題長安主人壁(張謂)
題長安主人壁
長安の主人の壁に題す
長安の主人の壁に題す
- 七言絶句。金・深・心(平声侵韻)。
- 『全唐詩』巻197所収。ウィキソース「題長安壁主人」参照。
- 題長安主人壁 … 長安の宿の壁に書きつける詩。『全唐詩』では「題長安壁主人」に作る。
- 題~壁 … 壁に詩を書きつけること。
- 主人 … 宿の主人。転じて宿そのものを指す。「作者が寄寓している家のあるじ」と解釈するのは誤り。星川清孝『新訂 歴代中国詩精講』(学燈社、昭和50年)には「主人は旅宿のこと」とし、「長安主人というのは、長安に進士の試験を受けに来ていた張謂の宿泊していた家、旅館のことであろう。初めは厚遇されていたが、試験に落第し、金も無くなると忽ち冷淡に取り扱われたのを憤慨して、この詩を宿の壁に書きつけたのであると伝えられる」とある。
- この詩は、作者の若い頃の作と思われる。人情の軽薄さに憤慨して作った詩である。
- 張謂 … 721~780?。盛唐の詩人。河南省沁陽の人。字は正言。大暦六年(771)に礼部侍郎となったが、のちに潭州(湖南省長沙)の刺史に左遷された。ウィキペディア【張謂】参照。
世人結交須黄金
世人 交わりを結ぶに黄金を須う
- 世人 … 世間の人。
- 結交 … 交際するのに。
- 黄金 … 金銭。金の力。
- 須 … 「もちう」「もちいる」と読み、「~を必要とする」と訳す。
黄金不多交不深
黄金多からざれば 交わり深からず
- 黄金不多交不深 … 金が多くなければ、交際も深まらない。
縦令然諾暫相許
縱令 然諾して暫く相許すとも
- 縱令 … 「たとい~とも」と読み、「たとえ~とも」「たとえ~であるとしても」「万が一~とも」と訳す。逆接の仮定条件の意を示す。「縦」「縦使」「仮令」も同じ。
- 然諾 … よろしいと引き受けること。承知すること。承諾。
- 許 … 『唐詩品彙』(『四庫全書 集部』所収)では「與」に作る。
- 相 … ここでは「互いに」という意味ではなく、動作に対象があることを示す言葉。「相手に対して」の意。
- 許 … 心を許す。ここでは親しく交際すること。
終是悠悠行路心
終に是れ悠悠たる行路の心
- 終 … 結局は。結局のところ。
- 悠悠 … はるかに隔たること。ここでは疎遠で無関心な態度を形容する言葉。
- 行路心 … 道を行く通りすがりの人の気持ち。冷淡で無関心な気持ちをいう。
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