送魏十六還蘇州(皇甫冉)
送魏十六還蘇州
魏十六の蘇州に還るを送る
魏十六の蘇州に還るを送る
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『三体詩』七言絶句・実接、『全唐詩』巻二百四十九、『唐皇甫冉詩集』巻七(『四部叢刊 三編集部』所収)、『皇甫冉集』巻下(『唐五十家詩集』所収)、『唐詩品彙』巻四十九、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十五(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『唐人万首絶句選』巻三、『唐詩別裁集』巻二十、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、62頁)、『唐百家詩選』巻十、他
- 七言絶句。君・聞・雲(平声文韻)。
- ウィキソース「送魏十六還蘇州」参照。
- 『唐詩選』では、これ以下を巻八として独立させている。
- 詩題 … 『三体詩』『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「送魏十六」に作る。
- 魏十六 … 魏は姓。十六は排行(一族中の兄弟やいとこなどの年齢による序列)。人物については不明。『唐人行第録』(中華書局)に「名未詳」とある。
- 蘇州 … 江蘇省南東部、太湖の東岸にある都市。春秋時代の呉の都。隋・唐代に州が置かれた。『隋書』地理志、呉郡の条に「陳、呉州を置く。陳を平らげ、改めて蘇州と曰う。大業の初め、復た呉州と曰う」(陳置吳州。平陳、改曰蘇州。大業初復曰吳州)とある。ウィキソース「隋書/卷31」参照。ウィキペディア【蘇州市】参照。
- 還 … 帰っていく。
- 送 … 見送る。
- この詩は、魏某が蘇州に帰っていくのを見送った時に作ったもの。作者が故郷の潤州丹陽(江蘇省丹陽市)にいた頃の作と思われる。
- 皇甫冉 … 716~769。中唐の詩人。皇甫は姓(二字姓)。潤州丹陽(江蘇省丹陽市)の人。字は茂政。天宝十五載(756)、進士に及第。無錫(江蘇省無錫市)の尉に任命され、最後は右補闕に至った。弟は皇甫曾。『唐皇甫冉詩集』七巻がある。ウィキペディア【皇甫冉】参照。
秋夜沈沈此送君
秋夜沈沈として此に君を送る
- 秋夜 … 秋の夜。
- 沈沈 … 夜が静かにふけていくさま。畳韻(二字が同じ母音で終わる)語。司馬相如「上林の賦」(『文選』巻八)に「沈沈隠隠として、砰磅訇磕たり」(沈沈隱隱、砰磅訇磕)とあり、李善注に「沈沈は、深き貌なり」(沈沈、深貌也)とある。砰磅と訇磕は、どちらも水が激しく流れるときの大きな音の形容。砰磅は、双声(二字の語頭子音が同じ)語。ウィキソース「昭明文選/卷8」参照。『三体詩』『四部叢刊本』『唐五十家詩集本』『唐百家詩選』では「沉沉」に作る。異体字。
- 沈沈此 … 『全唐詩』では「深深北」に作り、「一作沈沈此」とある。北は、丹陽を指す。
- 此送君 … 今ここで君を見送る。
- 此 … 『四部叢刊本』では「北」に作り、「一作此」とある。
陰蟲切切不堪聞
陰虫切切として聞くに堪えず
歸舟明日毘陵道
帰舟 明日 毘陵の道
- 帰舟 … 蘇州へと帰ってゆく君の舟。
- 歸 … 『全唐詩』『四部叢刊本』には「一作孤」とある。
- 明日毘陵道 … 明日にはもう毘陵の道を通り過ぎることだろう。
- 日 … 『全唐詩』には「一作月」とある。『四部叢刊本』では「月」に作り、「一作日」とある。
- 毘陵 … 郡名。晋代に置かれた。今の江蘇省常州市武進区。丹陽と蘇州の中間にある町。『読史方輿紀要』江南、常州府に「禹貢揚州の域、春秋の時呉地、後越に属す。戦国は楚に属す。秦、会稽郡の地と為し、漢、之に因る。……晋の太康の初め、校尉を省き、呉郡を分ちて毘陵郡を置く。永嘉五年、改めて晋陵郡と曰う」(禹貢揚州之域、春秋時吳地、後屬越。戰國屬楚。秦爲會稽郡地、漢因之。……晉太康初、省校尉、分吳郡置毘陵郡。永嘉五年、改曰晉陵郡)とある。ウィキソース「讀史方輿紀要/卷二十五」参照。ウィキペディア【武進区】参照。
- 毘 … 『全唐詩』『四部叢刊本』『唐五十家詩集本』『万首唐人絶句』『唐百家詩選』では「毗」に作る。異体字。
囘首姑蘇是白雲
首を回らせば姑蘇是れ白雲ならん
- 回首 … 振り返って眺めれば。
- 回 … 『全唐詩』『四部叢刊本』では「迴」に作る。『唐五十家詩集本』では「廻」に作る。ともに同義。
- 姑蘇是白雲 … 蘇州の空は、白い雲に包まれていることであろう。
- 姑蘇 … 蘇州を指す。姑蘇山があるからいう。『大明一統志』に「蘇州府……秦、会稽郡を置く。……晋・宋・斉・梁、皆呉郡と為す。陳、呉州を置く。隋の開皇中、改めて蘇州と曰う。姑蘇山に因りて名と為す」(蘇州府……秦置會稽郡。……晉宋齊梁皆爲吳郡。陳置吳州。隋開皇中、改曰蘇州。因姑蘇山爲名)とある。ウィキソース「明一統志 (四庫全書本)/卷08」参照。
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