杜侍御送貢物戯贈(張謂)
杜侍御送貢物戯贈
杜侍御 貢物を送る、戯れに贈る
杜侍御 貢物を送る、戯れに贈る
- 七言律詩。難・壇・冠・寒・看(平声寒韻)。
- 杜侍御 … 人物については不明。「侍御」は官名。侍御史。官吏の違法を摘発する監察官。
- 貢物 … 貢ぎ物。
- 戯贈 … 杜侍御が南方からの貢ぎ物を護送する使者となったのに対し、作者が労をねぎらいつつ、多少ふざけた口調で詩を贈っている。
- 張謂 … 721~780?。盛唐の詩人。河南省沁陽の人。字は正言。大暦六年(771)に礼部侍郎となったが、のちに潭州(湖南省長沙)の刺史に左遷された。ウィキペディア【張謂】参照。
銅柱朱崖道路難
銅柱 朱崖 道路難し
- 銅柱 … 後漢の馬援が今のベトナムの北方を征伐したとき、漢との国境を示すために立てた柱。ウィキペディア【馬援】参照。
- 朱崖 … 漢代に置かれた郡名。今の海南島瓊州の地方。「珠崖」とも。
伏波橫海舊登壇
伏波 横海 旧と壇に登れり
- 伏波 … 「伏波将軍」の略。漢代、南方征伐の将軍の名称。
- 横海 … 「伏波」と同じく、南方征伐の将軍の名称。
- 旧 … その昔。
- 登壇 … 将軍を任命するとき、壇上に登って行われた儀式。
越人自貢珊瑚樹
越人自ら貢す 珊瑚の樹
- 越人 … 南越の住民。今の広東省・広西チワン族自治区地方の住民。
- 自貢 … 自発的に貢ぐ。
漢使何勞獬豸冠
漢使何ぞ労せん 獬豸の冠
- 漢使 … 朝廷の使者。
- 労 … わずらわす。
- 獬豸冠 … 侍御史のかぶる冠。「獬豸」は神獣の名。獬豸の姿を冠のかざりとした。ウィキペディア【カイチ】参照。
疲馬山中愁日晩
疲馬 山中に日の晩るるを愁え
- 疲馬 … 疲れた馬。
孤舟江上畏春寒
孤舟 江上に春の寒きを畏る
- 孤舟 … 一そうの舟。
- 江上 … 大きな川の上。
由來此貨稱難得
由来 此の貨 得難しと称す
- 由来 … もともと。昔から。元来。
- 此貨称難得 … 『老子』第三章に、「得難きの貨を貴ばざれば、民をして盗を為さざらしむ」(不貴難得之貨、使民不爲盗)とあり、「手に入れることのむずかしい珍宝などを無暗に尊んだりしなければ、人民が盗みをはたらくようなことはなくなる」という意をふまえて風刺している。
多恐君王不忍看
多恐らくは 君王 看るに忍びざらん
- 多恐 … おそらく。たぶん。「多に恐る」とも読む。
- 不忍看 … 御覧になるようなお気持ちをおこされない。
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