汴河曲(李益)
汴河曲
汴河の曲
汴河の曲
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻二百八十三、『李益集』巻下(『唐五十家詩集』所収)、『唐詩品彙』巻五十一、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十五(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『唐詩別裁集』巻二十、『御覧詩』、他
- 七言絶句。春・塵・人(平声真韻)。
- ウィキソース「汴河曲」参照。
- 詩題 … 『御覧詩』では「隋堤に上る」(上隋堤)に作る。
- 汴河曲 … 新楽府題。汴河は、川の名。黄河と淮水とをつなぐ運河。汴水・汴渠とも呼ばれ、南北交通の要路であった。隋の煬帝は大業年間(605~618)、この川の岸に堤防を築き、楊柳を植え、四十箇所余りの離宮を置いて行楽の地とした。汴河曲は、隋堤の柳を題材として、懐古の情を詠じた歌曲。
- この詩は、隋の滅亡を悼んで作ったもの。
- 李益 … 748~827?。中唐の詩人。隴西姑蔵(甘粛省武威)の人。字は君虞。大暦四年(769)、進士に及第。鄭県(陝西省)の尉となり、最後は礼部尚書に至った。大暦十才子のひとり。『李君虞詩集』二巻がある。ウィキペディア【李益】参照。
汴水東流無限春
汴水東流す 無限の春
- 汴水 … 汴河・汴渠と同じ。『唐詩品彙』では「汴河」に作る。『御覧詩』では「碧水」に作る。
- 東流 … 東へと流れて行く。
- 無限春 … 辺りは限りない春の色に満ちている。
隋家宮闕已成塵
隋家の宮闕 已に塵と成る
- 隋家宮闕 … 隋の煬帝が築いた離宮。
- 宮闕 … 本来は宮殿の意であるが、ここでは隋帝の離宮を指す。
- 闕 … 『全唐詩』には「一作苑」とある。『御覧詩』では「苑」に作る。
- 已成塵 … すでに荒廃して塵となってしまった。
- 已 … 『全唐詩』には「一作盡」とある。『御覧詩』では「盡」に作る。
行人莫上長堤望
行人 長堤に上って望むこと莫かれ
- 行人 … 道行く人。旅人。
- 人 … 『御覧詩』では「時」に作る。
- 長堤 … 運河沿いに築かれた長い堤。
- 堤 … 『万首唐人絶句』『唐詩別裁集』では「隄」に作る。同義。
- 莫~望 … 眺めてはいけない。
風起楊花愁殺人
風起って 楊花 人を愁殺せん
- 風起 … 風が吹き起こって。
- 風 … 『全唐詩』には「一作吹」とある。『御覧詩』では「吹」に作る。
- 楊花 … 楊柳の花。白い綿毛が飛ぶ。
- 愁殺人 … 見る人を深い悲しみに沈ませるであろうから。
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