客亭(杜甫)
客亭
客亭
客亭
- 五言律詩。風・中・翁・蓬(平声東韻)。
- ウィキソース「全唐詩/卷227」参照。
- 客亭 … 宿屋。旅館。宝応元年(762)、作者五十一歳、梓州(今の四川省綿陽市三台県)での作。
- 杜甫 … 712~770。盛唐の詩人。襄陽(湖北省)の人。字は子美。祖父は初唐の詩人、杜審言。若い頃、科挙を受験したが及第できず、各地を放浪して李白らと親交を結んだ。安史の乱では賊軍に捕らえられたが、やがて脱出し、新帝粛宗のもとで左拾遺に任じられた。その翌年左遷されたため官を捨てた。四十八歳の時、成都(四川省成都市)の近くの浣花渓に草堂を建てて四年ほど過ごしたが、再び各地を転々とし一生を終えた。中国最高の詩人として「詩聖」と呼ばれ、李白とともに「李杜」と並称される。『杜工部集』がある。ウィキペディア【杜甫】参照。
秋窗猶曙色
秋窓 猶お曙色
- 秋窓 … 秋の窓辺。
- 曙色 … 夜明けの色。
落木更天風
落木 更に天風
- 落木 … 葉の落ちた寂しげな木。『全唐詩』『銭注本』『詳注本』には「一に木落に作る」(一作木落)とある。『杜陵詩史』『分門集注本』『草堂詩箋補遺』『唐詩品彙』『瀛奎律髄刊誤』では「木落」に作る。
- 天風 … 空を吹く風。
- 天 … 『宋本』には「一に高と云う」(一云高)とある。『全唐詩』『九家集注本』『草堂詩箋補遺』『銭注本』『鏡銓本』には「一に高に作る」(一作高)とある。『杜陵詩史』『分門集注本』には「(王)洙曰く、一に高に作る」(洙曰一作高)とある。『詳注本』『心解本』では「高」に作り、「一に天に作る」(一作天)とある。「高風」は、空の高い所を吹く風。強い風。
- 落木更天風 … 『文苑英華』では「落木更高風」に作り、「集に木落更高風に作る」(集作木落更高風)とある。
日出寒山外
日は出づ 寒山の外
- 寒山 … 寒々とした山。
江流宿霧中
江は流る 宿霧の中
- 宿霧 … 前夜から立ち込めている霧。
聖朝無棄物
聖朝 棄物無し
老病已成翁
老病 已に翁と成る
- 老病 … 年老いて病身であること。
- 老 … 『詳注本』では「衰」に作り、「一作老、一作多」とある。『心解本』『鏡銓本』では「衰」に作り、「一作老」とある。
- 成 … 『宋本』『銭注本』『詳注本』には「一云衰」とある。『全唐詩』『九家集注本』『草堂詩箋補遺』には「一作衰」とある。『杜陵詩史』『分門集注本』には「洙曰一作衰」とある。『文苑英華』には「集作衰」とある。
多少殘生事
多少ぞ 残生の事
- 多少 … どれほどだろうか。
- 残生 … 残りの人生。『宋書』長沙景王道憐伝に「君富貴已に足る。故に応に児子の為に計を作すべし。年五十に垂とす。残生何ぞ吝むに足らんや」(君富貴已足。故應爲兒子作計。年垂五十。殘生何足吝邪)とある。ウィキソース「宋書/卷51」参照。
飄零似轉蓬
飄零 転蓬に似たり
- 飄零 … 木の葉がひらひらと落ちること。転じて、落ちぶれること。
- 転蓬 … 風に吹き飛ばされて転がっていく蓬。飛蓬。「蓬」は、ヨモギとは異なり、砂地に生えるアカザ科の植物で、ヒメジョオンに似ている。日本には生育しない。秋には枯れ、強風に吹かれると抜けて転がっていく。
テキスト
- 『全唐詩』巻二百二十七(揚州詩局本縮印、上海古籍出版社、1985年)
- 『宋本杜工部集』巻十二(影印本、台湾学生書局、1967年)
- 『九家集注杜詩』巻二十四(『哈佛燕京學社引得特刊 14 杜詩引得』第二冊、1966年)
- 『杜陵詩史』巻十八(王状元集注、『杜詩又叢』所収、中文出版社、1977年)
- 『分門集注杜工部詩』巻十二(『四部叢刊 初編集部』所収)
- 『草堂詩箋補遺』巻五(蔡夢弼注、『古逸叢書(中)』所収、江蘇廣陵古籍刻印社、1997年)
- 『銭注杜詩』巻十二(銭謙益箋注、上海古籍出版社、1979年)
- 『杜詩詳注』巻十一(仇兆鰲注、中華書局、1979年)
- 『読杜心解』巻三之三(浦起龍著、中華書局、1961年)
- 『杜詩鏡銓』巻九(楊倫箋注、上海古籍出版社、1980年)
- 『文苑英華』巻三百十五(影印本、中華書局、1966年)
- 『唐詩品彙』巻六十二(汪宗尼本影印、上海古籍出版社、1981年)
- 『唐詩別裁集』巻十(乾隆二十八年教忠堂重訂本縮印、中華書局、1975年)
- 『古今詩刪』巻十五(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、28頁)
- 『唐宋詩醇』巻十五(乾隆二十五年重刊、紫陽書院、内閣文庫蔵)
- 『瀛奎律髄刊誤』巻十四(掃葉山房、1922年)
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