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辺詞(張敬忠)

邊詞
へん
ちょうけいちゅう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻七十五、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、61頁)、『唐詩品彙』巻五十五、他
  • 七言絶句。遲・絲・時(平声支韻)。
  • ウィキソース「邊詞」参照。
  • 辺詞 … 辺境のうた。楽府題ではない。
  • この詩は、辺境の春の訪れが遅いことを詠んだもの。
  • 張敬忠 … 生没年不詳。初唐の詩人。出身地不明。監察御史のとき、将軍ちょう仁悳じんとくに認められ、北辺の地に出陣して信任を受けた。のちに吏部りぶろうちゅうとなる。開元七年(719)にへい節度使に任命された。今に伝えられる詩はわずか二首のみ。
五原春色舊來遲
げん春色しゅんしょく きゅうらいおそ
  • 五原 … 今の寧夏回族自治区呉忠市塩池県のあたり。唐代は塩州五原郡。今の内モンゴル自治区の五原郡ではない。『旧唐書』地理志に「武徳元年、改めて塩州と為し、五原・興寧の二県を領す。……天宝元年、改めて五原郡と為す。乾元元年、改めて塩州と為す」(武德元年、改爲鹽州、領五原、興寧二縣。……天寶元年、改爲五原郡。乾元元年、改爲鹽州)とある。ウィキソース「舊唐書/卷38」参照。ウィキペディア【塩州】参照。
  • 春色 … 春の訪れ。謝朓の「徐都曹に和す」(『文選』巻三十)に「宛洛えんらく遨游ごうゆうく、春色はこうしゅうに満つ」(宛洛佳遨游、春色滿皇州)とある。宛洛は、宛邑(南陽)と洛陽との二都。遨游は、気ままに遊び楽しむこと。皇州は、帝都の地。ウィキソース「昭明文選/卷30」参照。
  • 旧来 … 以前から。もともと。
  • 遅 … (春の訪れが)遅い所である。
二月垂楊未掛絲
がつ 垂楊すいよう いまいとけず
  • 二月 … 陰暦二月。仲春。春の盛り。
  • 垂楊 … しだれ柳。謝朓の「鼓吹曲」(『文選』巻二十八)に「ぼうどうはさみ、垂楊すいよう御溝ぎょこうおおう」(飛甍夾馳道、垂楊蔭御溝)とある。ウィキソース「昭明文選/卷28」参照。
  • 未掛糸 … まだ枝は芽吹いていない。まだ芽吹いた枝を垂れていない。
  • 掛糸 … 柳の糸のような枝が芽吹いて垂れること。
  • 掛 … 『全唐詩』では「挂」に作る。
即今河畔冰開日
即今そっこん はん こおりひらくの
  • 即今 … ただいま。
  • 河畔 … 川のほとり。川辺。
  • 冰開日 … 氷が溶け始めた日。
  • 冰 … 『古今詩刪』『唐詩品彙』では「氷」に作る。「冰」は「氷」の異体字。
正是長安花落時
まさちょうあん はなつるのとき
  • 正是 … ちょうど~である。まさしく。
  • 長安 … 唐の都。現在の陝西省西安市。当時、人口百万を超える大都市であった。『読史方輿紀要』陝西、長安県の条に「高帝(劉邦)の五年(前202)、長安県を置く、都をここに定む。恵帝の始め城を築く、今、県の西北に在り」(高帝五年置長安縣、定都於此。惠帝始築城、在今縣西北)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷五十三」参照。ウィキペディア【長安】参照。
  • 花落時 … 花が散っている時分だ。
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