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里仁第四 16 子曰君子喩於義章

082(04-16)
子曰、君子喩於義、小人喩於利。
いわく、くんさとり、しょうじんさとる。
現代語訳
  • 先生 ――「道理がピンとくる人と、利益がピンとくる人。」(魚返おがえり善雄『論語新訳』)
  • 孔子様がおっしゃるよう、「君子は万事を道義に持っていく。小人は一切いっさいを利益に結びつける。」(穂積重遠しげとお『新訳論語』)
  • 先師がいわれた。――
    「君子は万事を道義に照らして会得するが、小人は万事を利害から割出して会得する」(下村湖人『現代訳論語』)
語釈
  • 君子・小人 … 君子は、徳の高い立派な人、人格者。小人は、教養がなく、人格が低くてつまらない人。君子と小人について、従来はこのように定義してきたが、宮崎市定は「君子という言葉を二人稱に譯さないと意味の通らない場合が實際にある」とし、この章を「諸君は正義に敏感であってほしい。利益には鈍感な方がよい」と訳している。『論語の新研究』137頁以下参照。
  • 義 … 正義。正しい道理。
  • 喩 … 理解する。敏感である。
  • 利 … 利益。損得。
補説
  • 君子喩於義、小人喩於利 … 『集解』に引く孔安国の注に「喩は、猶お暁のごときなり」(喩、猶曉也)とある。『論語集解』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『義疏』に「喩は、暁なり。君子は仁義にさとる所、小人は財利に暁る所なり。故に范寧はんねい曰く、貨利を棄てて仁義に暁れば則ち君子と為り、貨利に暁りて仁義を棄つれば則ち小人と為る」(喩、曉也。君子所曉於仁義、小人所曉於財利。故范甯曰、棄貨利而曉仁義則爲君子、曉貨利而棄仁義則爲小人)とある。『論語義疏』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。また『集注』に「喩は、猶お暁のごときなり。義とは、天理の宜しき所なり。利とは、人情の欲する所なり」(喩、猶曉也。義者、天理之所宜。利者、人情之所欲)とある。『論語集注』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 『集注』に引く程頤の注に「君子の義に於けるは、猶お小人の利に於けるがごときなり。惟だ其れ深くさとる、ここを以て篤く好む」(君子之於義、猶小人之於利也。惟其深喩、是以篤好)とある。
  • 『集注』に引く楊時の注に「君子に生をてて義を取る者有り。利を以て之を言えば、則ち人の欲する所、生より甚だしきは無く、悪む所、死より甚だしきは無し。たれえて生を舎てて義を取らんや。其の喩る所の者は義のみ。利の利たるを知らざるが故なり。小人は是に反す」(君子有舍生而取義者。以利言之、則人之所欲、無甚於生、所惡無甚於死。孰肯舍生而取義哉。其所喩者義而已。不知利之爲利故也。小人反是)とある。
  • 伊藤仁斎『論語古義』に「此れ言うこころは君子小人の好む所同じからず。故に心の趨く所に従いて殊なり。君子の好む所は義に在り、故に其の義に暁ること甚だ速やかなり。小人の好む所は利に在り。故に其の利に暁ることも亦た甚だ速やかなり」(此言君子小人所好不同。故心之所趨從殊。君子之所好在於義、故其曉於義也甚速。小人之所好在於利。故其曉於利也亦甚速)とある。『論語古義』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 荻生徂徠『論語徴』に「君子とは、かみに在るの人なり。しもに在りと雖もしかも上に在るの徳有るも、亦た之を君子と謂う。小人とは、細民なり。上に在りと雖も而も細民の心有るも、亦た之を小人と謂う。義とは、詩・書にする所の先王の古義なり。古えの人は先王の古義に拠りて以て事のを裁決す。……君子は天職を奉ずる者なり。其の財を理め、民をして其の生に安んぜしむ。是れ先王の道の義なり。故に凡そ義と言う者は、利と対して言わずと雖も、然も民を安んずるの仁に帰せざること莫きは、是れが為の故なり。故に義は士君子の務むる所、利は民の務むる所なり。故に人をさとすの道は、君子に於いては則ち義を以てし、小人に於いては則ち利を以てす。君子と雖も豈に利を欲せざらんや、小人と雖も豈に義を悦ばざらんや。務むる所の異なるなり」(君子者、在上之人也。雖在下而有在上之德、亦謂之君子。小人者、細民也。雖在上而有細民之心、亦謂之小人。義者、詩書所載先王之古義也。古之人據先王之古義以裁决事之宜焉。……君子者奉天職者也。理其財、使民安其生焉。是先王之道之義也。故凡言義者、雖不與利對言、然莫不歸於安民之仁者、爲是故也。故義者士君子之所務、利者民之所務。故喩人之道、於君子則以義、於小人則以利。雖君子豈不欲利乎、雖小人豈不悦義乎。所務異也)とある。『論語徴』(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
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