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春思二首 其二(賈至)

春思二首 其二
しゅんしゅ
賈至かし
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百三十五、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十二(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『唐詩品彙』巻四十八、他
  • 七言絶句。垂・醿・兒(平声支韻)。
  • ウィキソース「春思 (紅粉當壚弱柳垂)」参照。
  • 春思 … 楽府題。春の思い。
  • この詩は、春の日の酒場女の思いを詠んだもの。
  • 賈至 … 718~772。盛唐の詩人。洛陽(河南省)の人。あざなよう、一説には幼隣ようりんともいう。そうの子。開元二十三年(735)、李頎りき李華りかしょうえいらとともに進士に及第し、さらに天宝十載(751)、明経の科に及第した。ぜん(山東省)の尉をはじめ、起居舎人・知制誥などを歴任。至徳二載(757)、長安に帰って中書舎人となった。のちに岳州(湖南省岳陽市)に流されたが、宝応元年(762)、召還されて中書舎人に復帰した。大暦五年(770)、京兆尹兼御史大夫に進み、右散騎常侍に至って卒した。ウィキペディア【賈至】参照。
紅粉當壚弱柳垂
紅粉こうふん あたれば弱柳じゃくりゅう
  • 紅粉 … べに白粉おしろい。ここではべに白粉おしろいをつけた女。
  • 当壚 … 酒場で客の接待をすること。壚は、土を盛りあげて酒甕さかがめを置いたところ。「爐」「鑪」とも書く。当は、壚の正面に立つこと。転じて、客を接待すること。前漢の司馬相如(前179~前117)が富豪の娘卓文君たくぶんくんと駆落ちし、りんきょうの町で飲み屋を開いた。相如は器を洗い、文君は「壚に当って」客に酒をすすめたという故事に基づく。『史記』司馬相如伝に「しょうじょともともりんきょうき、ことごとしゃり、いち酒舎しゅしゃいてさける。しこうして文君ぶんくんをしてあたらしむ。しょうじょみずかとくこんけ、ようとも雑作ざっさくし、ちゅうあらう」(相如與俱之臨邛、盡賣其車騎、買一酒舍酤酒。而令文君當爐。相如身自著犢鼻褌、與保庸雜作、滌器於市中)とある。犢鼻褌は、ふんどし。保庸は、雇い人。雑作は、雑用をすること。ウィキソース「史記/卷117」参照。
  • 弱柳垂 … 店の前には、しなやかな柳の枝が垂れている。
金花臘酒解酴醿
きん臘酒ろうしゅ 酴醿とび
  • 金花 … 黄金色の花。酒の色の形容。
  • 臘酒 … 陰暦十二月に醸造された酒。
  • 酴醿 … 酒の名。唐代、寒食(冬至から百五日目の日。陽暦では四月の初め)の日、宮中で百官にこの酒を賜ったという。
  • 解 … 酒の口を開ける。酒の封を切る。
笙歌日暮能留客
しょう にち かくとど
  • 笙歌 … 笙を吹き、歌を歌って。笙は、管楽器の一つ。十九管または十三管の笛。
  • 日暮 … 日が暮れても。
  • 暮 … 『万首唐人絶句』では「莫」に作る。
  • 能 … 「よく」と読み、「できる」と訳す。可能の意を示す。
  • 留客 … お客を引き止めて。
  • 留 … 『唐詩選』『唐詩品彙』では「畱」に作る。異体字。
醉殺長安輕薄兒
酔殺すいさつす ちょうあん軽薄けいはく
  • 酔殺 … 酒に酔わせる。酔いつぶす。殺は、動詞の下について意味を強める助辞。「忙殺」「悩殺」などと同じ。
  • 軽薄児 … 酒色や博打などにふけって、品行の悪い若者。放蕩者。『後漢書』順陽懐侯嘉伝に「孝孫こうそんもとより謹善きんぜんわかくして親愛しんあいせらる。まさちょうあん軽薄けいはくこれあやまるべきのみ」(孝孫素謹善、少且親愛。當是長安輕薄兒誤之耳)とある。ウィキソース「後漢書/卷14」参照。また、梁の沈約しんやく三月さんがつみっそつとしてへんす」(三月三日率爾成篇)(『文選』巻三十、『文苑英華』巻一百五十七)に「洛陽らくようはんちょうあん軽薄けいはく」(洛陽繁華子、長安輕薄兒)とある。ウィキソース「三月三日率爾成篇」参照。
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