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涼州詞(王之渙)

涼州詞
涼州(りょうしゅう)詞(し)
王(おう)之(し)渙(かん)
  • 七言絶句。間・山・関(上平声刪韻)。
  • ウィキソース「涼州詞 (王之渙)」参照。
  • 詩題 … 涼州詞は、楽府題の一つ。涼州歌に同じ。涼州は、現在の甘粛省武威市。玄宗の開元年間、西涼府の都督であった郭知運が採集し朝廷に献上した涼州一帯の楽曲。宮調(五音音階の第一音。五音は、宮・商・角・徴(ち)・羽)曲で、辺境の地に出征した兵士の心情を詠じたもの。『新唐書』礼楽志に「天宝の楽曲は、皆辺地の名を以てす。涼州・伊州・甘州の類の若し」(天寶樂曲、皆以邊地名。若涼州、伊州、甘州之類)とある。ウィキソース「新唐書/卷022」参照。また『楽府詩集』巻七十九・近代曲辞に「楽苑に曰く、涼州は宮調の曲にて、開元中、西涼府の都督郭知運が進みけり」(樂苑曰、涼州宮調曲、開元中、西涼府都督郭知運進)とある。ウィキソース「樂府詩集/079卷」参照。『唐詩三百首』、『樂府詩集』、『文苑英華』巻百九十七では「出塞」、『文苑英華』巻二百九十九では「涼州」に作る。
  • 王之渙 … 688~742。盛唐の詩人。幷(へい)州晋陽(しんよう)(山西省太原市)の人。字(あざな)は季(き)陵(りょう)。科挙には及第しなかったが、開元年間の初め、冀(き)州衡水(こうすい)県(河北省衡水(こうすい)市)の主簿という小官に就いた。しかし、人に陥れられたため辞職し、十五年間、家居して過ごした。晩年には文安県(河北省文安県)の尉に就いたが、官舎で没した。現存する詩はわずか六首のみであるが、辺境の風物を詠じた辺塞(へんさい)詩人として当時から有名であった。ウィキペディア【王之渙】参照。
黄河遠上白雲閒
黄(こう)河(が) 遠(とお)く上(のぼ)る 白雲(はくうん)の間(かん)
  • 『国秀集』および『文苑英華』巻二百九十九ではこの句と次の句(一片孤城萬仞山)とが逆になっている。
  • 黄河遠上 … 黄河をはるか遠くまで遡(さかのぼ)って行く。しかし、黄河は涼州地方からまったく見えないので、「黄沙」が正しいとする説もある。『全唐詩』には「一本次句為第一句、黄河遠上作黄沙直上」と注する。
  • 白雲間 … 白雲のたなびく辺りまで。
一片孤城萬仞山
一片(いっぺん)の孤(こ)城(じょう) 万仞(ばんじん)の山(やま)
  • 一片 … ぽつんと一つの。
  • 孤城 … 城塞。
  • 万仞 … 山などが非常に高いこと。一仞は七尺(もしくは八尺)。
羌笛何須怨楊柳
羌(きょう)笛(てき) 何(なん)ぞ須(もち)いん 楊(よう)柳(りゅう)を怨(うら)むを
  • 羌笛 … 羌族の吹く笛のこと。羌族は、チベット系異民族。後漢の馬融「長笛の賦」(『文選』巻十八)に「近世の双笛は羌より起る。羌(きょう)人(ひと)竹を伐(き)りて未だ已(お)わるに及ばざるに、竜水中に鳴きて己を見(あらわ)さず。竹を截(き)りて之を吹くに声相似たり。其の上孔を剡(けず)りて之を通洞し、裁(き)りて以て簻(むち)に当て便にして持ち易し。易の京君明音律を識り、故に本四孔にして加うるに一を以てす。君明の加うる所の孔後に出で、是を商声と謂い、五音畢(そな)わる」(近世雙笛從羌起。羌人伐竹未及已、龍鳴水中不見己。截竹吹之聲相似。剡其上孔通洞之、裁以當簻便易持。易京君明識音律、故本四孔加以一。君明所加孔後出、是謂商聲、五音畢)とある。ウィキソース「長笛賦」参照。
  • 何須 … どうして~する必要があろうか、いやその必要はない。反語。
  • 楊柳 … 柳の総称。楊は、カワヤナギ。柳は、シダレヤナギ。ここでは、別れのときに吹く笛の曲「折楊柳」を指す。南朝梁の簡文帝の楽府「折楊柳」(『玉台新詠』巻七、『楽府詩集』巻二十二)に「楊柳乱れて糸を成し、攀折(はんせつ)す上春の時」(楊柳亂成絲、攀折上春時)とある。攀折は、枝を引き寄せて折ること。上春は、陰暦の正月。孟春に同じ。ウィキソース「折楊柳 (蕭綱)」参照。
  • 怨 … 別れを怨む。「折楊柳」を怨めしげに吹く。
春光不度玉門關
春(しゅん)光(こう) 度(わた)らず 玉(ぎょく)門(もん)関(かん)
  • 春光 … (柳を芽吹かせる)春の光。
  • 光 … 『唐詩三百首』では「風」に作る。
  • 不度 … (玉門関を)渡ってこない。越えてこない。
  • 玉門関 … 関所の名。漢代に建立された故関(古い関所)は甘粛省敦煌の西にあった。六朝期に200キロ東に移され、今の甘粛省瓜州県の東に置かれた。『元和郡県図志』隴右道下、沙州の条に「玉門の故関は、県の西北一百一十七里に在り」(玉門故關、在縣西北一百一十七里)とある。また瓜州の条に「玉門関は、県の東二十歩に在り」(玉門關、在縣東二十步)とある。ウィキソース「元和郡縣圖志/卷40」参照。ウィキペディア【玉門関】参照。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百五十三(排印本、中華書局、1960年)
  • 『唐詩三百首注疏』巻六下・七言絶句(廣文書局、1980年)
  • 『文苑英華』巻百九十七、巻二百九十九(影印本、中華書局、1966年)
  • 『楽府詩集』巻二十二・横吹曲辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
  • 『国秀集』巻下(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
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