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宿疎陂駅(王周)

宿疎陂驛
疎陂そひえき宿しゅく
おうしゅう
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻七百六十五、『古今詩刪』巻二十二(寛保三年刊、『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、62頁)、『唐詩品彙拾遺』巻四、他
  • 七言絶句。紅・空・中(平声東韻)。
  • ウィキソース「宿疎陂驛」「御定全唐詩 (四庫全書本)/卷765」参照。
  • 疎陂駅 … 宿場の名。所在は不明であるが、詩の内容から荊州(今の湖北省荊州市荊州区)の西方にあったと思われる。
  • 疎 … 『全唐詩』では「疏」に作る。同義。『古今詩刪』『唐詩品彙』では「踈」に作る。異体字。
  • 宿 … 宿泊する。
  • この詩は、地方官であった作者が荊州付近の疎陂駅という宿場に宿泊し、蕭条たる秋景色を詠んだもの。
  • 王周 … 生没年不詳。唐末の進士で後蜀王朝に仕え、乾祐元年(948)に没したというが、よくわからない。ウィキペディア(中文)に「王周 (五代)」という人物の記述があるが、この人のことか。
秋染棠梨葉半紅
あきとうめて なかくれないなり
  • 棠梨 … 果樹の名。和名カラナシ。ヤマナシ。『本草綱目』果部、山果類、棠梨の項に「時珍曰わく、棠梨は、野梨なり。処処山林之れ有り。樹は梨に似て小。葉は蒼朮葉に似、亦た団なる者、三叉なる者有り、葉辺皆鋸歯有り、色頗る黲白。二月白花を開き、実を結ぶこと小楝子の大きさの如し、霜後食す可し」(時珍曰、棠梨、野梨也。處處山林有之。樹似梨而小。葉似蒼朮葉、亦有團者、三叉者、葉邊皆有鋸齒、色頗黲白。二月開白花、結實如小楝子大、霜後可食)とある。ウィキソース「本草綱目/果之二」、『本草綱目』巻三十(国立国会図書館デジタルコレクション)参照。
  • 染 … 染める。
  • 葉半紅 … 葉の半分が紅く色づいた。
荊州東望草平空
けいしゅうひがしのぞめば くさ くうたいらかなり
  • 荊州東望 … ここから東の方角にある荊州を眺めると。
  • 荊州 … 今の湖北省荊州市荊州区。ウィキペディア【荊州区】参照。
  • 荊 … 『古今詩刪』『唐詩品彙』では「荆」に作る。異体字。
  • 草平空 … 草原が空と一色になって、平らに広がっている。
誰知孤宦天涯意
たれらん かん 天涯てんがい
  • 誰知 … 誰が知ってくれよう、誰も知るまい。反語。
  • 孤宦 … 郷里を離れ、ただ一人役人生活をしていること。宦は、宮廷に仕えること。『説文解字』巻七下、宀部に「宦は、仕うるなり」(宦、仕也)とある。ウィキソース「說文解字/07」参照。
  • 天涯 … 天の果て。空の果て。非常に遠い所。涯は、かぎり。地の果て。ここでは故郷から遥か遠く離れた異郷を指す。『論衡』率性篇に「人間じんかんの水は汚濁なるも、野外に在る者は清潔なり。ともに一水たり、みなもとは天涯よりするも、或いは濁り或いはむは、在る所の勢い、之をして然らしむるなり」(人閒之水汚濁、在野外者淸潔。倶爲一水、源從天涯、或濁或淸、所在之勢、使之然也)とある。ウィキソース「論衡/08」参照。
  • 意 … 私の気持ち。
微雨瀟瀟古驛中
微雨びう 瀟瀟しょうしょうたり えきうち
  • 微雨 … 小雨。細雨。
  • 瀟瀟 … 雨が物寂しく降る形容。『詩経』鄭風・風雨の詩に「風雨瀟瀟たり」(風雨瀟瀟)とある。こちらは風雨が激しく降りしきる形容。ウィキソース「詩經/風雨」参照。『全唐詩』『古今詩刪』『唐詩品彙拾遺』では「蕭蕭」に作る。同義。
  • 古駅 … 古びた田舎の宿場町。疎陂駅を指す。
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