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代悲白頭翁 (劉希夷) (廷芝)

代悲白頭翁
白頭はくとうかなしむおきなかわる)
りゅう希夷きいてい)     
  • 七言古詩。花・家(平声麻韻)、色・息(入声職韻)、改・在・海(上声賄韻)、東・風・同・翁(平声東韻)、年・前・仙・邊(平声先韻)、時・絲・悲(平声支韻)。
  • 『全唐詩』巻82所収。ウィキソース「代悲白頭吟」参照。
  • 代悲白頭翁 … 白髪になった身を嘆く老人に代わってその気持ちを詠じた詩。「代」とは古い歌の替え歌という意味。『全唐詩』には題下に「一作白頭吟」との注がある。「白頭吟」は楽府題。なお、同じ詩が『古文真宝前集』に宋之問「有所思」として見える。
  • 劉廷芝 … 劉希夷きい。651~679?。初唐の詩人。あざなは庭芝、または廷芝。一説に名は庭芝、字が希夷とも。ウィキペディア【劉希夷】参照。
洛陽城東桃李花
洛陽らくようじょうとう とうはな
  • 洛陽 … 今の河南省洛陽市。唐代の副都として栄えた。東都とも呼ばれた。ウィキペディア【洛陽市】参照。
  • 城東 … 町の東側。
  • 東 … 『文苑英華』では「中」に作る。
  • 桃李 … 桃とスモモ。
飛來飛去落誰家
きたっていえにかつる
  • 落誰家 … 誰の家に落ちてゆくのだろうか。
洛陽女兒惜顏色
洛陽らくようじょ がんしょくしみ
  • 洛陽 … 『古文真宝前集』では「幽閨」に作る。『文苑英華』には「一作幽閨」との注がある。
  • 女児 … 若い娘たち。年頃の娘たち。日本語の「女児」の意ではない。『古文真宝前集』では「児女」に作る。
  • 惜 … 容色が衰えてゆくのを残念がる。『全唐詩』『文苑英華』では「好」に作る。
  • 顔色 … 若々しい顔かたち。容色。「かおいろ」の意ではない。
行逢落花長歎息
行〻ゆくゆくらっいてちょう歎息たんそく
  • 行 … 道を歩きながら。
  • 行逢 … 『全唐詩』では「坐見」に作り、「一作行逢」との注がある。
  • 長歎息 … 長いため息をつく。
今年花落顏色改
今年こんねん はなちてがんしょくあらたまり
  • 花落顔色改 … 花が散り、人の容色も衰えてゆく。
  • 落 … 『文苑英華』では「開」に作る。
明年花開復誰在
明年みょうねん はなひらいてたれ
  • 明年花開 … 来年またこの花が咲く頃には。
  • 復誰在 … 誰がまた健在でここにいるだろうか。
已見松柏摧爲薪
すでる しょうはくくだかれてたきぎるを
  • 已見 … 私は見たことがある。
  • 松柏摧為薪 … いつまでも緑の変わらない松や柏も切り倒されて薪となる。変わらないと思われるものも、ついには滅びることのたとえ。「古詩十九首」(『文選』巻二十九)の中の「古墓こぼかれて田と為り、しょうはくくだかれてたきぎと為る」(古墓犁爲田、松柏摧爲薪)に基づく。
更聞桑田變成海
さらく 桑田そうでんへんじてうみるを
  • 更聞 … さらにまた、こういうことも聞いている。
  • 桑田変成海 … 桑畑であった所が海に変わる。世の移り変わりが激しいことのたとえ。
古人無復洛城東
じん らくじょうひがし
  • 古人 … 昔の人。散りゆく花を見ながら自分の容姿が衰えてゆくのを嘆いた昔の人。
  • 無復洛城東 … もはや洛陽の町の東にいない。また、「復」を「かえる」と動詞に読み、「洛城の東にかえる無く」と訓読し、「もはや洛陽の町の東に戻ってはこない」と訳すこともできる。
  • 城 … 『文苑英華』では「陽」に作る。
今人還對落花風
今人こんじん たいす らっかぜ
  • 今人 … 今の人。
  • 人 … 『文苑英華』では「日」に作る。
  • 還 … やはりまた。
  • 対落花風 … 散りゆく花を飛ばす風の前に立っている。古人と同じく、容姿の衰えを嘆いている。
年年歳歳花相似
年年ねんねん歳歳さいさい はなあいたり
  • 年年歳歳 … 毎年毎年。来る年来る年。
  • 花相似 … 花は同じように咲く。
歳歳年年人不同
歳歳さいさい年年ねんねん ひとおなじからず
  • 歳歳年年 … 年年歳歳と同じ。
  • 人不同 … 花を眺める人は毎年変わってゆく。
寄言全盛紅顏子
げんす 全盛ぜんせい紅顔こうがん
  • 寄言 … 聞きなさい。呼びかけの冒頭におく言葉。
  • 紅顔子 … 「年若く元気な少年」という解釈が多いが、ここでは第三句の「洛陽の女児」を指すと思われるので「若く美しい娘さん」と解釈しておく。
應憐半死白頭翁
まさあわれむべし はん白頭翁はくとうおう
  • 応憐 … 当然憐れむべきだ。
  • 応 … 「まさに~すべし」と読み、「当然~するべきだ」と訳す。『古文真宝前集』『楽府詩集』等では「須」に作る。
  • 半死 … 死にかかっている。
  • 白頭翁 … 白髪の老人。
此翁白頭眞可憐
おう 白頭はくとう しんあわれむべし
  • 真可憐 … ほんとうに気の毒だ。
伊昔紅顏美少年
むかし 紅顔こうがんしょうねん
  • 伊 … 下のものを強調する語。これぞ。この人こそ。
  • 伊昔 … 『文苑英華』では「憶惜」に作る。
公子王孫芳樹下
こう王孫おうそん 芳樹ほうじゅもと
  • 公子王孫 … 貴族の子弟。
  • 芳樹 … 花の咲いている木。
清歌妙舞落花前
せいみょうす らっまえ
  • 清歌妙舞 … 澄んだ美しい歌と、見事な舞い。
光祿池臺開錦繡
光禄こうろくだい きんしゅうひら
  • 光禄池台 … 前漢の光禄こうろくたい(官名。天子の顧問)王根おうこんは池の中に豪奢な楼台を築いたという故事。立派な邸宅のこと。
  • 開 … 『古文真宝前集』『文苑英華』『楽府詩集』等では「文」に作る。
  • 開錦繡 … 錦のとばりをひろげる。
將軍樓閣畫神仙
将軍しょうぐん楼閣ろうかく 神仙しんせんえが
  • 将軍楼閣画神仙 … 「将軍」とは後漢の大将軍りょうのこと。「楼閣」は梁冀の豪華な屋敷を指す。梁冀は大将軍となって豪華な屋敷を建て、部屋の壁に神や仙人の姿を描かせ、不老不死の身になろうとしたという。『後漢書』梁冀伝に見える故事。ウィキペディア【梁冀】参照。
一朝臥病無相識
いっちょう やまいして相識そうしき
  • 一朝 … ひとたび。いったん。ある日。
  • 相 … 『楽府詩集』では「人」に作る。
  • 相識 … 知人。友人。
  • 無 … 尋ねて来なくなる。寄りつかなくなる。
三春行樂在誰邊
さんしゅん行楽こうらく へんにか
  • 三春 … 陰暦の春三か月のこと。もう春(陰暦正月)・ちゅう春(陰暦二月)・春(陰暦三月)をいう。
  • 行楽 … 山野などに出かけて遊び楽しむこと。
  • 樂 … 『文苑英華』では「落」に作る。
  • 在誰辺 … 誰のところへ行ってしまったのか。
宛轉蛾眉能幾時
宛転えんてんたる蛾眉がび 幾時いくとき
  • 宛転 … 眉が美しく曲がっているさま。
  • 蛾眉 … 三日月形の美しい女性の眉。
  • 能幾時 … いつまでその美しさを保てるのか。
須臾鶴髮亂如絲
しゅにして鶴髪かくはつ みだれていとごと
  • 須臾 … ほんのわずかの時間。すぐに。たちまち。あっという間に。
  • 鶴 … 『楽府詩集』では「白」に作る。
  • 鶴髪 … 鶴の羽のような白い髪。白髪のたとえ。
  • 乱如糸 … 白髪が糸のようにほつれ、老女のようになる。
但看古來歌舞地
る らい 歌舞かぶ
  • 但看 … 見ると。見れば。「但だ看よ」とも訓読できる。こちらは「見給え」という意味になる。
  • 古 … 『楽府詩集』では「舊」に作る。
  • 古来 … 昔から。
  • 歌舞地 … 歌と舞いでにぎわっていた所。
  • 古来歌舞地 … 北周のしん(513~581)の「人に代りて往をいたむ 其二」に「雑樹もと唯だ金谷苑、諸花もと満つ洛陽城、正に是れ古来歌舞の処、今日看る時地の行くべき無し」(雜樹本唯金谷苑、諸花舊滿洛陽城、正是古來歌舞處、今日看時無地行)とある。
惟有黄昏鳥雀悲
黄昏こうこん 鳥雀ちょうじゃくかなしむるのみ
  • 黄昏 … たそがれ。夕方
  • 鳥雀 … 雀などの小鳥。
  • 悲 … 悲しげにさえずるばかりだ。『文苑英華』では「飛」に作り、「一作悲」との注がある。
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
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