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与歌者何戡(劉禹錫)

與歌者何戡
しゃかんあた
りゅうしゃく
  • 〔テキスト〕 『唐詩選』巻七、『全唐詩』巻三百六十五、『劉夢得文集』巻五(『四部叢刊 初編集部』所収)、『劉賓客集』巻二十五(『四部備要 集部』所収)、趙宦光校訂/黄習遠補訂『万首唐人絶句』巻十七(万暦三十五年刊、内閣文庫蔵)、『古今詩刪』巻二十二、寛保三年刊(『和刻本漢詩集成 総集篇9』所収、63頁)、『唐詩品彙』巻五十一、『唐詩別裁集』巻二十、『文苑英華』巻二百十三、『唐人万首絶句選』巻四、他
  • 七言絶句。京・情・城(平声庚韻)。
  • ウィキソース「與歌者何戡」「劉夢得文集 (四部叢刊本)/卷第五」参照。
  • 歌者 … 歌手。
  • 何戡 … 人物については不明。宮廷の伶人れいじん(音楽を演奏する人。楽師。楽工)であったと思われる。
  • 与 … 与える。施す。ここでは詩を贈ること。
  • この詩は、作者が左遷されてから二十数年ぶりに長安に帰ってきて、久しぶりに歌手の何戡の歌を聞いたときの感動を詠んだもの。
  • 劉禹錫 … 772~842。中唐の詩人。あざな夢得ぼうとくちゅうざん(河北省)の人。貞元九年(793)、柳宗元とともに進士に及第。王叔文らの政治改革に加わり、僻地に左遷された。太和二年(828)に長安に復帰。その後も都と地方の諸官を歴任。開成元年(836)、太子賓客となった。柳宗元とは無二の親友。晩年は白居易とも親交があり、白居易は彼を「詩豪」と称賛した。『劉賓客文集』30巻、『外集』10巻がある。ウィキペディア【劉禹錫】参照。
二十餘年別帝京
じゅうねん 帝京ていけいわか
  • 二十余年 … 順宗の永貞元年(805)、王叔文の事件の連座して朗州(今の湖南省常徳市)司馬に流されてから、文宗の大和二年(828)、主客郎中として都に召還されるまでの二十三年間を指す。
  • 帝京 … 天子の住んでいる都。帝都。京師。ここでは長安を指す。後漢のりょうこう五噫ごいの歌」に「帝京ていけいせんして、ああ」(顧瞻帝京兮、噫)とある。顧瞻は、振り返って見ること。ウィキソース「五噫歌」参照。
  • 別 … 離れている。
重聞天樂不勝情
かさねて天楽てんがくいてじょうえず
  • 重 … 再び。
  • 天楽 … 鈞天広楽。天上の音楽。転じて宮中の音楽を指す。『史記』趙世家に「趙簡子み、五日、人を知らず。大夫皆おそる。医へんじゃく之を視、出ず。董安于問う。扁鵲曰く、血脈治まれり。而るに何ぞ怪しき。在昔むかし、秦の繆公、嘗てかくの如く、七日にしてむ。……居ること二日半、簡子め、大夫にげて曰く、我、帝の所に之き、甚だ楽しかりき。百神と与に鈞天に游ぶ。広楽に九奏万舞す。三代の楽に類せず、其の声、人心を動かす」(趙簡子疾、五日不知人。大夫皆懼。醫扁鵲視之、出。董安于問。扁鵲曰、血脈治也。而何怪。在昔秦繆公嘗如此、七日而寤。……居二日半、簡子寤、語大夫曰、我之帝所甚樂。與百神游於鈞天。廣樂九奏萬舞。不類三代之樂、其聲動人心)とある。ウィキソース「史記/卷043」参照。
  • 不勝情 … 感情を抑えきれない。感慨に堪えない。不勝は、不堪に同じ。武元衡の「鄂渚がくしょに友を送る」(『全唐詩』巻三百十七)に「きみなんおくりてじょうえず」(送君南浦不勝情)とある。
舊人唯有何戡在
きゅうじん かん
  • 旧人 … 昔の知り合い。昔なじみ。旧知に同じ。
  • 唯 … ただ。『万首唐人絶句』『唐詩別裁集』では「惟」に作る。同義。
  • 有何戡在 … 何戡が一人いるだけ。何戡が残っているだけ。
更與殷勤唱渭城
さらため殷勤いんぎんじょううた
  • 更 … さらに。そのうえに。
  • 与 … 自分のために。
  • 殷勤 … 慇懃に同じ。ねんごろで丁寧なこと。真心を込めること。
  • 渭城 … 王維の「元二の安西に使いするを送る」を指す。渭城は、秦の都であった咸陽を、漢代になってから改めた名称。第一句が「じょうちょう軽塵けいじんうるおす」で始まるので、渭城曲と呼ばれ、送別の曲として唐人に愛唱された。なお、第一句は一唱するのみで、第二句以下の三句を二回ずつ繰り返しながら歌う「陽関三畳」という唱法が生み出された。蘇軾『仇池筆記』陽関三畳の条に「と陽関三畳を伝う。今歌う者毎句再畳するのみ。若し一首を通ぜば、又是れ四畳なり。皆是に非ず。毎句三唱して以て三畳に応ず。則ち叢然として復た節奏無し。文勲なる者有り、古本の陽関を得たり。毎句皆再唱して、第一句は畳せず。乃ち唐本三畳此の如きを知ると。楽天の詩に云う、相逢いて且つ酔を推辞する莫れ、唱うるを聴け陽関の第四声。注に、第四声は、君に勧む更に尽くせ一杯の酒。此を以て之を験すれば、若し一句再畳せば、則ち此の句は第五声たり。今第四と為す。則ち一句畳せざることつまびらかなり」(舊傳陽關三疊。今歌者每句再疊而已。若通一首、又是四疊。皆非是。每句三唱以應三疊。則叢然無復節奏。有文勛者、得古本陽關。每句皆再唱、而第一句不疊。乃知唐本三疊如此。樂天詩云、相逢且莫推辭醉、聽唱陽關第四聲。注、第四聲、勸君更盡一杯酒。以此驗之、若一句再疊、則此句爲第五聲。今爲第四。則一句不疊審矣)とある。ウィキソース「仇池筆記」参照。
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