贈蘇綰書記(杜審言)
贈蘇綰書記
蘇綰書記に贈る
蘇綰書記に贈る
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻六十二、『杜審言集』巻下(『前唐十二家詩』所収)、『杜審言集』巻下(『唐五十家詩集』所収)、『文苑英華』巻二百四十九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十一(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十一(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、53頁)、『唐詩品彙』巻四十六、『唐詩別裁集』巻十九、『唐人万首絶句選』巻三、他
- 七言絶句。翩・邊・年(平声先韻)。
- ウィキソース「贈蘇綰書記」参照。
- 詩題 … 『万首唐人絶句』では「贈蘇綰記」に作る。『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「贈蘇書記」に作る。
- 蘇綰 … 詳しい伝記は不明だが、隋の文帝・煬帝の時の重臣だった蘇威や中宗の時の宰相の蘇瓌、玄宗の時の宰相の蘇頲等を輩出した名門蘇氏の出身。のちに工部郎中まで至った。
- 書記 … 官名。文書の記録を司る。唐代では元帥府及び節度使の属官。掌書記。
- 贈 … 詩を直接手渡すこと。「寄」は、詩を人に託して送り届けること。
- この詩は、蘇綰が節度使の掌書記として北辺に赴くにあたり、作者が贈ったもの。
- 杜審言 … 645?~708。初唐の詩人。襄陽(湖北省)の人。字は必簡。杜甫の祖父。咸亨元年(670)、進士に及第。李嶠、崔融、蘇味道とともに「文章四友」と呼ばれる。ウィキペディア【杜審言】参照。
知君書記本翩翩
知る 君が書記 本 翩翩たるを
- 知 … 「しんぬ」と読んでもよい。知っている。
- 君 … 蘇綰を指す。
- 書記 … ここでは官名ではなく、詩文の能力の意。
- 本 … もとより。本来。
- 翩翩 … 元は鳥が身軽にひらひらと飛ぶさまをいうが、転じて詩文の美しい形容。魏の文帝(曹丕)の「呉質に与うるの書」(『文選』巻四十二)に「元瑜は書記翩翩として、致は楽しむに足るなり」(元瑜書記翩翩、致足樂也)とある。ウィキソース「與吳質書」参照。
爲許從戎赴朔邊
為に許す 戎に従って朔辺に赴くを
- 為許 … 引き受けてやる。承諾してやる。
- 従戎 … 従軍すること。戎は、もとは武器。転じて軍隊。戦争。
- 朔辺 … 北方の辺地。北方の辺塞。朔は、北方。辺は、辺境。国境地帯。
紅粉樓中應計日
紅粉楼中 応に日を計うべし
- 紅粉楼 … 紅と白粉をつけた女性の住む高殿。ここでは蘇綰の妻もしくは愛人を指す。「古詩十九首」(『文選』巻二十九、『古詩源』巻四 漢詩)の第二首に「盈盈たり楼上の女、皎皎として窓牖に当る。娥娥たり紅粉の妝い、繊繊として素手を出す」(盈盈樓上女、皎皎當窗牖。娥娥紅粉妝、纖纖出素手)とあるのに基づく。ウィキソース「青青河畔草 (古詩)」参照。
- 応計日 … 君の帰る日を指折り数えて待ちわびていることだろう。
- 応 … 「まさに~すべし」と読み、「きっと~であろう」と訳す。再読文字。強い推量の意を示す。
燕支山下莫經年
燕支山下 年を経ること莫かれ
- 燕支山 … 今の甘粛省張掖市山丹県の東南にある山。焉支山・胭脂山とも書く。蘇綰の任地のあたり。燕支は、臙脂(べに)に通じ、その草をこの山が多く産したという。上句の紅粉に対する。「匈奴の歌」(『古詩源』巻四 漢詩、『古詩紀』巻十八)に「我が燕支山を失う、我が婦女をして顔色無からしむ。我が祁連山を失う、我が六畜をして蕃息せざらしむ」(失我焉支山、令我婦女無顏色。失我祁連山、使我六畜不蕃息)とある。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷018」参照。
- 莫経年 … いつまでも年月を過ごしてはいけないよ。
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