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春思二首其一(賈至)

春思二首其一
しゅんしゅ いち
賈至かし
  • 七言絶句。黄・香・長(下平声陽韻)。
  • ウィキソース「春思 (草色青青柳色黃)」参照。
  • 詩題 … 春思は、一説に楽府題。春の思い。
  • この詩は、春の日のやるせない女心を詠んだもの。『淮南子』繆称訓に「しゅんじょおもい、しゅうかなしみて、ものするをる」(春女思、秋士悲、而知物化矣)とある。ウィキソース「淮南子/繆稱訓」参照。
  • 賈至 … 718~772。盛唐の詩人。洛陽(河南省)の人。あざなよう、一説には幼隣ようりんともいう。そうの子。開元二十三年(735)、李頎りき李華りかしょうえいらとともに進士に及第し、さらに天宝十載(751)、明経の科に及第した。ぜん(山東省)の尉をはじめ、起居舎人・知制誥などを歴任。至徳二載(757)、長安に帰って中書舎人となった。のちに岳州(湖南省岳陽市)に流されたが、宝応元年(762)、召還されて中書舎人に復帰した。大暦五年(770)、京兆尹兼御史大夫に進み、右散騎常侍に至って卒した。ウィキペディア【賈至】参照。
草色靑靑柳色黃
草色そうしょく青青せいせいとして柳色りゅうしょくなり
  • 草色 … 草の色。
  • 青青 … 青々としているさま。『詩経』衛風・淇奥に「いくれば、りょくちく青青せいせいたり」(瞻彼淇奧、綠竹靑靑)とある。淇は、川の名。奧は、隈。ウィキソース「詩經/淇奧」参照。また「古詩十九首」(『文選』巻二十九)の第二首に「青青せいせいたるはんくさ鬱鬱うつうつたるえんちゅうやなぎ」(青青河畔草、鬱鬱園中柳)とある。鬱鬱は、さかんに茂っているさま。ウィキソース「青青河畔草」参照。
  • 柳色 … 柳の新芽の色。南朝梁の皇太子蕭綱(のちの簡文帝)「湘東王の名士傾城けいせいよろこぶに和す」詩(『玉台新詠』巻七)に「しょうそう柳色をへだつ、井水せいすい桃紅に照らさる」(妝窗隔柳色、井水照桃紅)とある。妝窗は、美しく飾った窓。ウィキソース「和湘東王名士悅傾城」参照。また、南朝梁の蕭子範「春望古意」詩(『玉台新詠』巻八・宋刻不収)に「春情柳色を寄せ、鳥語梅中に出づ」(春情寄柳色、鳥語出梅中)とある。鳥語は、鳥の鳴き声。ウィキソース「春望古意」参照。
  • 黄 … 黄色い。
桃花歷亂李花香
とう歴乱れきらんとして李花りかかんば
  • 桃花 … 桃の花。南朝梁の蕭子顕「春別四首」(『玉台新詠』巻九)の第四首に「とう李花りかかぜくにまかす」(桃花李花任風吹)とある。李花は、李色に作るテキストもある。ウィキソース「春別 (蕭子顯)」参照。
  • 歴乱 … 花がいっぱいに咲き乱れるさま。陳の後主の楽府「烏棲曲三首」(『楽府詩集』巻四十八)の第一首に「陌頭はくとうしん 歴乱れきらんとしてしょうじ、ようの春鳥 春情を送る」(陌頭新花歷亂生、葉裏春鳥送春情)とある。陌頭は、あぜ道のそば。道ばた。ウィキソース「樂府詩集/048卷」参照。
  • 李花 … すももの花。
東風不爲吹愁去
東風とうふう ためうれいをらず
  • 東風 … 春風。『礼記』がつりょう篇に「もうしゅんつき、……東風とうふうとうき、ちっちゅうはじめてるい、うおこおりのぼり、だつうおまつり、鴻雁こうがんきたる」(孟春之月、……東風解凍、蟄蟲始振、魚上冰、獺祭魚、鴻鴈來)とある。孟春は、春の初め。初春。孟は、初めの意。蟄虫は、冬ごもりしている虫のこと。獺は、かわうそ。獺祭だっさいは、かわうそが獲った魚を食べる前に並べておくこと。ウィキソース「禮記/月令」参照。
  • 東 … 底本では「春」に作るが、諸本により改めた。
  • 不為吹愁去 … 私の愁いを吹き払ってはくれない。
  • 為 … 私のために。
春日偏能惹恨長
しゅんじつ ひとえにうらみをいてなが
  • 春日 … うららかな春の日。『詩経』豳風ひんぷう・七月に「しゅんじつ遅遅ちちたり、はんること祁祁ききたり、女心じょしんしょうす、ねがわくはこうともとつがん」(春日遲遲、采蘩祁祁、女心傷悲、殆及公子同歸)とある。蘩は、しろよもぎ。祁祁は、人の多いこと。及は、与に同じ。「~と」と読む。ウィキソース「詩經/七月」参照。
  • 偏 … あいにくと。人の気も知らないで。南朝陳の徐陵「烏棲曲二首」(『楽府詩集』巻四十八)の第一首に「ひとえにおしろいってこうかおらす」(偏能傅粉復薰香)とある。ウィキソース「樂府詩集/048卷」参照。
  • 惹恨 … 深い嘆きを引き起こす。惹は、引きつける。引き起こす。
  • 長 … 尽きることがない。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百三十五(排印本、中華書局、1960年)
  • 『唐詩品彙』巻四十八([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
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