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船下夔州郭宿雨湿不得上岸別王十二判官(杜甫)

船下夔州郭宿雨濕不得上岸別王十二判官
船(ふね)にて夔(き)州(しゅう)の郭(かく)に下(くだ)りて宿(しゅく)す、雨(あめ)湿(うるお)いて岸(きし)に上(のぼ)るを得(え)ず、王(おう)十(じゅう)二(に)判官(はんがん)に別(わか)る
杜甫(とほ)
  • 五言律詩。娟・懸・煙・賢(下平声先韻)。
  • ウィキソース「全唐詩/卷229」参照。
  • 夔州 … 現在の四川省奉節県。
  • 郭 … 城郭の外。郭外。
  • 王十二 … 不詳。十二は、排行。
  • 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。河南府鞏(きょう)県(河南省鄭(てい)州(しゅう)市鞏(きょう)義(ぎ)市)生まれ。本籍は襄(じょう)州襄(じょう)陽(よう)県(湖北省襄陽市襄州区)の人。字(あざな)は子美(しび)。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛(しゅく)宗(そう)のもとで左拾遺(天子に諫言する職)に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣(かん)花(か)渓(けい)に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜(りと)」と並称される。『杜工部集』『草堂詩箋』などがある。ウィキペディア【杜甫】参照。
依沙宿舸船
沙(すな)に依(よ)りて舸(か)船(せん)を宿(しゅく)す
  • 沙 … 砂浜。
  • 舸船 … 本来は「大きなふね」の意だが、ここではたんに「舟」の意。
石瀨月娟娟
石瀬(せきらい) 月(つき) 娟娟(けんけん)たり
  • 石瀬 … 石の多い浅瀬。
  • 娟娟 … 月の光が美しいさま。
風起春燈亂
風(かぜ)起(おこ)りて春(しゅん)灯(とう)乱(みだ)れ
  • 春灯 … 春の夜のともしび。ここでは舟につるしてあるともしび。
江鳴夜雨懸
江(こう)鳴(な)りて夜雨(やう)懸(かか)る
  • 懸 … 降りそそぐこと。
晨鐘雲外濕
晨(しん)鐘(しょう) 雲外(うんがい)に湿(うるお)い
  • 晨鐘 … 夜明けを知らせる鐘。
  • 雲外 … 雲のかなた。はるかな遠い所のこと。
  • 外 … 『全唐詩』には「一作岸」と注する。
  • 湿 … 鐘の音が雨で湿りを帯びているようす。
勝地石堂煙
勝(しょう)地(ち) 石堂(せきどう)煙(けむ)る
  • 勝地 … 景色のよい土地。
  • 石堂 … 夔州にあった景勝の地と思われる。
  • 煙 … 『全唐詩』には「一作偏」と注する。底本では「偏」に作るが、『全唐詩』に従った。
柔艣輕鷗外
柔(じゅう)艣(ろ) 軽鷗(けいおう)の外(そと)
  • 柔艣 … 軽櫓。または、静かに櫓をこぐこと。艣は、櫓に同じ。
  • 軽鷗 … 軽く水面に浮かぶ鷗。
含悽覺汝賢
悽(せい)を含(ふく)んで汝(なんじ)の賢(けん)なるを覚(おぼ)ゆ
  • 含悽 … 悲しみを心にいだく。
  • 悽 … 『全唐詩』には「一作情」と注する。
  • 汝賢 … 汝は、王判官を指す。賢は賢明さ。『書経』大禹謨篇に「允(まこと)を成(な)し功(こう)を成(な)すは、惟(こ)れ汝(なんじ)の賢(けん)なり。克(よ)く邦(くに)に勤(つと)め、克(よ)く家(いえ)に倹(けん)にして、自(みずか)ら満(まん)仮(か)せざるは、惟(こ)れ汝(なんじ)の賢(けん)なり」(成允成功、惟汝賢。克勤于邦、克儉于家、不自滿假、惟汝賢)とある。ウィキソース「尚書/大禹謨」参照。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻三(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百二十九(排印本、中華書局、1960年)
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