陸勝宅秋雨中探韻同前(張南史)
陸勝宅秋雨中探韻同前
陸勝の宅にて秋雨中、韻を探る同前
陸勝の宅にて秋雨中、韻を探る同前
- 七言律詩。將・疆・觴・霜・楊(平声陽韻)。
- 『全唐詩』巻296所収。
- 『全唐詩』では詩題が「陸勝の宅にて、秋暮、雨中に韻を探り、同じく作る」(陸勝宅秋暮雨中探韻同作)となっている。
- 陸勝 … 人物については不明。「勝」は『全唐詩』に「一作瑛」とある。
- 探韻 … 陸勝の家に集まった人々が、くじ引きで引き当てた文字を韻として詩を作った。
- 同前 … 席上、誰かが詩を作ったあと、続けて同じ題の詩を作ること。
- 張南史 … 生没年不詳。中唐の詩人。幽州(北京)の人。字は季直。ウィキペディア【張南史】参照。
同人永日自相將
同人 永日 自ずから相将い
- 同人 … 同じ志をもつ仲間。
- 永日 … 一日中。
- 自相将 … 自然に連れ立って集まること。
深竹閒園偶辟疆
深竹 間園 辟疆に偶す
- 深竹 … 深い竹林。
- 間園 … 静かな庭園。
- 辟疆 … 晋の顧辟疆。名園の所有者として有名。ここでは陸勝にたとえる。
- 偶 … 対座する。
已被秋風教憶鱠
已に秋風に鱠を憶わ教められ
- 憶鱠 … 鱠は魚肉を生のまま細かく切って、酢にひたした料理。西晋の張翰が北の洛陽に入って斉王に仕えていたが、秋風の吹くのを見るにつけ、故郷呉(江蘇省)の鱸魚の鱠や、蓴菜の羹(吸い物)の味を思い出し、官を捨てて故郷へ帰ったという故事を踏まえる。ウィキペディア【張翰 (晋)】参照。
更聞寒雨勸飛觴
更に寒雨の觴を飛ばさんと勧むるを聞く
- 寒雨 … 冷たい秋雨。
- 飛觴 … 杯を廻すこと。
歸心莫問三江水
帰心問う莫かれ 三江の水
- 帰心 … 故郷に帰りたいと思う心。
- 三江 … 張翰の故郷の松江・婁江・東江をさす。
旅服從沾九日霜
旅服沾すに従す 九日の霜
- 旅服 … 旅の衣。
- 従沾 … 濡らすがままにまかせよう。
- 從 … 『全唐詩』では「徒」に作り、「一作從」とある。
- 九日 … 陰暦九月九日、重陽の節句。
- 日 … 『全唐詩』には「一作月」とある。
醉裏欲尋騎馬路
酔裏尋ねんと欲す 騎馬の路
- 酔裏 … 酔った状態になりながら。
- 騎馬路 … 馬に乗って帰る道。
蕭條是處有垂楊
蕭条として是の処に垂楊有り
- 蕭条 … 物寂しいさま。『楚辞』の「遠遊」に「山は蕭条として獣無く、野は寂漠として其れ人無し」(山蕭條而無獸兮、野寂漠其無人)とある。ウィキソース「楚辭/遠遊」参照。
- 是処 … 『全唐詩』では「幾処」に作る。
- 垂楊 … しだれやなぎ。
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