塞下曲二首 其二(張仲素)
塞下曲二首 其二
塞下の曲二首 其の二
塞下の曲二首 其の二
- 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻三百六十七、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻二十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『楽府詩集』巻九十三、『唐詩品彙拾遺』巻四、『唐詩別裁集』巻二十、『唐人万首絶句選』巻五、他
- 七言絶句。門・根・恩(平声元韻)。
- ウィキソース「塞下曲五首」参照。
- 詩題 … 『全唐詩』『楽府詩集』では「塞下曲五首 其三」に作る。『万首唐人絶句』では「塞下曲六首 其四」に作る。『唐詩品彙拾遺』では「塞下曲二首 其一」に作る。『唐人万首絶句選』では「塞下曲四首 其三」に作る。
- 塞下曲 … 新楽府題。塞下は、辺境の塞のあたりの意。『楽府詩集』巻九十二・新楽府辞・楽府雑題に収める楽曲の名。辺塞での戦闘や兵士の望郷の思いを詠う。古楽府の「出塞」「入塞」に似たもの。
- この詩は、辺塞における辺将の勇壮さを詠んだもの。
- 張仲素 … 769?~819。中唐の詩人。河間(河北省献県)の人。字は絵之。貞元十四年(798)、李翺・呂温とともに進士に及第。武寧軍従事となったが、元和十年(815)、司勲員外郎となり、元和十四年(819)、中書舎人に至った。『唐詩選』に四首収める。ウィキペディア【張仲素】参照。
朔雪飄飄開雁門
朔雪飄飄として雁門を開き
- 朔雪 … 朔風(北風)に吹きつけられる雪。朔は、北のこと。鮑照の「劉公幹が体を学ぶ」(『文選』巻三十一)に「胡風は朔雪を吹き、千里竜山を度る」(胡風吹朔雪、千里度龍山)とある。ウィキソース「學劉公幹體 (鮑照)」参照。
- 飄飄 … 風に吹かれて、ひらひらと舞うさま。
- 雁門 … 関所の名。雁門関。別名西陘関。山西省の北部、代県の西北にある雁門山の頂上にある。唐代に置かれ、北宋のとき、契丹防御の重要地点であった。ウィキペディア【雁門関】参照。
- 雁 … 『楽府詩集』『唐詩品彙拾遺』では「鴈」に作る。同義。
平沙歷亂捲蓬根
平沙歴乱として蓬根を捲く
- 平沙 … 広く平らな砂漠。「沙」は「砂」と同じ。李華の「古戦場を弔う文」(『古文真宝』後集、巻五)に「浩浩乎として平沙垠り無く、敻かに人を見ず」(浩浩乎平沙無垠、敻不見人)とある。ウィキソース「弔古戰場文」参照。
- 平 … 『唐詩品彙拾遺』では「垂」に作る。
- 歴乱 … ばらばらと乱れるさま。乱れ散るさま。鮑照の「行路難四首 其二」(『玉台新詠』巻九)に「檗を剉みて黄糸を染む、黄糸歴乱治む可からず」(剉蘗染黃絲、黃絲歷亂不可治)とある。ウィキソース「行路難 (鮑照)」参照。
- 歷 … 『唐詩品彙拾遺』では「壓」に作る。
- 蓬根 … 枯れたよもぎの根。これが風に吹かれてころがり飛ばされていくことを転蓬、あるいは飛蓬という。曹植の「雑詩六首 其の二」(『文選』巻二十九)に「転蓬は本根より離れ、飄颻として長風に随う」(轉蓬離本根、飄颻隨長風)とある。本根は、もとの根。飄颻は、風に翻るさま。長風は、遠くから吹いてくる風。ウィキソース「昭明文選/卷29」参照。また王僧達の「琅邪王の古に依るに和す」(『文選』巻三十一)に「仲秋に辺風起り、孤蓬の霜根を巻く」(仲秋邊風起、孤蓬卷霜根)とある。ウィキソース「和琅邪王依古」参照。
- 捲 … 捲き上げられている。『全唐詩』では「卷」に作り、「一作瘞」とある。『楽府詩集』『万首唐人絶句』『唐詩品彙拾遺』では「卷」に作る。『唐詩別裁集』『唐人万首絶句選』では「轉」に作る。
功名恥計擒生數
功名 擒生の数を計るを恥ず
- 功名 … 手柄を立てて名誉を得ること。
- 擒生 … 生け捕り。捕虜。擒は、とりこ。
- 数 … 人数。
- 計 … 計算する。『全唐詩』には「一作記」とある。『唐人万首絶句選』では「記」に作る。
- 恥 … 恥ずかしいことである。『唐詩品彙拾遺』『唐詩別裁集』では「耻」に作る。異体字。
直斬樓蘭報國恩
直ちに楼蘭を斬って国恩に報いん
- 直 … 一気に。
- 楼蘭 … 今の新疆ウイグル自治区、ロプノール湖の西にあった小独立国。ここでは楼蘭王を指す。斬楼蘭とは、楼蘭王の首をはねること。かつて楼蘭王は漢の使者を殺したため、傅介子が大将軍霍光の命を受けて楼蘭に行き、酒宴の席で壮士に楼蘭王を刺殺させ、その首を持って帰還したという故事を踏まえる。『漢書』傅介子伝に「楼蘭皆嘗て漢の使者を殺す。……王、漢の物を貪り、来りて使者に見ゆ。介子与に坐して飲み、物を陳べて之に示す。飲酒して皆酔う。……壮士二人、後より之を刺し、刃匈に交えて、立ちどころに死す。……遂に王の首を持して還りて闕に詣る。公卿・将軍議する者咸其の功を嘉す」(樓蘭皆甞殺漢使者。……王貪漢物、來見使者。介子與坐飮、陳物示之。飮酒皆醉。……壯士二人從後刺之、刃交匈、立死。……遂持王首還詣闕。公卿將軍議者咸嘉其功)とある。ウィキソース「漢書/卷070」参照。ウィキペディア【楼蘭】【傅介子】参照。
- 国恩 … 国家の恩。
- 報 … 報いよう。恩に対し、それに見合うだけのお返しをすること。
こちらもオススメ!
歴代詩選 | |
古代 | 前漢 |
後漢 | 魏 |
晋 | 南北朝 |
初唐 | 盛唐 |
中唐 | 晩唐 |
北宋 | 南宋 |
金 | 元 |
明 | 清 |
唐詩選 | |
巻一 五言古詩 | 巻二 七言古詩 |
巻三 五言律詩 | 巻四 五言排律 |
巻五 七言律詩 | 巻六 五言絶句 |
巻七 七言絶句 |
詩人別 | ||
あ行 | か行 | さ行 |
た行 | は行 | ま行 |
や行 | ら行 |