竹里館(王維)
竹里館
竹里館
竹里館
- 五言絶句。嘯・照(去声嘯韻)。
- 『全唐詩』巻128所収。ウィキソース「輞川集 (王維)/竹里館」参照。
- 竹里館 … 竹林の中に建物の名。「輞川二十景」のうちの一つ。「輞川」は長安の南郊の藍田(陝西省藍田県)にあった王維の別荘で、「輞川荘」と名づけられた。詩友の裴迪と唱和した作品を収めた「輞川集」に収められている。
- 夏目漱石は、『草枕』の中でこの詩を引用し、「只二十字のうちに優に別乾坤を建立して居る」と評している。
- 王維 … 699?~761。盛唐の詩人、画家。太原(山西省)の人。字は摩詰。開元七年(719)、進士に及第。安禄山の乱で捕らえられたが事なきを得、乱後は粛宗に用いられて尚書右丞(書記官長)まで進んだので、王右丞とも呼ばれる。また、仏教に帰依したため、詩仏と称される。『王右丞集』十巻(または六巻)がある。ウィキペディア【王維】参照。
獨坐幽篁裏
独り坐す 幽篁の裏
- 独 … ただひとり。作者を指す。
- 坐 … 座る。
- 幽篁 … 奥深く茂った竹やぶ。「幽」は奥深い。「篁」は竹やぶ。
- 裏 … 「うち」と読み、「なか」「そのなか」と訳す。「裡」と同じ。実際、作者は竹やぶの中ではなく、竹やぶの中に建っている建物の座敷に座っていた。
彈琴復長嘯
琴を弾じて 復た長嘯す
- 琴 … 七弦の琴。日本の琴と違い、小さい。ウィキペディア【古琴】参照。
- 弾 … 琴をひくこと。弦をはじいて音を出す。
- 復 … 「また」と読み、ここでは単に「そして」と訳す。通常は「もう一度」「再び」と訳す。他に、「亦」は「~もまた」「~も同様に」と訳す。「又」は「そのうえ~」「さらに~」と訳す。
- 長嘯 … 口をすぼめて、息を長くのばして歌うこと。
深林人不知
深林 人知らず
- 深林 … この奥深い竹林(での楽しみ)。
- 人 … 世間の人。
- 不知 … わからない。理解できない。単に「知らない」という意味ではない。
明月來相照
明月 来りて相照らす
- 相照 … 私を照らしてくれる。ここでの「相」は「たがいに」の意味ではなく、動作が一方から他方へと及ぶことをいう。
余説
この詩には、佐藤春夫の訳詩がある。
竹むらにひとりうずもれ
琴把りてうそぶき居れば
やぶ深み人こそ知らね
月かげぞおとなひにける
(佐藤春夫『玉笛譜』)
竹むらにひとりうずもれ
琴把りてうそぶき居れば
やぶ深み人こそ知らね
月かげぞおとなひにける
(佐藤春夫『玉笛譜』)
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