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旅夜書懐(杜甫)

旅夜書懷
旅(りょ)夜(や)書懐(しょかい)
杜甫(とほ)
  • 五言律詩。舟・流・休・鷗(下平声尤韻)。
  • ウィキソース「旅夜書懷」参照。
  • 旅夜 … 旅の夜。
  • 書懐 … 思っている事がらを書きしるす。
  • 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。河南府鞏(きょう)県(河南省鄭(てい)州(しゅう)市鞏(きょう)義(ぎ)市)生まれ。本籍は襄(じょう)州襄(じょう)陽(よう)県(湖北省襄陽市襄州区)の人。字(あざな)は子美(しび)。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛(しゅく)宗(そう)のもとで左拾遺(天子に諫言する職)に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣(かん)花(か)渓(けい)に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜(りと)」と並称される。『杜工部集』『草堂詩箋』などがある。ウィキペディア【杜甫】参照。
細艸微風岸
細草(さいそう) 微(び)風(ふう)の岸(きし)
  • 細草 … 細かく生えた若草。南朝梁の王筠の楽府「有所思」(『楽府詩集』巻十七、『玉台新詠』巻八・宋刻不収)に「丹(たん)墀(ち) 細草を生じ、紫殿 軽陰(けいいん)を納(い)る」(丹墀生細草、紫殿納輕陰)とある。丹墀は、宮殿の赤く塗った庭。軽陰は、うっすらとした木陰。ウィキソース「有所思 (王筠)」参照。
  • 微風 … そよ風。三国魏の阮籍「詠懐詩八十二首」の第十四首(『文選』巻二十三では十七首中第七首)に「微風は羅(ら)袂(べい)を吹き、明月は清(せい)暉(き)を耀(かがや)かす」(微風吹羅袂、明月耀清暉)とある。羅袂は、うす絹のたもと。ウィキソース「詠懷詩 (開秋兆涼氣)」参照。
危檣獨夜舟
危(き)檣(しょう) 独(どく)夜(や)の舟(ふね)
  • 危檣 … たかくそびえたつ帆柱。
  • 独夜舟 … 自分ひとりだけの夜の船。
星隨平野闊
星(ほし)は平(へい)野(や)に随(したが)って闊(ひろ)く
  • 随平野 … 平野のかなたまで。
  • 隨 … 『全唐詩』では「垂」に作り、「一作隨」と注する。
  • 闊 … 遠くまで広々と広がっている様子。
月湧大江流
月(つき)は大江(たいこう)に湧(わ)きて流(なが)る
  • 月湧 … 「月が揚子江から湧き出たように大空に上る」という解釈と、「月の影が水面にきらきらと映っており、その様子は月が水中から湧き出たように見える」という解釈の二通りある。
  • 大江 … 揚子江。
名豈文章著
名(な)は豈(あ)に文(ぶん)章(しょう)もて著(あら)われんや
  • 豈 … 「あに~(な)らんや」と読み、「どうして~しようか、いやしない」と訳す。反語の意を示す。
  • 文章 … 文学。詩文。
官因老病休
官(かん)は老(ろう)病(びょう)に因(よ)りて休(や)む
  • 官 … 役人生活。
  • 因 … 『全唐詩』には「一作應」と注する。「應」なら「官は応(まさ)に老病にて休むべし」となり、「役人生活も年老いて病気がちとなれば、やめるのが当たり前だ」という意味になる。
  • 老病 … 年老いて病身であること。
  • 休 … 辞職すること。
飄飄何所似
飄飄(ひょうひょう) 何(なん)の似(に)たる所(ところ)ぞ
  • 飄飄 … さまようこと。『杜工部詩集』等では「飄零」に作る。飄零は、おちぶれること。
  • 何所似 … 何に似ているだろうか。
天地一沙鷗
天(てん)地(ち)の一(いち)沙(さ)鷗(おう)
  • 地 … 『全唐詩』等には「一作外」と注する。
  • 沙鷗 … 砂浜にいるかもめ。沙は、砂に同じ。自分(杜甫)の姿と同じである。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻三(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百二十九(排印本、中華書局、1960年)
  • 『宋本杜工部集』巻十四(影印本、台湾学生書局、1967年)
  • 『杜詩詳注』巻十四(仇兆鰲注、中華書局、1979年)
  • 『唐詩三百首注疏』巻四・五言律詩(廣文書局、1980年)
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