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蓬萊三殿侍宴奉勅詠終南山(杜審言)

蓬萊三殿侍宴奉勅詠終南山
蓬萊(ほうらい)三殿(さんでん)にて宴(えん)に侍(じ)し、勅(ちょく)を奉(ほう)じて終(しゅう)南(なん)山(ざん)を詠(えい)ず
杜(と)審言(しんげん)
  • 五言律詩。邊・前・懸・烟・天(下平声先韻)。
  • ウィキソース「蓬萊三殿侍宴奉敕詠終南山應制」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』『前唐十二家詩本』『唐五十家詩集本』『文苑英華』では「蓬萊三殿侍宴奉敕詠終南山應制」に作る。
  • 蓬萊三殿 … 蓬萊は、長安城の北東にあった蓬萊宮、すなわち大明宮のこと。大明宮は、時代により何度も改名され、この時は蓬萊宮と称していた。三殿は、蓬萊宮(大明宮)の中の迎賓館として使われていた麟徳殿の別名。一殿に三面があるからいう。『雍録』に「三殿とは、麟徳殿なり。一殿にして三面有り、故に三殿と名づくなり」(三殿者、麟德殿也。一殿而有三面、故名三殿也)とある。ウィキソース「雍錄/卷04」参照。なお、三殿を大明宮の正殿である含元殿・宣政殿・紫宸殿とするのは誤り。
  • 勅 … 勅命。
  • 終南山 … 長安の南方にある山。今の陝西省南部、秦嶺山脈の中部あたりを指す。別名南山、中南山、太乙山。ウィキペディア【終南山】参照。『括地志』雍州、万年県の条に「終南山は、一名中南山、一名太一山、一名南山、一名橘山、一名楚山、一名泰山、一名周南山、一名地脯山、雍州万年県の南五十里に在り」(終南山、一名中南山、一名太一山、一名南山、一名橘山、一名楚山、一名泰山、一名周南山、一名地脯山、在雍州萬年縣南五十里)とある。ウィキソース「括地志輯校」参照。また『詩経』秦風・終南に「終南に何か有る、条(じょう)有り梅(ばい)有り」(終南何有、有條有梅)とある。条は、ユズの木。梅は、ユズリハの木。ウィキソース「詩經/終南」参照。また『書経』禹貢篇に「荊(けい)・岐(き)は既に旅(りょ)し、終南・惇物(とんぶつ)より、鳥(ちょう)鼠(そ)に至る」(荊岐既旅、終南惇物、至于鳥鼠)とある。ウィキソース「尚書/禹貢」参照。
  • 杜審言 … 645?~708。初唐の詩人。襄(じょう)陽(よう)(湖北省)の人。字(あざな)は必簡。杜甫の祖父。咸亨元年(670)、進士に及第。李嶠、崔融、蘇味道とともに「文章四友」と呼ばれる。ウィキペディア【杜審言】参照。
北斗挂城邊
北(ほく)斗(と) 城(じょう)辺(へん)に挂(かか)り
  • 北斗 … 北斗七星。ウィキペディア【北斗七星】参照。『史記』天官書に「北斗の七星は、所謂(いわゆる)旋(せん)・璣(き)・玉(ぎょっ)衡(こう)、以て七政を斉(ととの)うるものなり」(北斗七星、所謂旋璣玉衡、以齊七政)とある。旋・璣は、北斗七星の第二・第三星。一説に、第一星から第四星とも。玉衡は、北斗七星の第五星。一説に、第五星から第七星とも。七政は、太陽・月と、水星・火星・金星・木星・土星の五星のこと。ウィキソース「史記/卷027」参照。
南山倚殿前
南山(なんざん) 殿前(でんぜん)に倚(よ)る
  • 南山 … 終南山。
雲標金闕迥
雲(うん)標(ぴょう) 金闕(きんけつ) 迥(はる)かに
  • 雲標 … 雲の上。標は表。
  • 金闕 … 天子の宮殿。金は、美称。闕は、もと宮殿の門。転じて宮殿。『神異経』西北荒経に「西北の荒中に二金闕有り、…相去ること百丈にして、上に明月珠有り、径は三丈にして、光は千里を照らす」(西北荒中有二金闕、…相去百丈、上有明月珠、徑三丈、光照千里)とある。ウィキソース「神異經」参照。また、南朝陳の張正見の楽府「神仙篇」(『楽府詩集』巻六十四)に「鸞(らん)歌(か)鳳(ほう)舞(ぶ) 天台に集い、金闕銀宮 相向かいて開く」(鸞歌鳳舞集天台、金闕銀宮相向開)とある。鸞歌鳳舞は、美しい歌舞の喩え。ウィキソース「樂府詩集/064卷」参照。また、南朝梁の武帝の楽府「遊女の曲」(『楽府詩集』巻五十、『玉台新詠』巻九・宋刻不収)に「珠(たま)珮(お)びたる婐㛂(わが) 金闕に戯(たわむ)る」(珠珮婐㛂戲金闕)とある。婐㛂は、女性が弱々しく美しいさま。ウィキソース「遊女曲 (蕭衍)」参照。
  • 迥 … 遠に同じ。
樹杪玉堂懸
樹(じゅ)杪(びょう) 玉(ぎょく)堂(どう)懸(かか)る
  • 樹杪 … 木のこずえ。
  • 玉堂 … 美しい御殿。
半嶺通佳氣
半嶺(はんれい) 佳気(かき)通(つう)じ
  • 半嶺 … 山の中腹。
  • 佳気 … めでたい気。『後漢書』光武帝紀下に「気(き)佳(よ)いかな。鬱鬱(うつうつ)葱葱然(そうそうぜん)たり」(氣佳哉。鬱鬱葱葱然)とある。ウィキソース「後漢書/卷1下」参照。
中峰繞瑞煙
中(ちゅう)峰(ほう) 瑞煙(ずいえん)繞(めぐ)る
  • 中峰 … 中央に聳える峰。
  • 瑞煙 … めでたい雲煙。
小臣持獻壽
小(しょう)臣(しん) 持(じ)して寿(じゅ)を献(けん)じ
  • 小臣 … 臣下である作者が自分を謙遜していった言葉。
  • 持 … 終南山を持して。
長此戴堯天
長(とこ)しえに此(ここ)に堯(ぎょう)天(てん)を戴(いただ)かん
  • 堯天 … 堯帝のような聖天子。
  • 堯 … 『唐五十家詩集本』『文苑英華』では「高」に作る。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻三(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻六十二(排印本、中華書局、1960年)
  • 『杜審言集』巻上([明]許自昌編、『前唐十二家詩』所収、万暦三十一年刊、内閣文庫蔵)
  • 『杜審言集』巻上(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『文苑英華』巻一百六十九(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩品彙』巻五十七([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻九([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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