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涼州詞(王之渙)

涼州詞
涼州りょうしゅう
おうかん
  • 七言絶句。間・山・関(平声刪韻)。
  • 『全唐詩』巻十八、巻二百五十三所収。『唐詩三百首』七言絶句所収。ウィキソース「涼州詞 (王之渙)」参照。
  • 詩題 … 『唐詩三百首』、『樂府詩集』、『文苑英華』巻百九十七では「出塞」、『文苑英華』巻二百九十九では「涼州」に作る。
  • 涼州詞 … 楽府題。涼州歌に同じ。涼州は、現在の甘粛省武威市。玄宗の開元年間、西涼府の都督であった郭知運が採集し朝廷に献上した涼州一帯の楽曲。宮調(五音音階の第一音。五音は、宮・商・角・・羽)曲で、辺境の地に出征した兵士の心情を詠じたもの。『新唐書』礼楽志に「天宝の楽曲は、皆辺地の名を以てす。涼州・伊州・甘州の類の若し」(天寶樂曲、皆以邊地名。若涼州、伊州、甘州之類)とある。ウィキソース「新唐書/卷022」参照。また『楽府詩集』巻七十九・近代曲辞に「楽苑に曰く、涼州は宮調の曲にて、開元中、西涼府の都督郭知運が進みけり」(樂苑曰、涼州宮調曲、開元中、西涼府都督郭知運進)とある。ウィキソース「樂府詩集/079卷」参照。
  • 王之渙 … 688~742。盛唐の詩人。へいしゅう(山西省太原)の人。あざなりょう。科挙に及第せず、在野の詩人として生涯を終えた。辺境の風物を詠じた辺塞へんさい詩人として有名。ウィキペディア【王之渙】参照。
黄河遠上白雲閒
こう とおのぼる 白雲はくうんかん
  • 『國秀集』(『四部叢刊 初篇集部』所収)および『文苑英華』巻299(中華書局)ではこの句と次の句(一片孤城萬仞山)とが逆になっている。
  • 黄河遠上 … 黄河をはるか遠くまでさかのぼって行く。しかし、黄河は涼州地方からまったく見えないので、「黄沙」が正しいとする説もある。『全唐詩』巻18では「黄沙直上」に作り、「集作河遠」とある。『全唐詩』巻253には「一本次句為第一句、黄河遠上作黄沙直上」とある。
  • 白雲間 … 白雲のたなびく辺りまで。
一片孤城萬仞山
一片いっぺんじょう 万仞ばんじんやま
  • 一片 … ぽつんと一つの。
  • 孤城 … 城塞。
  • 万仞 … 山などが非常に高いこと。一仞は七尺(もしくは八尺)。「仞」は「仭」に作るテキストもある。異体字。
羌笛何須怨楊柳
きょうてき なんもちいん ようりゅううらむを
  • 羌笛 … 羌族の吹く笛のこと。羌族は、チベット系異民族。馬融の「長笛の賦」(『文選』巻十八)に「近世の双笛は羌より起る。きょうひと竹をりて未だわるに及ばざるに、竜水中に鳴きて己をあらわさず。竹をりて之を吹くに声相似たり。其の上孔をけずりて之を通洞し、りて以てむちに当て便にして持ち易し。易の京君明音律を識り、故に本四孔にして加うるに一を以てす。君明の加うる所の孔後に出で、是を商声と謂い、五音そなわる」(近世雙笛從羌起。羌人伐竹未及已、龍鳴水中不見己。截竹吹之聲相似。剡其上孔通洞之、裁以當簻便易持。易京君明識音律、故本四孔加以一。君明所加孔後出、是謂商聲、五音畢)とある。ウィキソース「長笛賦」参照。
  • 何須 … どうして~する必要があろうか、いやその必要はない。反語。
  • 楊柳 … 笛の曲名。折楊柳。別れのときに吹く。
  • 怨 … 別れを怨む。「折楊柳」を怨めしげに吹く。
春光不度玉門關
しゅんこう わたらず ぎょくもんかん
  • 春光 … (柳を芽吹かせる)春の光。
  • 光 … 『唐詩三百首』では「風」に作る。
  • 不度 … (玉門関を)渡ってこない。越えてこない。
  • 玉門関 … 関所の名。漢代に建立された故関(古い関所)は甘粛省敦煌の西にあった。六朝期に200キロ東に移され、今の甘粛省瓜州県の東に置かれた。『元和郡県図志』隴右道下、沙州の条に「玉門の故関は、県の西北一百一十七里に在り」(玉門故關、在縣西北一百一十七里)とある。また瓜州の条に「玉門関は、県の東二十歩に在り」(玉門關、在縣東二十步)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷40」参照。ウィキペディア【玉門関】参照。
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