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登高(杜甫)

登高
登高(とうこう)
杜甫(とほ)
  • 七言律詩。哀・廻・來・臺・杯(上平声灰韻)。
  • ウィキソース「登高」参照。
  • 登高 … 高い所に登る。陰暦九月九日、重陽の節句に小高い丘に登って菊酒を飲み、災厄を払う。年中行事の一つ。『九家集注本』では「九日五首其五」として重出。『唐詩品彙』では「九日登高」に作る。
  • 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。河南府鞏(きょう)県(河南省鄭(てい)州(しゅう)市鞏(きょう)義(ぎ)市)生まれ。本籍は襄(じょう)州襄(じょう)陽(よう)県(湖北省襄陽市襄州区)の人。字(あざな)は子美(しび)。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛(しゅく)宗(そう)のもとで左拾遺(天子に諫言する職)に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣(かん)花(か)渓(けい)に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜(りと)」と並称される。『杜工部集』『草堂詩箋』などがある。ウィキペディア【杜甫】参照。
風急天高猿嘯哀
風(かぜ)急(きゅう)に 天(てん)高(たか)くして 猿(えん)嘯(しょう)哀(かな)し
  • 風急 … 風が激しく吹く。
  • 天高 … 青空が高く澄みわたる。
  • 猿嘯 … 猿が声を細長く引っぱって鳴くこと。
渚清沙白鳥飛廻
渚(なぎさ)清(きよ)く 沙(すな)白(しろ)くして 鳥(とり)飛(と)び廻(めぐ)る
  • 渚 … 揚子江の水際。
  • 飛廻 … 輪を描いて、くるくる飛んでいる。
無邊落木蕭蕭下
無(む)辺(へん)の落木(らくぼく) 蕭蕭(しょうしょう)として下(くだ)り
  • 無辺 … 見渡す限り果てしない。
  • 落木 … 落葉する木々。
  • 蕭蕭 … ここでは枯葉が物寂しく舞い落ちる音の形容。
  • 下 … 「下(お)つ」と読んでもよい。枯葉が音を立てて散り落ちる。
不盡長江滾滾來
不(ふ)尽(じん)の長(ちょう)江(こう) 滾滾(こんこん)として来(き)たる
  • 不尽 … 尽きることのない。
  • 長江 … 中国中部を東西に流れる同国最大の川。下流部を揚子江という。長江全域を指して揚子江と呼ぶのは、我が国はじめ国際的な通称。ウィキペディア【長江】参照。
  • 滾滾 … 水が湧き出るように盛んに流れる様子。「袞袞」に作るテキストもある。
萬里悲秋常作客
万(ばん)里(り) 悲(ひ)秋(しゅう) 常(つね)に客(かく)と作(な)り
  • 万里 … 故郷を一万里も遠く離れて。
  • 悲秋 … もの悲しく感じる秋。
  • 秋 … 『草堂詩箋』では「歌」に作る。
  • 常 … いつも。『九家集注本』では「長」に作る。
  • 作客 … 旅人となる。客は、旅人。作は、為に同じ。
百年多病獨登臺
百(ひゃく)年(ねん) 多(た)病(びょう) 独(ひと)り台(だい)に登(のぼ)る
  • 百年 … 生涯。
  • 多病 … 病気がち。
  • 独登台 … この日は重陽の節句であり、本来ならば親しい人たちと登るはずなのに、自分はたった一人でこの高台に登っている。
艱難苦恨繁霜鬢
艱難(かんなん) 苦(はなは)だ恨(うら)む 繁霜(はんそう)の鬢(びん)
  • 艱難 … さまざまな困難や苦しみ。
  • 苦 … 「はなはだ」と読む。ひどく。たいへん。
  • 恨 … うらめしい。
  • 繁霜鬢 … 真っ白になった鬢(びん)の毛。繁霜は、真っ白に降りたたくさんの霜。鬢は、耳ぎわの髪の毛。
潦倒新停濁酒杯
潦倒(ろうとう) 新(あら)たに停(とど)む 濁酒(だくしゅ)の杯(はい)
  • 潦倒 … 老いぼれること。落ちぶれること。
  • 新停 … 最近やめてしまった。
  • 濁酒 … にごり酒。
  • 服部南郭『唐詩選国字解』には「老衰ゆへ酒を止めたれば、いよいよ氣の晴るゝこともない」とある。『漢籍国字解全書』第10巻(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻五(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百二十七(排印本、中華書局、1960年)
  • 『唐詩三百首注疏』巻五・七言律詩(廣文書局、1980年)
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