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関山月(儲光羲)

關山月
関山(かんざん)月(げつ)
儲(ちょ)光(こう)羲(ぎ)
  • ウィキソース「關山月 (儲光羲)」参照。
  • この詩は、辺塞の地で月の光に照らされた寂しい情景を詠んだもの。詩中に月の字を出さずに、その光景を表現している。
  • 詩題 … 関山月は、楽府題の一つ。横吹(おうすい)曲(馬上で奏する軍中の楽曲)に属する。唐の劉(りゅう)餗(そく)『楽府解題』に「関山月は、離別を傷(いた)むなり。……按ずるに相和曲に関山を度(わた)る有るも、亦た此れに類するなり」(關山月、傷離別也。……按相和曲有度關山、亦類此也)とある。ウィキソース「樂府詩集/023卷」参照。また、盛唐の李白の楽府「関山月」の蕭(しょう)士(し)贇(いん)の注に「関山月は、楽府の鼓角横吹十五曲の一つなり」(関山月者、樂府鼓角横吹十五曲之一也)とある。ウィキソース「分類補註李太白詩 (四部叢刊本)/卷第四」参照。なお、この詩は儲光羲の作であるとともに、中唐の戴叔倫の作でもあるとされている。戴叔倫の方は「関山月二首」(『全唐詩』巻二百七十四、『楽府詩集』巻二十三)の第二首がまったく同じ詩である。ウィキソース「關山月 (一鴈過連營)」「樂府詩集/023卷」参照。
  • 関山 … 関所のある山。辺塞の山。関は、関塞。国境の関所の砦。
  • 儲光羲 … 706~760。盛唐の詩人。潤州(江蘇省鎮江市)の人。字(あざな)は不詳。開元十四年(726)、進士に及第。監察御史となったが、安禄山の乱で反乱軍に捕らえられ、その軍に仕えた。乱の平定後、嶺南(広東地方)に流されて死んだ。『儲光羲詩集』五巻がある。ウィキペディア【儲光羲】参照。
一雁過連營
一雁(いちがん) 連営(れんえい)を過(す)ぎ
  • 一雁 … 一羽の雁(かり)。南朝陳の張正見「佳期竟(つい)に帰らずを賦し得たり」詩に「自ら孤(こ)鸞(らん)に対し影に向かって絶え、終(つい)に一雁の書を帯びて回(かえ)る無し」(自對孤鸞向影絶、終無一鴈帶書回)とある。孤鸞は、連れ合いを失った鸞(らん)。鸞は、鳳凰の一種。配偶者を失った人のたとえ。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷113」参照。また、北宋の孔平仲「孤雁」詩に「空(くう)城(じょう)夜已に寂(じゃく)たり、一雁雲端(うんたん)を度(わた)る」(空城夜已寂、一雁度雲端)とある。空城は、荒れ果てて住む人のない城。雲端は、雲のはし。
  • 連営 … いくつも連なっている陣営。営は、営舎。幕舎。南朝陳の張正見の楽府「晨鶏(しんけい)高樹に鳴く」(『楽府詩集』巻二十八)に「冠(かんむり)を摧(くだ)きて遠石を験(ため)し、火を擊(う)ちて連営を出(い)づ」(摧冠驗遠石、擊火出連營)とある。晨鶏は、夜明けを告げる鶏。ウィキソース「樂府詩集/028卷」参照。
  • 過 … 通り過ぎていく。飛び過ぎていく。
繁霜覆古城
繁霜(はんそう) 古(こ)城(じょう)を覆(おお)う
  • 繁霜 … たくさん降(お)りた霜。真白い霜。『詩経』小雅・正月に「正月繁霜あり、我が心憂(ゆう)傷(しょう)す」(正月繁霜、我心憂傷)とあるのに基づく。憂傷は、思い悩み悲しむこと。ウィキソース「詩經/正月」参照。
  • 古城 … 古びた町。城は、城壁に囲まれた町の意。『三輔黄図』巻四、池沼の条に「西(せい)陂池(ひち)・郎池は、皆な古城の南、上林苑の中に在り」(西陂池、郎池、皆在古城南上林苑中)とある。ウィキソース「三輔黃圖/卷之四」参照。
胡笳在何處
胡笳(こか) 何(いず)れの処(ところ)にか在(あ)る
  • 胡笳 … 北方民族の胡人が吹く葦(あし)の葉の笛。物悲しい音色を出す。『太平御覧』巻五百八十一、楽部十九に「笳は、胡人が蘆の葉を巻きて之を吹き、以て楽(がく)を作すなり。故に謂いて胡笳と曰う」(笳者、胡人卷蘆葉吹之、以作樂也。故謂曰胡笳)とある。ウィキソース「太平御覽/0581」参照。また『文献(ぶんけん)通(つ)考(こう)』に「胡笳は觱篥(ひちりき)に似て孔(あな)無く、後世鹵部(ろぶ)に之を用う」(胡笳似觱篥而無孔、後世鹵部用之)とある。觱篥は、管楽器の一つ。竹製の縦笛で前面に七つ、裏面に二つの指孔がある。音色は鋭く、哀調を帯びる。ウィキペディア【篳篥】参照。鹵部は、大駕(天子の乗り物)の儀仗。鹵簿(ろぼ)(天子の行列)。ウィキソース「文獻通考 (四庫全書本)/卷138」参照。また『通(つ)典(てん)』巻一百四十四、楽典四、八音に「笳は、杜摯(とし)に笳の賦有りて云う、李伯陽西(せい)戎(じゅう)に入りて造れる所なり、と」(笳、杜摯有笳賦云、李伯陽入西戎所造)とある。杜摯は、三国魏の河東の人。字(あざな)は徳魯。郎中となり、後に校書郎に補せられた。李伯陽は、老子のこと。姓名は李耳(りじ)、字(あざな)は伯陽。西戎は、西方のえびす。ウィキソース「通典/卷144」参照。また、前漢の李陵「蘇武に答うるの書」(『文選』巻四十一)に「胡笳互いに動き、牧(ぼく)馬(ば)悲しく鳴く」(胡笳互動、牧馬悲鳴)とある。ウィキソース「答蘇武書」参照。
  • 胡 … 『万首唐人絶句』では「悲」に作る。
  • 在何処 … どこで吹き鳴らしているのか。古楽府「西洲の曲」(『楽府詩集』巻七十二)に「西洲何れの処にか在る、両槳(りょうしょう)橋頭に渡る」(西洲在何處、兩槳橋頭渡)とある。両槳は、左右両方に櫂(かい)のある舟。槳は、櫂(かい)。船を漕(こ)ぐ道具。橋頭は、橋のほとり。ウィキソース「樂府詩集/072卷」参照。
半夜起邊聲
半(はん)夜(や) 辺声(へんせい)を起(お)こす
  • 半夜 … 夜半。夜中。「月節(げっせつ)折楊柳歌十三首」(『楽府詩集』巻四十九)の「十月歌」に「厳霜(げんそう)半夜に落つ」(嚴霜半夜落)とある。ウィキソース「樂府詩集/049卷」参照。
  • 辺声 … 辺地の音。辺境の物悲しい響き。辺境のうら悲しい響き。前漢の李陵「蘇武に答うるの書」(『文選』巻四十一)に「吟(ぎん)嘯(しょう)群(ぐん)を成し、辺声四(よ)もに起こる。晨(あした)に坐して之を聴けば、覚えずして涙下(くだ)る」(吟嘯成羣、邊聲四起。晨坐聽之、不覺淚下)とある。ウィキソース「答蘇武書」参照。
詩型・韻字
  • 五言絶句。
  • 營・城・聲(下平声庚韻)。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻一百三十九(排印本、中華書局、1960年)
  • 『全唐詩』巻二百七十四(排印本、中華書局、1960年)※作者:戴叔倫
  • 『儲光羲集』巻五(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『楽府詩集』巻二十三・横吹曲辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)※作者:戴叔倫
  • 『唐詩解』巻二十二(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
  • 『万首唐人絶句』五言・巻九(明嘉靖本影印、文学古籍刊行社、1955年)※作者:戴叔倫
  • 『唐詩品彙』巻四十([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
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