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汴河曲(李益)

汴河曲
汴(べん)河(が)の曲(きょく)
李(り)益(えき)
  • 七言絶句。春・塵・人(上平声真韻)。
  • ウィキソース「汴河曲」参照。
  • 詩題 … 『御覧詩』では「隋堤(ずいてい)に上(のぼ)る」(上隋堤)に作る。
  • 汴河曲 … 新楽府題の一つ。汴河は、川の名。黄河と淮水(わいすい)とをつなぐ運河。汴水(べんすい)・汴渠(べんきょ)とも呼ばれ、南北交通の要路であった。隋の煬帝(ようだい)は大業年間(605~618)、この川の岸に堤防を築き、楊柳を植え、四十箇所余りの離宮を置いて行楽の地とした。汴河曲は、隋堤の柳を題材として、懐古の情を詠じた歌曲。
  • この詩は、隋の滅亡を悼んで作ったもの。
  • 李益 … 748?~829?。中唐の詩人。隴西(ろうせい)姑(こ)蔵(ぞう)(甘(かん)粛(しゅく)省(しょう)武威(ぶい))の人。字(あざな)は君(くん)虞(ぐ)。大暦四年(769)、進士に及第。鄭県(ていけん)(陝西省渭南市)の尉となり、最後は礼(れい)部(ぶ)尚(しょう)書(しょ)に至った。大暦十才子の一人。『李君虞詩集』二巻がある。ウィキペディア【李益】参照。
汴水東流無限春
汴水(べんすい)東(とう)流(りゅう)す 無(む)限(げん)の春(はる)
  • 汴水 … 「汴(べん)河(が)」「汴渠(べんきょ)」に同じ。『唐詩品彙』では「汴河」に作る。『御覧詩』では「碧水」に作る。
  • 東流 … 東へと流れて行く。
  • 無限春 … 辺りは限りない春の色に満ちている。
隋家宮闕已成塵
隋(ずい)家(か)の宮(きゅう)闕(けつ) 已(すで)に塵(ちり)と成(な)る
  • 隋家宮闕 … 隋の煬帝(ようだい)が築いた離宮。
  • 宮闕 … 本来は宮殿の意であるが、ここでは隋帝の離宮を指す。
  • 闕 … 『全唐詩』には「一作苑」と注する。『御覧詩』では「苑」に作る。
  • 已成塵 … すでに荒廃して塵となってしまった。
  • 已 … 『全唐詩』には「一作盡」と注する。『御覧詩』では「盡」に作る。
行人莫上長堤望
行人(こうじん) 長(ちょう)堤(てい)に上(のぼ)って望(のぞ)むこと莫(な)かれ
  • 行人 … 道行く人。旅人。『詩経』斉風・載駆に「汶水(ぶんすい)湯湯(しょうしょう)たり、行人彭彭(ほうほう)たり」(汶水湯湯、行人彭彭)とある。汶水は、山東省泰山の東北を流れる川の名。斉と魯の国境付近にあり、汶河ともいう。湯湯は、水が盛んに流れるさま。彭彭は、道行く人の多いこと。ウィキソース「詩經/載驅」参照。また、前漢の李陵「蘇武に与うる詩」(『文選』巻二十九)の第二首に「行人往路を懐(おも)う、何を以てか我が愁いを慰(なぐさ)めん」(行人懷往路、何以慰我愁)とある。ウィキソース「與蘇武 (嘉會難再遇)」参照。
  • 人 … 『御覧詩』では「時」に作る。
  • 長堤 … 運河沿いに築かれた長い堤。
  • 莫~望 … 眺めてはいけない。
風起楊花愁殺人
風(かぜ)起(おこ)って 楊(よう)花(か) 人(ひと)を愁(しゅう)殺(さつ)せん
  • 風起 … 風が吹き起こって。
  • 風 … 『全唐詩』には「一作吹」と注する。『御覧詩』では「吹」に作る。
  • 楊花 … 楊柳の花。白い綿毛が飛ぶ。柳(りゅう)絮(じょ)。北周の庾信「春の賦」(『六朝文絜』巻一)に「新年の鳥声 千種に囀(さえず)り、二月の楊花 路(みち)に満ちて飛ぶ」(新年鳥聲千種囀、二月楊花滿路飛)とある。ウィキソース「春賦 (庾信)」参照。
  • 愁殺人 … 見る人を深い悲しみに沈ませるであろうから。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百八十三(排印本、中華書局、1960年)
  • 『李益集』巻下(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十五(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十一([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻二十([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『御覧詩』(傅璇琮編撰『唐人選唐詩新編』、陝西人民教育出版社、1996年)
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