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哭晁卿衡(李白)

哭晁卿衡
ちょうけいこうこく
はく
  • 七言絶句。都・壺・梧(平声虞韻)。
  • ウィキソース「哭晁卿衡」参照。
  • 詩題 …『蕭本』では「哭晁卿行」に作る。『万首唐人絶句』(嘉靖刊本)では「哭晁卿」に作る。『万首唐人絶句』(万暦刊本)では「哭鼂卿」に作る。「鼂」は「晁」と同義。
  • 晁卿衡 … 阿倍仲麻呂(698~770)のこと。中国名をちょうこう、またはちょうこうという。「晁」は「朝」の古字。入唐にっとう留学生として唐の玄宗に仕え、中国で死んだ。李白や王維などと交際があった。「卿」は、彼の当時の官職、えいけい(宮門の警備や兵隊を駐屯させることを掌る長官)の略称。また、友人に対する愛称・敬称とする説もある。ウィキペディア【阿倍仲麻呂】参照。
  • 哭 … 大声をあげて泣くこと。
  • この詩は、天宝十二載(753)、阿倍仲麻呂が帰国しようとして乗った船が暴風に遭って難破し、亡くなったとの噂が伝わった時に作られたもの。実際は安南(ベトナム)に漂着し、翌々年、長安に戻っている。
  • 李白 … 701~762。盛唐の詩人。あざなは太白。蜀の隆昌県青蓮郷(四川省江油市青蓮鎮)の人。青蓮居士と号した。科挙を受験せず、各地を遊歴。天宝元年(742)、玄宗に召されて翰林かんりん供奉ぐぶ(天子側近の文学侍従)となった。しかし、玄宗の側近で宦官の高力士らに憎まれて都を追われ、再び放浪の生活を送った。杜甫と並び称される大詩人で「詩仙」と仰がれた。『李太白集』がある。ウィキペディア【李白】参照。
日本晁卿辭帝都
ほんちょうけい てい
  • 晁 … 『万首唐人絶句』(万暦刊本)では「鼂」に作る。同義。
  • 帝都 … 天子のいる都。唐の都長安を指す。
  • 辞 … 別れを告げる。
征帆一片繞蓬壺
征帆せいはん 一片いっぺん ほうめぐ
  • 征帆 … 去っていく船。旅行く船。
  • 一片 … ひとひらの(帆)。
  • 蓬壺 … 東方の海上にあって仙人が住むという島。蓬萊山の別名。
  • 繞 … 巡る。まわりを回る。『宋本』『劉本』『王本』『万首唐人絶句』(両種とも)では「遶」に作る。同義。
明月不歸沈碧海
明月めいげつかえらず 碧海へきかいしず
  • 明月 … 晁衡(阿倍仲麻呂)に喩える。
  • 沈碧海 … 青々とした海に沈んでしまった。あおい大海原に沈んでしまった。
  • 沈 … 『万首唐人絶句』(万暦刊本)では「沉」に作る。異体字。
白雲愁色滿蒼梧
白雲はくうん 愁色しゅうしょく そう
  • 白雲 … 白い雲。
  • 愁色 … 悲しみの色を込めて。悲しみの色を帯びて。
  • 愁 … 『万首唐人絶句』(万暦刊本)では「秋」に作る。
  • 蒼梧 … 舜帝が巡幸中に崩じた地と伝えられる湖南省寧遠県にある山。蒼梧山。別名きゅうざん。ここでは蒼梧山を含めた南方の地一帯を漠然と言ったもの。
テキスト
  • 『全唐詩』巻一百八十四(揚州詩局本縮印、上海古籍出版社、1985年)
  • 『李太白文集』巻二十四(静嘉堂文庫蔵宋刊本影印、平岡武夫編『李白の作品』所収、略称:宋本)
  • 『李太白文集』巻二十四(ぼくえつ重刊、雙泉草堂本、略称:繆本)
  • 『分類補註李太白詩』巻二十五(しょういん補注、内閣文庫蔵、略称:蕭本)
  • 『分類補註李太白詩』巻二十五(蕭士贇補注、郭雲鵬校刻、『四部叢刊 初篇集部』所収、略称:郭本)
  • 『分類補註李太白詩』巻二十五(蕭士贇補注、許自昌校刻、『和刻本漢詩集成 唐詩2』所収、略称:許本)
  • 『李翰林集』巻十九(景宋咸淳本、劉世珩刊、江蘇広陵古籍刻印社、略称:劉本)
  • 『李太白全集』巻二十五(王琦編注、『四部備要 集部』所収、略称:王本)
  • 『万首唐人絶句』七言・巻二(明嘉靖刊本影印、文学古籍刊行社、1955年)
  • 趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十三(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)
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