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野望(王績)

野望
野(や)望(ぼう)
王績(おうせき)
  • 五言律詩。依・暉・歸・薇(上平声微韻)。
  • ウィキソース「野望 (王績)」参照。
  • 野望 … 野原のながめ。
  • 王績 … 585~644。初唐の詩人。絳(こう)州(しゅう)竜門(山西省河(か)津(しん)県)の人。字(あざな)は無功。隋の王通(おうとう・おうつう、文中子)の弟。『東皐(とうこう)子(し)集』3巻がある。ウィキペディア【王績】参照。
東皐薄暮望
東皐(とうこう) 薄(はく)暮(ぼ)に望(のぞ)み
  • 東皐 … 東の丘。皐は、本来は沢(さわ)の意であるが、ここでは沢の周囲の小高い所を指す。
  • 薄暮 … 日暮れが迫る頃。三国魏の武帝(曹操)の楽府「苦寒行」(『文選』巻二十七、『楽府詩集』巻三十三)に「迷惑して故路を失い、薄暮に宿栖する無し」(迷惑失故路、薄暮無宿栖)とある。故路は、もと来た道。ウィキソース「昭明文選/卷27」参照。
徙倚欲何依
徙倚(しい) 何(いず)くに依(よ)らんと欲(ほっ)する
  • 徙倚 … さまよい歩く。うろうろする。
  • 欲何依 … どこに身を落ちつけようというのだろう。
樹樹皆秋色
樹樹(じゅじゅ) 皆(みな) 秋色(しゅうしょく)
  • 樹樹 … 木々。
  • 秋色 … 黄葉して秋らしい色になること。南朝斉の謝朓「三湖を望む」詩に「葳(い)蕤(ずい)として 向(さき)には春秀(しゅんしゅう)なるも、芸黄(うんこう)として 共に秋色なり」(葳蕤向春秀、芸黄共秋色)とある。葳蕤は、草木の勢いが盛んなさま。春秀は、春の花や草木の若々しさ。芸黄は、草木が枯れること。ウィキソース「古詩紀 (四庫全書本)/卷071」参照。また、北周の王褒の楽府「関山月」(『楽府詩集』巻二十三)に「関山 夜月明るく、秋色 孤城を照らす」(關山夜月明、秋色照孤城)とある。こちらの秋色は、月の光を指す。ウィキソース「樂府詩集/023卷」参照。
  • 秋 … 『全唐詩』には「一作春」と注する。
山山惟落暉
山山(やまやま) 惟(ただ) 落(らっ)暉(き)
  • 落暉 … 沈む太陽の光。
牧人驅犢返
牧人(ぼくじん) 犢(こうし)を駆(か)って返(かえ)り
  • 牧人 … 牛飼い。
  • 犢 … 子牛。
獵馬帶禽歸
猟(りょう)馬(ば) 禽(きん)を帯(お)びて帰(かえ)る
  • 猟馬 … 猟に用いる馬。
  • 禽 … 鳥や獣。禽獣。
  • 帯 … 鞍にくくりつけて。
相顧無相識
相(あい)顧(かえり)みるに相識(そうしき)無(な)く
  • 相顧 … あたりを見まわしても。ここでの「相」は語勢を添える助辞で、「互いに~」の意はない。
  • 相識 … 知り合い。
長歌懷采薇
長(ちょう)歌(か) 采(さい)薇(び)を懐(おも)う
  • 長歌 … (采薇の歌を)声を長く引き伸ばして歌うこと。
  • 采薇 … 伯夷と叔斉は、周の武(ぶ)王が殷の紂(ちゅう)王を討とうとしたのを諫めたが聞き入れられなかった。彼らは周に仕えることを恥じ、「周の粟(ぞく)を食(は)まず」と誓って首陽山に隠れて薇(わらび)を采(と)って食べ、ついには餓死したという故事。「采薇の歌」は彼らが餓死するときに作ったといわれる歌。ウィキペディア【伯夷・叔斉】参照。
  • 懐 … 思い出される。
テキスト
  • 『箋註唐詩選』巻三(『漢文大系 第二巻』、冨山房、1910年)※底本
  • 『全唐詩』巻三十七(排印本、中華書局、1960年)
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