望野(杜甫)
望野
望野
望野
- 七言律詩。橋・遙・朝・條(平声蕭韻)。
- 望野 … 成都の郊外に出て野原を眺めて作った詩。『全唐詩』では「野望」に作る。
- 『全唐詩』巻二百二十七所収。ウィキソース「野望 (杜甫)」参照。
- 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。襄陽(湖北省)の人。字は子美。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛宗のもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣花渓に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。
西山白雪三城戍
西山の白雪 三城の戍
- 西山 … 四川省成都の西北にある大雪山を指す。一名、雪嶺ともいう。『大明一統志』に「西山は府の城西に在り、一に雪嶺と名づく」(西山在府城西、一名雪嶺)とある。ウィキソース「明一統志 (四庫全書本)/卷67」参照。
- 三城戍 … チベット族の侵入に備えるための、松城・維城・保城の三つの城塞。
- 城 … 『全唐詩』では「奇」に作り、「一作城、一作年」とある。
- 戍 … 『全唐詩』には「在彭州」とある。
南浦清江萬里橋
南浦の清江 万里橋
- 南浦 … 成都の南、錦江の支流である浣花渓の岸辺をさしていう。浣花渓の岸辺に杜甫の草堂があった。
- 万里橋 … 錦江にかけられた橋。
海内風塵諸弟隔
海内の風塵 諸弟隔たり
- 海内 … 天下。世界。
- 風塵 … 戦乱。兵乱。
- 諸弟 … 弟たち。
天涯涕涙一身遙
天涯の涕涙 一身遥かなり
- 天涯 … 天の果て。空の果て。非常に遠い所。涯は、かぎり。地の果て。『論衡』率性篇に「人間の水は汚濁なるも、野外に在る者は清潔なり。倶に一水たり、源は天涯よりするも、或いは濁り或いは清むは、在る所の勢い、之をして然らしむるなり」(人閒之水汚濁、在野外者淸潔。倶爲一水、源從天涯、或濁或淸、所在之勢、使之然也)とある。ウィキソース「論衡/08」参照。
惟將遲暮供多病
惟だ遅暮を将って多病に供し
- 遅暮 … なすこともなく、だんだん年をとること。
未有涓埃答聖朝
未だ涓埃も聖朝に答うる有らず
- 涓埃 … ひとしずくの水と一つのほこり。ほんのわずかなもののたとえ。
- 聖朝 … 時の朝廷を尊んでいうことば。聖天子の御代。
跨馬出郊時極目
馬に跨り郊に出でて時に目を極むれば
- 郊 … 郊外。
- 極目 … 目の届くかぎり遠く見わたす。
不堪人事日蕭條
堪えず 人事の日に蕭条たるに
- 人事 … 人の世のいとなみ。
- 日 … 『全唐詩』には「一作自」とある。
- 蕭条 … 物寂しいさま。『楚辞』の「遠遊」に「山は蕭条として獣無く、野は寂漠として其れ人無し」(山蕭條而無獸兮、野寂漠其無人)とある。ウィキソース「楚辭/遠遊」参照。
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