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塩州過胡児飲馬泉(李益)

鹽州過胡兒飮馬泉
塩(えん)州(しゅう)にて胡児(こじ)の飲(いん)馬(ば)泉(せん)に過(よぎ)る
李(り)益(えき)
  • 七言律詩。煙・泉・天・前・年(下平声先韻)。
  • ウィキソース「鹽州過胡兒飲馬泉」参照。
  • 詩題 … 『全唐詩』には、題下に「一作過五原胡兒飲馬泉」と注する。『文苑英華』では「過五原至飲馬泉」に作り、「集作鹽州胡兒飲馬泉」と注する。
  • 塩州 … 今の寧夏省塩池のあたり。ウィキペディア【塩池県】参照。
  • 胡児 … 北方の遊牧民族のこども。えびすの若者。
  • 飲馬泉 … 馬に水を飲ませる泉。
  • 李益 … 748?~829?。中唐の詩人。隴西(ろうせい)姑(こ)蔵(ぞう)(甘(かん)粛(しゅく)省(しょう)武威(ぶい))の人。字(あざな)は君(くん)虞(ぐ)。大暦四年(769)、進士に及第。鄭県(ていけん)(陝西省渭南市)の尉となり、最後は礼(れい)部(ぶ)尚(しょう)書(しょ)に至った。大暦十才子の一人。『李君虞詩集』二巻がある。ウィキペディア【李益】参照。
綠楊著水草如煙
緑(りょく)楊(よう)水(みず)に著(つ)いて 草(くさ) 煙(けむり)の如(ごと)し
  • 緑楊 … 緑の柳の枝。
  • 著水 … 柳の枝が水面につくこと。
  • 草 … 『文苑英華』では「宛」に作り、「集作草」と注する。
舊是胡兒飮馬泉
旧(も)と是(こ)れ胡児(こじ)の飲(いん)馬(ば)泉(せん)
  • 旧 … もと。
  • 胡児 … えびすの若者。
  • 飲馬泉 … 馬に水を飲ませる泉。
幾處吹笳明月夜
幾処(いくしょ)か笳(か)を吹(ふ)く 明月(めいげつ)の夜(よる)
  • 笳 … 胡笳。北方の遊牧民族が用いた楽器。葦(あし)の葉を巻いて作った笛。
何人倚劒白雲天
何人(なんぴと)か剣(けん)に倚(よ)る 白雲(はくうん)の天(てん)
  • 人 … 『文苑英華』では「時」に作る。
  • 倚剣 … 剣を杖にして立つこと。
從來凍合關山道
従(じゅう)来(らい)凍合(とうごう)す 関山(かんざん)の道(みち)
  • 凍合 … 泉の水が氷にとざされることと、関山の道がとざされることをかける。
  • 関山道 … 関所のある山道。
今日分流漢使前
今日(こんにち)分(ぶん)流(りゅう)す 漢(かん)使(し)の前(まえ)
  • 分流 … 泉の水が幾筋にも分かれて流れること。異民族に支配されてきたこの地方に、唐の朝廷の勢力が及んだことを意味する。
  • 漢使 … 唐の朝廷の使者。
莫遣行人照容鬢
行人(こうじん)をして容鬢(ようびん)を照(て)らさしむる莫(な)かれ
  • 行人 … 旅人。作者自身を指す。『詩経』斉風・載駆に「汶水(ぶんすい)湯湯(しょうしょう)たり、行人彭彭(ほうほう)たり」(汶水湯湯、行人彭彭)とある。汶水は、山東省泰山の東北を流れる川の名。斉と魯の国境付近にあり、汶河ともいう。湯湯は、水が盛んに流れるさま。彭彭は、道行く人の多いこと。ウィキソース「詩經/載驅」参照。また、前漢の李陵「蘇武に与うる詩」(『文選』巻二十九)の第二首に「行人往路を懐(おも)う、何を以てか我が愁いを慰(なぐさ)めん」(行人懷往路、何以慰我愁)とある。ウィキソース「與蘇武 (嘉會難再遇)」参照。
  • 容鬢 … 顔と、びんの毛。
恐驚憔悴入新年
恐(おそ)らくは憔(しょう)悴(すい)して新年(しんねん)に入(い)るに驚(おどろ)かん
  • 憔悴 … やつれ果てること。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻五(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百八十三(排印本、中華書局、1960年)
  • 『文苑英華』巻二百九十九(影印本、中華書局、1966年)
  • 『唐詩品彙』巻八十七([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻十四([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
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