>   漢詩   >   唐詩選   >   巻六 五絶   >   易水送別(駱賓王)

易水送別(駱賓王)

易水送別
易水えきすい送別そうべつ
らく賓王ひんのう
  • 五言絶句。丹・冠・寒(平声寒韻)。
  • 『全唐詩』巻79所収。ウィキソース「於易水送人」参照。
  • 易水 … 河北省易県えきけんを源とする川。大清河に合流する。
  • 詩題 … 『全唐詩』『唐五十家詩集本』等では「易水に於いて人を送る」(於易水送人)に作る。『四部叢刊本』『万首唐人絶句』では「易水にて人を送る」(易水送人)に作る。
  • この詩は、易水のほとりで人を見送ったときのものである。その昔、けいえんの太子たんの命を受けて、秦王せい(のちの秦の始皇帝)を暗殺しようとした時、太子一行は白装束に身をまとい、易水のほとりで荊軻を見送った。荊軻は「風蕭々しょうしょうとして易水寒く、壮士ひとたび去ってかえらず」と歌った。人々はみな目をいからし、髪の毛が逆立って冠をつき上げんばかりであったという。この故事を思い浮かべながら作った作品。ウィキペディア【荊軻】参照。
  • 駱賓王 … 640?~684?。初唐の詩人。しゅう義烏ぎう(浙江省義烏県)の人。あざなは未詳。武功(陝西省武功県)を経て長安(陝西省)の主簿を歴任したが、臨海(浙江省臨海県)のじょうに左遷された。684年、徐敬業の乱に加わり、檄文を草した。武后はこれを読んでその才に感嘆し、彼を重用しなかったことを悔いたという。王勃・楊炯・盧照鄰とともに初唐の四傑の一人。ウィキペディア【駱賓王】参照。
此地別燕丹
 燕丹えんたんわか
  • 此地 … 易水のほとりを指す。
  • 燕丹 … 戦国時代、えんの太子たん。ウィキペディア【燕太子丹】参照。
  • 別 … 荊軻が太子丹と別れる。
壯士髮衝冠
そう はつ かんむり
  • 壮士 … 勇士。荊軻を指す。荊軻を見送る人とする説や、荊軻と彼を見送る人とする説もある。平野彦次郎『唐詩選研究』(明徳出版社、昭和49年)では「この詩では荊軻のこととしなければ、精神が貫徹しない」と言っている。
  • 壯士髮 … 『四部叢刊本』等では「壯髮上」に作る。この場合、「壮髪のぼりて冠を衝く」と読む。『全唐詩』には「一作壯髮上」とある。
  • 髪衝冠 … 悲憤慷慨のあまり、髪の毛が逆立って冠をつくこと。
昔時人已沒
せき ひとすでぼっ
  • 昔時人 … その時の人々。主に荊軻を指す。
  • 没 … いない。死んでいる。
今日水猶寒
今日こんにち みずさむ
  • 今日 … 作者が易水のほとりで人を見送った日を指す。
  • 水 … 易水の水。
  • 猶 … 昔と変わることなく、今もなお。
  • 寒 … 寒々と流れている。
歴代詩選
古代 前漢
後漢
南北朝
初唐 盛唐
中唐 晩唐
北宋 南宋
唐詩選
巻一 五言古詩 巻二 七言古詩
巻三 五言律詩 巻四 五言排律
巻五 七言律詩 巻六 五言絶句
巻七 七言絶句
詩人別
あ行 か行 さ行
た行 は行 ま行
や行 ら行