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夜上受降城聞笛(李益)

夜上受降城聞笛
夜(よる)、受降(じゅこう)城(じょう)に上(のぼ)りて笛(ふえ)を聞(き)く
李(り)益(えき)
  • 七言絶句。霜・郷(下平声陽韻)。
  • ウィキソース「夜上受降城聞笛」「唐詩紀事 (四部叢刊本)/卷第三十」参照。
  • 詩題 … 『唐五十家詩集本』では「夜上受降城聞筦」に作る。『文苑英華』では「聞笛」に作る。『楽府詩集』では「婆羅門」(作者不明)に作る。
  • 受降城 … 漢の武帝の時、将軍公孫(こうそん)敖(ごう)が匈奴の降伏を受けるために築いた城。今の内蒙古自治区包頭(パオトウ)市の西北にあった。唐代の初め、突厥の侵入を防ぐため、将軍張(ちょう)仁愿(じんげん)がこれを再興して東・中・西の三つの受降城に分けたという。この詩の受降城はそのいずれを指すかはっきりしない。
  • 李益 … 748?~829?。中唐の詩人。隴西(ろうせい)姑(こ)蔵(ぞう)(甘(かん)粛(しゅく)省(しょう)武威(ぶい))の人。字(あざな)は君(くん)虞(ぐ)。大暦四年(769)、進士に及第。鄭県(ていけん)(陝西省渭南市)の尉となり、最後は礼(れい)部(ぶ)尚(しょう)書(しょ)に至った。大暦十才子の一人。『李君虞詩集』二巻がある。ウィキペディア【李益】参照。
囘樂峯前沙似雪
回楽峰(かいらくほう)前(ぜん) 沙(すな) 雪(ゆき)に似(に)たり
  • 回楽峰 … 受降城の近くにあった山。霊州(寧夏回族自治区霊武の西南)の回楽県にある山とする説があるが、三つの受降城のどれからも遠い。また山西省大同の西にある山という説もあり、こちらは東受降城の西に位置し近い。
  • 峯 … 『全唐詩』には「一作烽」と注する。『唐五十家詩集本』では「烽」に作る。
  • 沙 … 砂漠の砂。
  • 似雪 … 雪のように白く輝いている。
受降城外月如霜
受降(じゅこう)城(じょう)外(がい) 月(つき) 霜(しも)の如(ごと)し
  • 外 … 『唐詩紀事』では「下」に作る。『全唐詩』では「下」に作り、「一作上。一作外」と注する。『唐五十家詩集本』では「上」に作る。
  • 月 … 月光。
  • 如霜 … 白く照らされて、霜が降りたようである。
不知何處吹蘆管
知(し)らず 何(いず)れの処(ところ)にか蘆(ろ)管(かん)を吹(ふ)く
  • 不知何処 … どこで吹いているのかわからない。
  • 蘆管 … あしの茎で作った笛。胡笳(こか)のことであるともいう。
  • 管 … 『全唐詩』には「一作笛」と注する。
一夜征人盡望郷
一(いち)夜(や) 征人(せいじん) 尽(ことごと)く郷(きょう)を望(のぞ)む
  • 一夜 … 今晩。今夜。夜どおし。
  • 征人 … 遠征の兵士。
  • 望郷 … 故郷の空を眺めやる。「古詩十九首」(『文選』巻二十九)の第六首に「還(かん)顧(こ)して旧郷を望めば、長路漫(まん)として浩浩たらん」(還顧望舊郷、長路漫浩浩)とある。還顧は、振り返って見ること。旧郷は、故郷に同じ。漫は、遠いさま。浩浩は、広々として果てしないさま。ウィキソース「涉江採芙蓉」参照。また、南朝斉の謝朓「晩に三山に登り、京邑(けいゆう)を還望す」詩(『文選』巻二十七)に「情有りて郷を望むを知る、誰か能く鬒(くろかみ)変ぜざらんや」(有情知望郷、誰能鬒不變)とある。京邑は、都。ウィキソース「昭明文選/卷27」参照。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻七(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻二百八十三(排印本、中華書局、1960年)
  • 『李益集』巻下(明銅活字本、『唐五十家詩集』所収、上海古籍出版社、1989年)
  • 『唐詩三百首注疏』巻六下・七言絶句(廣文書局、1980年)
  • 『楽府詩集』巻八十・近代曲辞(北京図書館蔵宋刊本影印、中津濱渉『樂府詩集の研究』所収)
  • 『文苑英華』巻二百十二(影印本、中華書局、1966年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十五(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
  • 『唐詩品彙』巻五十一([明]高棅編、[明]汪宗尼校訂、上海古籍出版社、1982年)
  • 『唐詩別裁集』巻二十([清]沈徳潜編、乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
  • 『唐詩紀事』巻三十([宋]計有功輯撰、上海古籍出版社、1987年)
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