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雍也第六 18 子曰知之者章

137(06-18)
子曰、知之者不如好之者。好之者不如樂之者。
いわく、これものこれこのものかず。これこのものこれたのしむものかず。
現代語訳
  • 先生 ――「知っているより、すきであるのがまし。すきであるより、心たのしいのがまし。」(がえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「知る者より好む者が上、好む者より楽しむ者が上じゃ。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「真理を知る者は真理を好む者に及ばない。真理を好む者は真理を楽しむ者に及ばない」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 之 … 具体的に指示するものはない。
  • 知 … 存在を知る。
  • 不如 … 「~は…にしかず」(~不如…)と読み、「~は…に及ばない」「~より…の方がよい」と訳す。
  • 好 … 対象に対して特別な感情をいだく。好きになる。
  • 楽 … 対象と自己とが一体となり、完全に融合すること。
補説
  • 『注疏』に「此の章は人の道を学び心を用うることの深浅の異なりを言うなり」(此章言人之學道用心深淺之異也)とある。『論語注疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 知之者不如好之者 … 『集解』に引く包咸の注に「学問して之を知る者は、之を好む者の篤きに如かず」(學問知之者、不如好之者篤)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「学者の深浅を謂うなり。之を知るは、学問に益有るを知る者を謂うなり。之を好むは、之を学ばんと欲して、以て好むことを為す者を謂うなり。夫れ益有るを知りて之を学ぶは、則ち之を学ばんと欲して、以て好むことを為す者に如かざるなり。故に李充曰く、学の益たるを知ると雖も、或いは計ること有りて而る後に知る、学の利其の中に在り。故に之を好む者の篤きに如かざるなり、と」(謂學者深淺也。知之、謂知學問有益者也。好之、謂欲學之、以爲好者也。夫知有益而學之、則不如欲學之、以爲好者也。故李充曰、雖知學之爲益、或有計而後知、學利在其中。故不如好之者篤也)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『注疏』に「言うこころは学び問いて之を知る者は、之を好む者の篤厚に如かざるなり」(言學問知之者、不如好之者篤厚也)とある。
  • 好之者不如楽之者 … 『集解』に引く包咸の注に「之を好む者は、又た之を楽しむ者の深きに如かざるなり」(好之者、又不如樂之者深也)とある。また『義疏』に「楽は、之を歓楽するを謂うなり。好は、盈厭えいえん有り。故に性歓して之を楽しむに如かず。顔淵の楽しみ其の中に在るが如きなり。故に李充曰く、好に盛衰有り。之を楽しむ者の深きに如かざるなり、と」(樂、謂歡樂之也。好、有盈厭。故不如性歡而樂之。如顏淵樂在其中也。故李充曰、好有盛衰。不如樂之者深也)とある。盈厭は、満足すること。また『注疏』に「之を好む者は、又た之を悦楽する者の深きに如かざるなり」(好之者、又不如悅樂之者深也)とある。
  • 『集注』に引く尹焞の注に「之を知る者は、此の道有るを知るなり。之を好む者は、好みて未だ得ざるなり。之を楽しむ者は、得る所有りて之を楽しむなり」(知之者、知有此道也。好之者、好而未得也。樂之者、有所得而樂之也)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 『集注』に引く張敬夫(張栻ちょうしょく、敬夫は字)の注に「之を五穀に譬う。知る者は、其の食らう可き者を知るなり。好む者は、食らいて之をたしなむ者なり。楽しむ者は、之を嗜みて飽く者なり。知りて好むこと能わざるは、則ち是れ知の未だ至らざるなり。之を好みて未だ楽に及ばざるは、則ち是れ好むの未だ至らざるなり。此れ古えの学者の、自らつとめてまざる所以の者か」(譬之五穀。知者、知其可食者也。好者、食而嗜之者也。樂者、嗜之而飽者也。知而不能好、則是知之未至也。好之而未及於樂、則是好之未至也。此古之學者、所以自強而不息者與)とある。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「夫れ道は一なり、唯だ行う所の生熟・深浅に有るのみ。夫子之を言うは、其の生より熟に至り、浅より深に至らんことを欲するなり」(夫道一也、唯有所行之生熟深淺耳。夫子言之者、欲其自生至熟、自淺至深也)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「之を知る、之を好む、之を楽しむ、いん氏・張敬夫くせり」(知之好之樂之、尹氏張敬夫盡矣)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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