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関山月(儲光羲)

關山月
関山かんざんげつ
ちょこう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻六、『全唐詩』巻一百三十九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻三(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『儲光羲集』巻五(『唐五十家詩集』所収)、『唐詩品彙』巻四十、他
  • 五言絶句。營・城・聲(平声庚韻)。
  • ウィキソース「關山月 (儲光羲)」参照。
  • 詩題 … 戴叔倫「關山月二首 其二」(『全唐詩』巻二百七十四、『楽府詩集』巻二十三)と、まったく同じ詩。ウィキソース「關山月 (一鴈過連營)」「樂府詩集/023卷」参照。
  • 関山月 … 楽府題。横吹おうすい曲(馬上で奏する軍中の楽曲)に属する。
  • 関山 … 関所のある山。辺塞の山。関は、関塞。国境の関所の砦。
  • この詩は、辺塞の地で月光に照らされた寂しい情景を詠んだもの。詩中に月の字を出さずに、その光景を表現している。
  • 儲光羲 … 707~763。盛唐の詩人。えんしゅう(山東省)の人。開元十四年(726)、進士に及第。監察御史となったが、安禄山の乱で反乱軍にとらえられ、その軍に仕えた。乱の平定後、嶺南に流されて死んだ。ウィキペディア【儲光羲】参照。
一雁過連營
一雁いちがん 連営れんえい
  • 一雁 … 一羽のかり。陳の張正見「賦得佳期竟不帰」に「つい一雁いちがんしょびてめぐし」(終無一鴈帶書回)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷113」参照。張正見については、ウィキペディア【張正見】参照。また、北宋の孔平仲「孤雁」に「くうじょうよるすでじゃくたり、一雁いちがん雲端うんたんわたる」(空城夜已寂、一雁度雲端)とある。空城は、荒れ果てて住む人のない城。雲端は、雲のはし。
  • 雁 … 『万首唐人絶句』『唐五十家詩集本』『唐詩品彙』では「鴈」に作る。同義。
  • 連営 … いくつも連なっている陣営。営は、営舎。幕舎。
  • 過 … 通りすぎていく。飛びすぎていく。
繁霜覆古城
繁霜はんそう じょうおお
  • 繁霜 … たくさん降りた霜。真白い霜。『詩経』小雅・正月の詩に「しょうがつ繁霜はんそうこころゆうしょうす」(正月繁霜、我心憂傷)とあるのに基づく。憂傷は、思い悩み悲しむこと。ウィキソース「詩經/正月」参照。
  • 古城 … 古びた町。城は、城壁に囲まれた町の意。
胡笳在何處
胡笳こか いずれのところにか
  • 胡笳 … 北方民族の胡人が吹くあしの葉の笛。物悲しい音色を出す。『文献通考』に「胡笳こか觱篥ひちりきあなく、後世こうせい鹵部ろぶこれもちう」(胡笳似觱篥而無孔、後世鹵部用之)とある。觱篥は、管楽器の一つ。竹製の縦笛で前面に七つ、裏面に二つの指孔がある。音色は鋭く、哀調を帯びる。ウィキペディア【篳篥】参照。鹵部は、大駕(天子の乗り物)の儀仗。鹵簿ろぼ(天子の行列)。ウィキソース「文獻通考 (四庫全書本)/卷138」参照。
  • 胡 … 『万首唐人絶句』では「悲」に作る。
  • 在何処 … どこで吹き鳴らしているのか。
半夜起邊聲
はん 辺声へんせいおこ
  • 半夜 … 夜半。夜中。「月節折楊柳歌十三首 十月歌」(『楽府詩集』巻四十九)に「厳霜げんそうはんつ」(嚴霜半夜落)とある。ウィキソース「樂府詩集/049卷」参照。
  • 辺声 … 辺地の音。辺境の物悲しい響き。李陵の「蘇武そぶこたうるのしょ」(『文選』巻四十一)に「胡笳こかたがいにうごき、ぼくかなしくく。ぎんしょうぐんし、辺声へんせいもにおこる。あしたしてこれけば、おぼえずしてなみだくだる」(胡笳互動、牧馬悲鳴。吟嘯成羣、邊聲四起。晨坐聽之、不覺淚下)とある。ウィキソース「答蘇武書」参照。
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