闕下贈裴舎人(銭起)
闕下贈裴舍人
闕下裴舎人に贈る
闕下裴舎人に贈る
- 七言律詩。林・陰・深・心・簪(下平声侵韻)。
- 『全唐詩』巻239所収。ウィキソース「贈闕下裴舍人」参照。
- 闕下贈 … 「闕下」は宮殿の門の下。『全唐詩』では「贈闕下」に作り、「一作闕下贈」と注する。
- 裴 … 裴某。人物については不明。
- 舎人 … 中書舎人。中書省に所属し、詔勅の作成などを掌った。
- 銭起 … 710?(722?)~780?。中唐の詩人。呉興(浙江省呉興区)の人。字は仲文。天宝十載(751)、進士に及第。校書郎から藍田県(陝西省藍田県)の県尉を経て、考功郎中に進み、太清宮使・翰林学士に至った。大暦十才子の一人。郎士元とともに「銭郎」と称された。『銭考功集』十巻がある。ウィキペディア【銭起】参照。
二月黄鸝飛上林
二月 黄鸝 上林に飛び
- 二月 … 陰暦二月。
- 黄鸝 … 高麗うぐいす。
- 鸝 … 『全唐詩』では「鶯」に作り、「一作鸝」と注する。
- 上林 … 漢代の御苑、上林苑のこと。ここでは唐の御苑に喩えた。『三輔黄図』巻四、苑囿、漢上林苑の条に「漢の上林苑は、即ち秦の旧苑なり。漢書に云う、武帝、建元三年上林苑を開き、東南のかた藍田宜春、鼎湖、御宿、昆吾に至り、南山を旁にして西し、長楊、五柞に至り、北のかた黄山を繞り、渭水に瀕して東す。周袤三百里、と。離宮七十所、皆な千乗万騎を容る。漢宮殿疏に云う、方三百四十里、と。漢旧儀に云う、上林苑方三百里、苑中に百獣を養い、天子、秋冬に射猟して之を取る、と。帝初め上林苑を修むるに、群臣遠方、各〻名果異卉三千余種を献じて其の中に植え、亦た製して美名を為す有り、以て奇異なるを標す」(漢上林苑、即秦之舊苑也。漢書云、武帝建元三年開上林苑、東南至藍田宜春、鼎湖、御宿、昆吾、旁南山而西、至長楊、五柞、北繞黃山、瀕渭水而東。周袤三百里。離宮七十所、皆容千乘萬騎。漢宮殿疏云、方三百四十里。漢舊儀云、上林苑方三百里、苑中養百獸、天子秋冬射獵取之。帝初修上林苑、羣臣遠方、各獻名果異卉三千餘種植其中、亦有製爲美名、以標奇異)とある。周袤は、周囲。袤は、長さ。ウィキソース「三輔黃圖/卷之四」参照。また『後漢書』明帝紀、永平十五年に「冬、車騎上林苑に校猟す」(冬、車騎校獵上林苑)とある。校猟は、鳥や獣が逃げ出さないように埒(囲い)を作って狩りをすること。ウィキソース「後漢書/卷2」参照。また同じく桓帝紀、延熹元年に「冬十月、広成に校猟して、遂に上林苑に幸す」(冬十月、校獵廣成、遂幸上林苑)とある。ウィキソース「後漢書/卷7」参照。ウィキペディア【上林苑】参照。
春城紫禁曉陰陰
春城 紫禁 暁に陰陰たり
- 春城 … 春の宮城。
- 紫禁 … 天子の宮殿。
- 禁 … 『全唐詩』には「一作陌」と注する。
- 陰陰 … うす暗く、ひっそりしている様子。『全唐詩』には「一作沈沈」と注する。劉宋の鮑照「都に還る道中三首」詩(其二)に「隠隠たり 日の没する岫、瑟瑟たり 風の発する谷」(隱隱日沒岫、瑟瑟風發谷)とある。ウィキソース「鮑明遠集」参照。
- 『全唐詩』には「一本二句倒用」とある。
長樂鐘聲花外盡
長楽の鐘声 花外に尽き
- 長楽 … 漢代の宮殿の名。長楽宮。
- 鐘声 … 鐘の音。
- 花外 … 花の彼方。
龍池柳色雨中深
竜池の柳色 雨中に深し
- 竜池 … 長安興慶宮内にあった池の名。『唐両京城坊考』西京、興慶宮の条に「宮の正門は西向し、興慶門と曰う。其の内に興慶殿あり、殿の後ろを竜池と為す」(宮之正門西向、曰興慶門。其內興慶殿、殿後爲龍池)とある。ウィキソース「唐兩京城坊考/01」参照。また『長安志』に「常に雲気有り。或いは黄竜の其の中より出ずるを見る。……之を竜池と謂う」(常有雲氣。或見黄龍出其中。……謂之龍池)とある。ウィキソース「長安志 (四庫全書本)/卷09」参照。また『唐会要』興慶宮の条に「宅内に竜池の湧出する有り」(宅內有龍池湧出)とある。ウィキソース「唐會要/卷030」参照。
- 柳色 … 青々とした柳の色。
陽和不散窮途恨
陽和も散ぜず 窮途の恨み
- 陽和 … のどかな春の気。
- 窮途 … 仕官をするところがなく、行き詰まった境遇。
霄漢長懸捧日心
霄漢長く懸く 捧日の心
- 霄漢 … 大空。朝廷に喩える。
- 懸 … 『全唐詩』では「懷」に作り、「一作懸」と注する。
- 捧日心 … 天子への忠誠心。魏の程昱が少年のとき、泰山に登って太陽を捧げ持つ夢を見た。曹操がそれを聞き、この子はゆくゆくわが腹心の臣下になるであろうと言った故事に基づく。程昱については、ウィキペディア【程イク】参照。
- 心 … 『全唐詩』では「新」に作る。
獻賦十年猶未遇
賦を献じて十年 猶お未だ遇わず
- 献賦 … 天子に賦を作って献ずること。
- 十年 … 長い間。『漢書』巻五十、張釈之伝に「文帝に事うること、十年調せらるるを得ず」(事文帝、十年不得調)とあるのに基づく。
- 未遇 … 不遇なこと。
羞將白髮對華簪
羞ずらくは白髪を将て華簪に対するを
- 羞 … 恥ずかしい。
- 華簪 … 華やかなかんざし。地位の高い人。ここでは裴舎人を指す。
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