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重送裴郎中貶吉州(劉長卿)

重送裴郎中貶吉州
かさねてはいろうちゅうきっしゅうへんせらるるをおく
りゅうちょうけい
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻一百五十、『劉随州詩集』巻八・外集(『四部叢刊 初篇集部』所収)、『劉随州集』巻十(『唐五十家詩集』所収)、『唐詩品彙』巻四十九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十四(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、62頁)、他
  • 七言絶句。頭・流・舟(平声尤韻)。
  • ウィキソース「重送裴郎中貶吉州」参照。
  • 詩題 … 『劉随州詩集』外集(四部叢刊本)では「重送」に作る。
  • 重送 … 重ねて送別する。再び見送る。「重ねて」とあるのは、すでに「裴郎中の吉州に貶せらるるを送る」(送裴郎中貶吉州)という五言律詩があるため。ウィキソース「送裴郎中貶吉州」参照。
  • 裴 … 裴某。作者の友人。人物については不明。
  • 郎中 … 官名。周代は近侍の通称。隋唐代以後、尚書省のりくがそれぞれ四司に分かれ、その各司の長。
  • 吉州 … 今の江西省吉安市。『元和郡県図志』江南道、吉州に「ずい開皇かいこうちゅうりょうあらためてきっしゅうす、きっすいり、りてす」(隋開皇中改廬陵爲吉州、有吉水、因爲名焉)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷28」参照。ウィキペディア【吉州 (江西省)】参照。
  • 貶 … 罪によって官位をおとされ、地方に流されること。「たく」とほぼ同義であるが、「謫」の字の方が遠方の度合いが強い。
  • この詩は、裴郎中が吉州(今の江西省吉安市)に左遷されるのを再度見送って作ったもの。この時、作者も配流の身であったことが、詩中の語からわかる。
  • 劉長卿 … 709?~785?。中唐の詩人。河間(河北省)の人。一説に宣城(安徽省)の人。あざなは文房。開元二十一年(733)、進士に及第。監察御史などの官職を歴任したが、のちに左遷され、最後は随州(湖北省随県)刺史となって終わった。このことから「劉随州」とも呼ばれた。『劉随州文集』がある。ウィキペディア【劉長卿】参照。
猿啼客散暮江頭
さるかくさんず こうほとり
  • 猿啼 … 猿が悲しげに鳴く。梁の簡文帝「蜀道難二首 其の二」(『楽府詩集』巻四十)に「笛声下りて復た高く、猿啼断えてた続く」(笛聲下復高、猿啼斷還續)とある。ウィキソース「樂府詩集/040卷」参照。
  • 客散 … 見送りの人々がそれぞれ帰っていく。客は、ここでは送別の宴での賓客と思われる。
  • 暮江頭 … 夕暮れの川のほとり。隋の煬帝「春江花月の夜二首 其の一」(『楽府詩集』巻四十七)に「暮江平らかにして動かず、春花満ちて正に開く」(暮江平不動、春花滿正開)とある。ウィキソース「樂府詩集/047卷」参照。
人自傷心水自流
ひとおのずからこころいたましめ みずおのずからなが
  • 人自傷心 … 人は人として別れに心を痛ませている。人間として悲しまずにはおれないということ。
  • 傷心 … 心を痛める。また傷ついた心。司馬遷「じんしょうけいほうずるのしょ」(『文選』巻四十一)に「ゆえわざわいよくよりいたましきはく、かなしみはしょうしんよりいたましきはく、おこないはせんはずかしむるよりみにくきはく、はじなるはきゅうけいよりおおいなるはし」(故禍莫憯於欲利、悲莫痛於傷心、行莫醜於辱先、而詬莫大於宮刑)とある。先は、祖先。ウィキソース「報任少卿書」参照。
  • 水自流 … 水は水として無心に流れていく。水は人間の嘆きをよそに流れていく。
  • 自 … 「おのずから」と読むが、ここでは「自然に」の意ではなく、「人は人、水は水、それ自体として」の意。
同作逐臣君更遠
おなじく逐臣ちくしんりて きみさらとお
  • 逐臣 … 放逐された臣下。『戦国策』秦策に「世〻よよ監門かんもんりょう大盗たいとうちょう逐臣ちくしんって、ともおなじくしゃしょくけいするは、群臣ぐんしんはげます所以ゆえんあらざるなり」(取世監門子、梁之大盜、趙之逐臣、與同知社稷之計、非所以厲群臣也)とある。監門は門番。ウィキソース「戰國策/卷07」参照。
  • 君更遠 … 君の左遷先は私よりずっと遠い。
靑山萬里一孤舟
青山せいざんばん いちしゅう
  • 青山万里 … 遥か彼方まで続く青々として見える山。謝朓の「東田とうでんあそぶ」(『文選』巻二十二)に「ほうしゅんさけたいせずして、青山せいざんかくかえのぞむ」(不對芳春酒、還望青山郭)とある。郭は、城壁。ウィキソース「遊東田」参照。また梁の簡文帝「秋夜」(『玉台新詠』巻七)に「りょくたんうんさかしまにし、青山せいざんげつふくむ」(綠潭倒雲氣、青山銜月眉)とある。月眉は、眉のような月。三日月。ウィキソース「秋夜 (蕭綱)」参照。
  • 一孤舟 … 一そうの小舟。『唐詩集註』の蒋一葵の注に「唐人とうひと屢〻しばしばいちしゅうもちいてつらぬ。……いちくわえて、益〻ますますしゅうせいなるをおぼゆ。宋人そうひとふくすことをうれうるは、ものあらず」(唐人屢用一孤舟連字。……惟加一字、益覺孤舟之凄楚。宋人病其爲復、非知詩者)とある。『唐詩集註』巻七(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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