雑詩(王維)
雜詩
雑詩
雑詩
- 五言絶句。聲・生(平声庚韻)。
- ウィキソース「雜詩 (已見寒梅發)」参照。
- 詩題 … 「雑詩」とは、感じたことをそのつど自由に詠んだ詩で、特定の題をつけにくいときにこの題をつける。この詩は、三首連作の第三首。『全唐詩』『趙注本』『唐詩品彙』では「雑詩三首 其三」に作る。『静嘉堂本』『蜀刊本』『四部叢刊本』『顧可久注本』では「雑詩五首 其五」(第一首は五古、第二首は五律)に作る。『唐詩別裁集』では「雑詠二首 其一」(第三首を第一首に作る)に作る。『万首唐人絶句』では「雑詠三首 其三」に作る。『顧起経注本』ではこの第三首を欠く。
- 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。字は摩詰。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられて尚書右丞(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞文集』十巻がある。ウィキペディア【王維】参照。
已見寒梅發
已に寒梅の発くを見
- 已見 … もはや~を見た。すでに~を見た。
- 寒梅 … 寒中に咲く梅。
- 発 … 花が開くこと。
- 已見寒梅発 … この句は、第二首の「来日 綺窓の前、寒梅 花を著けしや未だしや」(來日綺窗前、寒梅著花未)の問いに対する答え。綺窓は、模様で飾った窓。妻の部屋の窓。ウィキソース「雜詩 (君自故鄉來)」参照。
復聞啼鳥聲
復た啼鳥の声を聞く
- 啼鳥 … 鳥のさえずり。梁の簡文帝「晩景出行」(『玉台新詠』巻七)に「飛鳧初めて曲を罷む、啼鳥忽ち行を度す」(飛鳧初罷曲、啼鳥忽度行)とある。飛鳧・啼鳥は、ともに曲名。飛鳧は、空をとぶ水鳥。度行は、幾くだりかの曲を弾くこと。ウィキソース「晚景出行」参照。
愁心視春草
愁心 春草を視て
- 愁心 … 愁いに沈んだ心。魏の曹植「浮萍篇」(『楽府詩集』巻三十五、『玉台新詠』巻二)に「慊慊として天を仰ぎて歎じ、愁心 将た何くにか愬えん」(慊慊仰天歎、愁心將何愬)とある。ウィキソース「浮萍篇」参照。『全唐詩』『静嘉堂本』『蜀刊本』『四部叢刊本』『顧可久注本』『唐詩別裁集』『万首唐人絶句』では「心心」に作る。
- 春草 … 春の若草。『楚辞』招隠士に「王孫遊んで帰らず、春草生じて萋萋たり」(王孫遊兮不歸、春草生兮萋萋)とあるのを踏まえる。ウィキソース「招隱士」参照。また南朝宋の謝霊運「池上楼に登る」詩(『文選』巻二十二)に「池塘には春草生じ、園柳には鳴禽変ず」(池塘生春草、園柳變鳴禽)とある。ウィキソース「登池上樓」参照。
畏向玉階生
玉階に向って生ぜんことを畏る
- 玉階 … 玉をちりばめた階段。宮殿の立派な階段のこと。班固「西都の賦」(『文選』巻一)に「是に於いて玄墀釦砌、玉階彤庭あり」(於是玄墀釦砌、玉階彤庭)とある。玄墀は、黒漆などを塗りこんだ階下の庭。釦砌は、玉をちりばめた軒下の石畳。彤庭は、朱色の中庭。ウィキソース「西都賦」参照。また南朝梁の呉均「行路難二首 其一」(『玉台新詠』巻九)に「玉階の行路に細草生じ、金鑪の香炭変じて灰と成る」(玉階行路生細草、金鑪香炭變成灰)とある。ウィキソース「行路難 (吳均)」参照。『全唐詩』『蜀刊本』『四部叢刊本』『顧可久注本』『万首唐人絶句』では「階前」に作る。『静嘉堂本』では「堦前」に作る。「堦」は「階」の異体字。なお、「玉階」では宮中を連想するので、ここでは「階前」の方がよい。
- 向 … ここでは「於」の意。
テキスト
- 『箋註唐詩選』巻六(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
- 『全唐詩』巻一百二十八(中華書局、1960年)
- 『王右丞文集』巻六(静嘉堂文庫蔵、略称:静嘉堂本)
- 『王摩詰文集』巻十(書韻楼叢刊、上海古籍出版社、2003年、略称:蜀刊本)
- 『須渓先生校本唐王右丞集』巻六(『四部叢刊 初篇集部』所収、略称:四部叢刊本)
- 顧可久注『唐王右丞詩集』巻六(『和刻本漢詩集成 唐詩1』所収、略称:顧可久注本)
- 趙殿成注『王右丞集箋注』巻十三(中国古典文学叢書、上海古籍出版社、1998年、略称:趙注本)
- 『唐詩品彙』巻三十九([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
- 『唐詩解』巻二十二(順治十六年刊、内閣文庫蔵)
- 『唐詩別裁集』巻十九(乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)※詩題:雑詠
- 『万首唐人絶句』五言・巻四(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)※詩題:雑詠
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