和子由澠池懐旧(蘇軾)
和子由澠池懷舊
子由の澠池懐旧に和す
子由の澠池懐旧に和す
- 〔テキスト〕 『集註分類東坡先生詩』巻十六(『四部叢刊 初編集部』所収)、他
- 七言律詩。泥・西・題・嘶(平声齊韻)。
- ウィキソース「和子由澠池懷舊」参照。
- 嘉祐六年(1061)、二十六歳の作。
- 子由 … 弟の蘇轍の字。ウィキペディア【蘇轍】参照。
- 澠池 … 県名。河南省、洛陽の西約60キロにある。ウィキペディア【ベン池県】参照。
- 懐旧 … 昔のことをしのぶ。五年前、父の蘇洵、弟の蘇轍とともにこの地を通った。「旧」はその時を指す。
- 和 … 和韻すること。和韻には、依韻・用韻・次韻の三種がある。「依韻」は原作と同類の韻を用いること。「用韻」は原作に用いられている韻字を順不同でそのまま用いること。「次韻」は原作と同一の字を同一の順に用いること。ここでは蘇轍の「澠池を懐いて子瞻兄に寄す」(懷澠池寄子瞻兄)の詩に次韻している。ウィキソース「懷澠池寄子瞻兄」参照。
- 蘇軾 … 1036~1101。北宋の文学者・詩人。眉山(四川省)の人。字は子瞻、号は東坡居士。蘇洵の子、蘇轍の兄。嘉祐二年(1057)、弟とともに進士に及第。王安石の新法に反対したため左遷された。唐宋八大家の一人。著作集に『東坡全集』がある。ウィキペディア【蘇軾】参照。
人生到處知何似
人生 到る処 知んぬ何にか似たる
- 人生 … 人の一生。
- 到処 … 行く先々。各地をさすらうこと。
- 知何似 … 何に似ているだろうか。
- 知 … ここでは「しんぬ」と読み慣わす。「いったい~だろうか」「いったい~かしら」の意。
應似飛鴻踏雪泥
応に似たるべし 飛鴻の雪泥を踏むに
- 応 … 「まさに~すべし」と読み、「きっと~であろう」と訳す。再読文字。強い推量の意を示す。
- 飛鴻 … 舞い降りた鴻。「鴻」は雁に似ているが、雁より大きな渡り鳥。
- 雪泥 … 雪解けの泥土。雪解けの泥水。
泥上偶然留指爪
泥上に 偶然 指爪を留むるを
- 泥上 … 泥の上に。
- 指爪 … 爪のあと。
- 留 … 残している。
鴻飛那復計東西
鴻飛んで 那んぞ復 東西を計らん
- 那 … 「なんぞ」と読み、「どうして~か(いや~ではない)」と訳す。反語を表す。「何」より口語的。
- 計東西 … 東へ行ったのか西へ行ったのか推し量る。
老僧已死成新塔
老僧は已に死して 新塔と成り
- 老僧 … 五年前、兄弟で澠池の寺に泊めてもらった時、世話になった老僧のこと。名を奉閑といった。
- 新塔 … 新たに立てた老僧の石塔。
壞壁無由見舊題
壊壁には 旧題を見るに由無し
- 壊壁 … くずれた寺の壁。
- 旧題 … 五年前、二人が寺の壁に書きつけた詩。「題」とは、詩を壁などに書きつけること。
- 無由見 … 見つけるすべもない。
往日崎嶇還記否
往日の崎嶇 還お記するや否や
路長人困蹇驢嘶
路長く 人困しみて 蹇驢嘶けるを
- 路長 … 道は遠く。
- 人困 … 人は疲れ。
- 蹇驢 … 足の不自由な驢馬。「蹇」は足が伸縮しないで不自由なこと。澠池へ向かう途中、馬が死んで驢馬に乗り換えたという。自注に「往にし歳、馬二陵に死し、驢に騎りて澠池に至る」(往歳、馬死于二陵、騎驢至澠池)とある。「往歳」は過ぎ去った年。往年。「二陵」は地名。南陵と北陵。すなわち澠池の西方にある崤山のこと。
- 嘶 … (馬が)いななく。声高く鳴く。
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