万を破り、その軍功により鄭国公に封ぜられた。また蜀に滞在中、流浪中の杜甫を援助した。『全唐詩』に六首収める。ウィキペディア【厳武】参照。
昨夜秋風入漢關
昨(さく)夜(や) 秋(しゅう)風(ふう) 漢関(かんかん)に入(い)り
  • 漢関 … 国境に設けられた唐の関所。唐を漢の時代に当てるのは、唐代の常套表現。
朔雲邊月滿西山
朔雲(さくうん)辺月(へんげつ) 西山(せいざん)に満(み)つ
  • 朔雲 … 北方の雲。朔は、北のこと。ここでは辺塞の雲。辺境の雲。劉宋の顔延之「赭(しゃ)白(はく)馬(ば)の賦(ふ)」(『文選』巻十四)に「西(せい)極(きょく)を眷(かえり)みて首(かしら)を驤(あ)げ、朔雲(さくうん)を望(のぞ)みて足(あし)を蹀(ふ)む」(眷西極而驤首、望朔雲而蹀足)とある。西極は、西の果て。ウィキソース「赭白馬賦」参照。その注に「曹(そう)顔遠(がんえん)の感(かん)旧(きゅう)の賦(ふ)に曰(いわ)く、胡馬(こば)は朔雲(さくうん)を仰(あお)ぎ、越(えっ)鳥(ちょう)は南樹(なんじゅ)に巣(す)くう」(曹顏遠感舊賦曰、胡馬仰朔雲、越鳥巢南樹)とある。顔遠は、曹攄(そうちょ)(?~308)の字(あざな)。ウィキペディア【曹攄】参照。ウィキソース「昭明文選/卷14」参照。
  • 辺月 … 辺境の月。
  • 月 … 『全唐詩』には「一作雪」と注する。『万首唐人絶句』では「雪」に作る。
  • 西山 … 四川省成都の西北にある大雪山を指す。一名雪嶺(せつれい)ともいう。『大明一統志』に「西山は府の城西に在り、一に雪嶺と名づく」(西山在府城西、一名雪嶺)とある。ウィキソース「明一統志 (四庫全書本)/卷67」参照。また、盛唐の杜甫「望野」詩に「西山(せいざん)の白雪(はくせつ)、三(さん)城(じょう)の戍(まもり)」(西山白雪三城戍)とある。
更催飛將追驕虜
更(さら)に飛(ひ)将(しょう)を催(うなが)して驕(きょう)虜(りょ)を追(お)わしむ
  • 飛将 … 前漢の武将、李広(?~前119)のこと。匈奴から飛将軍といって恐れられた。『史記』李広伝に「広(こう)、右北平(ゆうほくへい)に居(お)り、匈(きょう)奴(ど)之(これ)を聞(き)き、号(ごう)して漢(かん)の飛(ひ)将(しょう)軍(ぐん)と曰(い)い、之(これ)を避(さ)くること数歳(すうさい)、敢(あ)えて右北平(ゆうほくへい)に入(い)らず」(廣居右北平、匈奴聞之、號曰漢之飛將軍、避之數歳、不敢入右北平)とある。ウィキソース「史記/卷109」参照。ウィキペディア【李広】参照。
  • 催 … 早くするようにうながす。急(せ)き立てる。催促する。
  • 驕虜 … 傲慢な胡(えびす)。驕り高ぶった胡人。虜は、敵を罵(ののし)っていう言葉。胡虜。『漢書』匈奴伝上に「南に大漢有り、北に強胡有り。胡は天の驕(きょう)子(し)なり」(南有大漢、北有強胡。胡者天之驕子也)とある。ウィキソース「漢書/卷094上」参照。
  • 追 … 追撃させる。
莫遣沙場匹馬還
沙(さ)場(じょう)の匹(ひつ)馬(ば)をして還(かえ)らしむること莫(な)かれ
  • 沙場 … (戦場としての)砂漠。後漢の蔡琰(さいえん)(一説に蔡琰に仮託したもの)の楽府「胡笳十八拍」(『楽府詩集』巻五十九、『楚辞後語』巻三)の第十七拍に「塞(さい)上(じょう)の黄蒿(こうこう)は枝(えだ)枯(か)れ葉(は)乾(かわ)きたり、沙(さ)場(じょう)の白骨(はっこつ)に刀痕(とうこん)箭瘢(せんぱん)あり」(塞上黃蒿兮枝枯葉乾、沙場白骨兮刀痕箭瘢)とある。箭瘢は、矢きずのあと。ウィキソース「胡笳十八拍」「樂府詩集/059卷」「楚辭集注 (四庫全書本)/後語卷3」参照。
  • 匹馬 … 一匹の馬。『春秋公羊伝』僖公三十三年に「匹(ひつ)馬(ば)隻輪(せきりん)反(かえ)る者(もの)無(な)し」(匹馬隻輪無反者)とあり、その何休の注に「匹(ひつ)馬(ば)は、一(いち)馬(ば)なり」(匹馬、一馬也)とある。ウィキソース「春秋公羊傳註疏/卷12」参照。
  • 莫遣~還 … 生かして帰すな。
  • 遣 … 「遣AB」の形で「AをしてB(せ)しむ」と読み、「AにBさせる」と訳す。使役の意を示す。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百六十一(排印本、中華書局、1960年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻四十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、汲古書院)
歴代詩選
古代 前漢
後漢 魏
晋 南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
金 元
明 清
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行