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湖中対酒作(張謂)

湖中對酒作
湖(こ)中(ちゅう) 酒(さけ)に対(たい)して作(つく)る
張(ちょう)謂(い)
  • 七言古詩。山・閑(上平声刪韻)、惜・益(入声陌韻)、家・花(下平声麻韻)。
  • ウィキソース「湖上對酒行」参照。
  • 湖中對酒作 … 『全唐詩』では「湖上對酒行」に作る。
  • 湖中 … 湖に舟を浮かべて。湖は、江蘇省揚州市あたりという説、あるいは作者が潭(たん)州(湖南省長沙)の刺史だったことがあるので洞庭湖という説とがある。
  • 張謂 … 721~780?。盛唐の詩人。河南省沁陽(しんよう)の人。字(あざな)は正言(せいげん)。大暦六年(771)に礼部侍郎となったが、のちに潭(たん)州(湖南省長沙)の刺史に左遷された。ウィキペディア【張謂】参照。
夜坐不厭湖上月
夜坐(やざ)厭(いと)わず 湖(こ)上(じょう)の月(つき)
  • 夜坐 … 「夜(よる)坐(ざ)して」と読んでもよい。夜は坐ったままで。
  • 不厭 … 「厭(あ)かず」と読んでもよい。飽きない。見て飽きない。
  • 湖上月 … 湖の水面にかかる月。
晝行不厭湖上山
昼(ちゅう)行(こう)厭(いと)わず 湖(こ)上(じょう)の山(やま)
  • 昼行 … 「昼(ひる)行(ゆ)きて」と読んでもよい。昼は(湖のほとりの山を)歩く回って。
  • 湖上山 … 湖畔の山。
眼前一樽又長滿
眼前(がんぜん)の一樽(いっそん) 又(また)長(とこ)しえに満(み)つ
  • 眼前一樽 … 目の前の酒樽。
  • 又長満 … いつも酒がいっぱいに入っている。
心中萬事如等閑
心(しん)中(ちゅう)の万(ばん)事(じ) 等閑(とうかん)の如(ごと)し
  • 等閑 … 気に留めないこと。意に介しないこと。
主人有黍萬餘石
主人(しゅじん)黍(きび)有(あ)り 万(ばん)余(よ)石(こく)
  • 黍 … きび。酒を作る原料。
  • 万余石 … 一万石余り。
  • 萬 … 『全唐詩』では「百」に作る。
濁醪數斗應不惜
濁醪(だくろう)数(すう)斗(と) 応(まさ)に惜(お)しまざるべし
  • 濁醪 … 濁り酒。どぶろく。
  • 応不惜 … 何の惜しまれるはずがあろう。
  • 応 … 「まさに~すべし」と読み、「きっと~であろう」と訳す。再読文字。強い推量の意を示す。
即今相對不盡歡
即今(そっこん)相(あい)対(たい)して歓(かん)を尽(つ)くさずんば
  • 即今 … ただいま。現在。
  • 相対 … 向かい合って。
  • 對 … 『全唐詩』には「一作逢」と注する。
  • 不尽歓 … 思う存分喜びを尽くさなかったら。
別後相思復何益
別(べつ)後(ご)相(あい)思(おも)うも復(ま)た何(なん)の益(えき)かあらん
  • 別後 … 別れた後。
  • 相思 … 互いに懐かしがる。
  • 復何益 … 何の役に立つものか。
茱萸灣頭歸路賖
茱(しゅ)萸(ゆ)湾(わん)頭(とう) 帰路(きろ)賖(はる)かなり
  • 茱萸湾 … 江蘇省揚州市の東北にあった湾という説、あるいは長沙府益陽県にあった洞庭湖の一つの湾という説とがある。
  • 湾頭 … 湾口。湾の出入り口。
  • 賖 … はるかに遠い。
願君且宿黄公家
願(ねが)わくは君(きみ)且(しばら)く宿(しゅく)せよ 黄公(こうこう)の家(いえ)
  • 宿 … 泊まる。
  • 黄公家 … 竹林の七賢の一人、晋の王(おう)戎(じゅう)が、阮籍(げんせき)・嵆康(けいこう)とともに黄公の酒場で痛飲したことを懐かしんだという『世説新語』に見える故事に基づく。ここでは主人の家を指す。
風光若此人不醉
風光(ふうこう)此(かく)の若(ごと)くして人(ひと)酔(よ)わずんば
  • 風光 … よい景色。
參差辜負東園花
参(しん)差(し)として東園(とうえん)の花(はな)に辜負(こふ)せん
  • 参差 … 食い違って。ここでは、咲きほこっている東園の花の心意気と食い違うこと。
  • 東園花 … 東の庭に咲いている桃や李(すもも)の花。東は、春の意。三国魏の阮籍「詠懐詩八十二首」の第三首に「嘉(か)樹(じゅ)の下 蹊(こみち)を成す、東園の桃と李(すもも)と」(嘉樹下成蹊、東園桃與李)とある。ウィキソース「詠懷詩十七首」参照。
  • 辜負 … 相手の気持ちにそむく。違背する。
  • 辜 … 底本では「孤」に作るが、諸本により改めた。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻二(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻一百九十七(排印本、中華書局、1960年)
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