微子第十八 11 周有八士章
471(18-11)
周有八士。伯達。伯适。仲突。仲忽。叔夜。叔夏。季隨。季騧。
周有八士。伯達。伯适。仲突。仲忽。叔夜。叔夏。季隨。季騧。
周に八士有り。伯達・伯适・仲突・仲忽・叔夜・叔夏・季随・季騧。
現代語訳
- 周には八人の学者家族があった。それは伯達・伯适(カツ)・仲突・仲忽(コツ)・叔夜・叔夏・季随・季騧(カ)だ。(魚返善雄『論語新訳』)
- 昔の周には、一家に伯達・伯适・仲突・仲忽・叔夜・叔夏・季随・季騧という八人の英才が生れた。盛んなことかな。今ではさような人物の輩出が望めない。(穂積重遠『新訳論語』)
- 周に八人の人物がいた。伯達・伯适・仲突・仲忽・叔夜・叔夏・季随・季騧がそれである。(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
- 周 … 周の初めの盛んな時。
- 士 … 立派な人。賢人。
- 伯・仲・叔・季 … 兄弟の順序を示す言葉。長男が伯、次男が仲、三男が叔、四男が季。
補説
- 『集解』に引く包咸の注に「周の時、四乳にして八子を生む。皆顕仕と為れり。故に之を記すのみ」(周時四乳生八子。皆爲顯仕。故記之爾)とある。「四乳」は一人の母親が四度双子を生むこと。「顕仕」は高官。
- 『集注』に「或ひと曰く、成王の時の人、と。或ひと曰く、宣王の時の人、と。蓋し一母四乳して八子を生むなり。然れども考うべからず。張子曰く、善人の多きを記すなり、と。愚按ずるに、此の篇孔子の三仁、逸民、師摯、八士に於ける、既に皆称賛して之を品列し、接輿、沮、溺、丈人に於いて、又毎に惓惓として接引するの意有り。皆衰世の志なり、其の感ずる所の者深し。陳に在るの歎の、蓋し亦た此のごとし。三仁は則ち間然すること無し。其の余の数君子の者も、亦た皆一世の高士なり。若し聖人の道を聞くことを得て、以て其の過ぐる所を裁して、其の及ばざる所を勉めしめば、則ち其の立つ所、豈に此に止むるのみならんや」(或曰、成王時人。或曰、宣王時人。蓋一母四乳而生八子也。然不可考矣。張子曰、記善人之多也。愚按、此篇孔子於三仁、逸民、師摯、八士、既皆稱贊而品列之、於接輿、沮、溺、丈人、又毎有惓惓接引之意。皆衰世之志也、其所感者深矣。在陳之歎、蓋亦如此。三仁則無間然矣。其餘數君子者、亦皆一世之高士。若使得聞聖人之道、以裁其所過、而勉其所不及、則其所立、豈止於此而已哉)とある。
- 伊藤仁斎は「四乳して八子を生みたる、其の事甚だ異し、恐らくは信ずべからず。只だ是れ当時人物の盛んなるを言えるのみ。陳氏櫟曰えり、魯の末賢人の隠遯を記して、終うるに周の盛んなりし時賢人の衆多なるを以てせり。其れ今を傷み古を思うの心有りしか、と」(四乳生八子、其事甚異、恐不可信。只是言當時人物之盛耳。陳氏櫟曰、記魯末賢人之隠遯、而終以周盛時賢人之衆多。其有傷今思古之心乎)と言う。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
- 荻生徂徠は「意うに、古人偶〻古人の一二言を得て之を記せんと欲し、乃ち諸を論語篇末の空処に記す。……且つ今の俗双生を悪み、必ず其の一を殺す。諸を人情に原ずくるに、古と雖も亦た然らん。此を観れば則ち其の風少しく弭まんか。君子の博物を貴ぶ所以なり」(意者古人偶得古人一二言欲記之。乃記諸論語篇末空處。……且今俗惡雙生。必殺其一。原諸人情。雖古亦然。觀於此則其風少弭邪。君子之所以貴博物也)と言う。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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