塩州過胡児飲馬泉(李益)
鹽州過胡兒飮馬泉
塩州にて胡児の飲馬泉に過る
塩州にて胡児の飲馬泉に過る
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻五、『全唐詩』巻二百八十三、『文苑英華』巻二百九十九、『唐詩品彙』巻八十七、『唐詩別裁集』巻十四、他
- 七言律詩。煙・泉・天・前・年(平声先韻)。
- ウィキソース「鹽州過胡兒飲馬泉」参照。
- 『全唐詩』には題下に「一作過五原胡兒飲馬泉」とある。『文苑英華』では「過五原至飲馬泉」に作り、「集作鹽州胡兒飲馬泉」とある。
- 塩州 … 今の寧夏省塩池のあたり。ウィキペディア【塩池県】参照。
- 胡児 … 北方の遊牧民族のこども。えびすの若者。
- 飲馬泉 … 馬に水を飲ませる泉。
- 李益 … 748~827?。中唐の詩人。隴西姑蔵(甘粛省武威)の人。字は君虞。大暦四年(769)、進士に及第。鄭県(陝西省)の尉となり、最後は礼部尚書に至った。大暦十才子のひとり。『李君虞詩集』二巻がある。ウィキペディア【李益】参照。
綠楊著水草如煙
緑楊水に著いて 草 煙の如し
- 緑楊 … 緑の柳の枝。
- 著水 … 柳の枝が水面につくこと。
- 著 … 『文苑英華』『唐詩品彙』では「着」に作る。同義。
- 草 … 『文苑英華』では「宛」に作り、「集作草」とある。
舊是胡兒飮馬泉
旧と是れ胡児の飲馬泉
- 旧 … もと。
- 胡児 … えびすの若者。
- 飲馬泉 … 馬に水を飲ませる泉。
幾處吹笳明月夜
幾処か笳を吹く 明月の夜
- 笳 … 胡笳。北方の遊牧民族が用いた楽器。葦の葉を巻いて作った笛。
何人倚劒白雲天
何人か剣に倚る 白雲の天
- 人 … 『文苑英華』では「時」に作る。
- 倚剣 … 剣を杖にして立つこと。
從來凍合關山道
従来凍合す 関山の道
- 凍合 … 泉の水が氷にとざされることと、関山の道がとざされることをかける。
- 関山道 … 関所のある山道。
- 道 … 『全唐詩』『文苑英華』『唐詩品彙』『唐詩別裁集』では「路」に作る。
今日分流漢使前
今日分流す 漢使の前
- 分流 … 泉の水が幾筋にも分かれて流れること。異民族に支配されてきたこの地方に、唐の朝廷の勢力が及んだことを意味する。
- 漢使 … 唐の朝廷の使者。
莫遣行人照容鬢
行人をして容鬢を照らさしむる莫かれ
- 行人 … 旅人。作者自身を指す。
- 容鬢 … 顔と、びんの毛。
- 鬢 … 「髩」「鬂」に作るテキストもある。異体字。
恐驚憔悴入新年
恐らくは憔悴して新年に入るに驚かん
- 憔悴 … やつれ果てること。
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