送僧帰日本(銭起)
送僧歸日本
僧の日本に帰るを送る
僧の日本に帰るを送る
- 〔テキスト〕 『唐詩三百首』五言律詩、『全唐詩』巻二百三十九、『銭考功集』巻五、他
- 五言律詩。行・輕・聲・明(平声明韻)。
- ウィキソース「送僧歸日本」参照。
- 送僧帰日本 … 唐に留学していた僧侶が日本に帰国するのを見送る。僧は誰であるか不詳。
- 本 … 『全唐詩』には「一作東」とある。「日東」は、日本の別名。中国から見た場合の、日が昇る東方の国の意。
- 銭起 … 710?(722?)~780?。中唐の詩人。呉興(浙江省呉興区)の人。字は仲文。天宝十載(751)、進士に及第。校書郎から藍田県(陝西省藍田県)の県尉を経て、考功郎中に進み、太清宮使・翰林学士に至った。大暦十才子の一人。郎士元とともに「銭郎」と称された。『銭考功集』十巻がある。ウィキペディア【銭起】参照。
上國隨緣住
上国 縁に随いて住す
- 上国 … 中国。夷狄に対して上位の存在という意。ここでは唐を指す。
- 随縁 … 仏縁によって。
- 住 … 居住する。留まり住む。『唐詩三百首注疏』には「住は住持なり」(住住持也)とあり、「住持(住職)となる」と解釈するが、ここでは採らない。『全唐詩』には「一作至、一作去」とある。
來途若夢行
来途 夢行の若し
- 来途 … 唐へ渡ってくる途中。
- 来 … 『全唐詩』には「一作東」とある。
- 夢行 … 夢の中の旅。
- 若 … 「~のごとし」と読み、「~のようだ」と訳す。比較して判断する意を示す。
浮天滄海遠
天に浮かびて滄海遠く
- 浮天 … 船が空の果てに浮かんでいるように。
- 天 … 『全唐詩』には「一作雲」とある。
- 滄海 … 大海。大海原。
去世法舟輕
世を去りて法舟軽し
- 去世 … 俗世を離れる。「世」は中国を指す。
- 法舟 … 僧の乗った船。「法」は仏法。
- 舟 … 『全唐詩』には「一作船」とある。
水月通禪寂
水月 禅寂に通じ
- 水月 … 水の色と月の光。
- 禅寂 … 静かな禅の境地。禅の静寂な境地。
- 寂 … 『全唐詩』では「観」に作る。
魚龍聽梵聲
魚竜 梵声を聴く
- 魚竜 … (海中の)魚と竜。
- 梵声 … (あなたの)読経の声。
惟憐一燈影
惟だ憐れむ 一灯の影
- 惟憐 … ああ、うれしいことは。とりわけ、うれしいことは。ああ、なんとよいことに。
- 一灯 … 衆生を導く仏法のともしび。仏法の教え。ここでは船の灯火にも懸けている。いくつかの注釈書で「禅灯」とするのは誤り。「禅灯」とは、禅の伝灯系譜。いわゆる禅の高僧の系譜のこと。
- 一 … 『全唐詩』には「一作慧」とある。
- 燈 … 『全唐詩』には「一作塔」とある。
- 影 … 光。明かり。
萬里眼中明
万里 眼中に明らかなるを
- 万里 … 万里の彼方まで。
- 眼中 … (あなたの)心眼の中で。
- 明 … 明るく照らし続けるであろう。輝き続けるであろう。
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